The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-45] ポスター(運動器)P45

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-45-1] 健常成人における肩甲骨アライメントと運動器疼痛,姿勢自己認識の関連について

中原 義人, 横田 俊輔, 十鳥 献司, 工藤 悠平, 武田 かすみ (社会医療法人慈恵会聖ヶ丘病院リハビリテーションセンター)

Keywords:肩甲骨アライメント, 運動器疼痛, 姿勢自己認識

【はじめに,目的】

我々は第51回日本理学療法学術大会において,健常成人の胸椎後彎角度は女性が有意に小さく運動器疼痛との関連が示唆されることを報告した。今回,上肢や胸郭と連結している肩甲骨のアライメントに着目し,運動器疼痛や姿勢自己認識との関連について検討したので報告する。





【方法】

対象は当院リハビリテーションセンターに勤務する職員と実習学生35名(男性21名,女性14名)。平均年齢は27.6(20-39)歳。全員が右利きであった。

自然立位の対象者の両側の肩峰端を結ぶ水平面上に自在曲線定規を当て,背部彎曲の曲線を得た。曲線をA3用紙上に書き写し,両側の肩峰端を結んだ線分と曲線の距離(以下A[cm])が最大となる点で線分Xの左肩峰端との距離(以下X1[cm])と右肩峰端との距離(以下X2[cm])を求めた。A,X1,X2から背部体幹彎曲角度(以下α[°])をα=arc tan(A/X1)+arc tan(A/X2)の公式で算出した。また,肩甲骨内側縁と体幹正中線のなす角β[°]と肩甲棘と前額面のなす角γ[°]を左右それぞれ測定した。対象者の運動器疼痛の有無(9項目 いつもある5点~全くない1点の合計9~45点),頸部・腰部自動屈曲・伸展時の疼痛(NRSで0~10の合計0~40),姿勢自己認識(自分は猫背だと思うか,普段気を付けているか)について質問紙で聴取した。α,β,γ,疼痛の有無,NRSは男女間でt検定,疼痛有無とα,β,γをPearsonの相関係数,姿勢自己認識はχ2検定を用いて比較検討した(危険率5%未満)。

【結果】

αの平均値は男性36.1°,女性34.9°であった。βの平均値は男性が右5.8°/左0.3°,女性は右6.1°/左5.6°で男性の左が有意に小さかった(p<0.05)。γの平均値は男性が右19.0°/左20.8°,女性は右18.6°/左17.4°で女性の左が有意に小さかった(p<0.05)。疼痛の有無は平均22.5点(男性18.7点,女性28.2点),NRSは平均4.5(男性2.6,女性7.4)で女性が有意に高かった(p<0.01)。βの左右差の絶対値と疼痛の有無の間に相関係数-0.44の有意な負の相関が認められた。自分が猫背だと思う割合に差はなく(男性80%/女性79%),普段姿勢に気を付けている割合は女性が多かった(男性43%/女性71%)。

【結論】

αに男女差はないが,左のβ,γに男女差を認めた。上方回旋では左右差が小さい女性のほうが痛みを有する傾向が認められた。肩甲骨アライメントの左右差は利き手の活動に伴う肩甲骨周囲筋群の収縮などが影響したと考えられ,先行研究でも上肢や体幹,胸郭の左右差が報告されている。女性は日頃から「胸を張る,背筋を伸ばす」などの姿勢修正を行っている割合が高く,その結果非利き手側の肩甲骨周囲筋群の筋活動が増加し,過活動による疲労等が運動器疼痛の発現に影響した可能性も考えられる。健常成人の運動器疼痛には男女差が認められ,胸椎,肩甲骨のアライメントの他,姿勢自己認識に伴う習慣の影響も考えられ,理学療法士にはそれらを考慮した指導が求められる。