The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-44] ポスター(運動器)P44

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-44-5] 外反母趾症例における健康関連QOLと術後成績との関連

野中 理絵, 原 耕介, 小保方 祐貴, 日尾 有宏 (東前橋整形外科)

Keywords:外反母趾, 手術後, 健康関連QOL

【はじめに,目的】

外反母趾の手術に対する期待内容は外科医と患者間に乖離があると報告されている。医療者側の客観的評価による術後成績は多く報告されているが,QOLなど患者側の主観的評価による報告は散見しない。患者の要望も含めた術後理学療法を提供するためには,患者側の主観的評価も必要であると考える。そこで,本研究では足部足関節評価質問票(以下,SAFE-Q)を用いて術後外反母趾患者の健康関連QOL(以下,HRQOL)を評価し,客観的評価との関連性を明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象は当院にて外反母趾と診断されLapidus変法を施行した男性1名,女性7名の計10足とし,平均年齢68.9±6.2歳であった。客観的評価として臨床評価指標であるAOFAS(the American Orthopaedic Foot and Ankle Society)scoreを術前,術後1年(以下,術後)に実施し,SAFE-QによるHRQOL評価を術後に実施した。

統計処理は正規性の検定後,客観的評価における術後変化の検討にWilcoxonの符号付順位検定を,術後のHRQOLと客観的評価の関連性の検討にSpearmanの順位相関係数をそれぞれ用い,SPSSver.23を使用し有意水準は5%とした。


【結果】

AOFASscoreは術前/術後(平均±標準偏差)で,合計57.7±14.1/90.6±10.1点,下位項目では疼痛24.0±9.7/39.0±3.2点,機能32.1±3.2/38.1±5.6点,アライメント1.6±3.4/13.5±4.7点,全ての項目で術後に有意な改善が認められた(p<0.05)。術後のSAFE-Q(平均±標準偏差)は,「痛み・痛み関連」95.6±6.0点,「身体機能・日常生活の状態」92.7±6.2点,「社会生活機能」97.5±5.3点,「靴関連」95.0±7.5点,「全体的健康感」90.8±15.9点であった。術後のHRQOLと客観的評価の関連では,有意な相関は認められなかったが,「痛み・痛み関連」とAOFASscore合計点(r=0.44),「社会生活機能」とAOFASscore機能(r=0.43),アライメント(r=0.43)でそれぞれ中等度の相関傾向が認められた。「身体機能・日常生活の状態」とAOFASscore機能では低い相関傾向が認められた(r=0.36)。


【結論】

術後,AOFASscoreが有意に改善したことから,手術や術後理学療法が有効であったことが示されたと考える。

「身体機能・日常生活の状態」とAOFASscore機能では,低い相関傾向を示した。AOFASscoreでは日常生活や靴への影響,足趾可動域が主な項目である。「身体機能・日常生活の状態」では,歩行,階段,坂道が主な項目で,特に階段や坂道で点数が低かった。これらの項目には可動域や筋力,バランスの影響が考えられるが,AOFASscoreでは筋力やバランスに関する項目が無いため,SAFE-Qと関連しなかったと考える。

一方で,「社会生活機能」とAOFASscore機能では中等度の相関傾向が認められた。「社会生活機能」は外出や仕事が主な項目であり,これらの社会生活機能を向上させるために,術後理学療法では機能の向上が必要である可能性が示唆された。