[P-MT-45-4] リバース型人工肩関節全置換術後の三角筋硬度変化と肩関節挙上可動域に関連する因子
Keywords:リバースショルダー, 三角筋硬度, 挙上可動域
【はじめに,目的】
リバース型人工肩関節全置換術(以下RSA)は,肩関節の回転中心を内下方に変化させることで,挙上が可能となる。三角筋の延長に伴い三角筋機能が向上するとされる(Sabesan,2016)が,術後の形態変化に伴う,筋硬度についての報告は少ない。また,術後リハビリテーションにおいて早期の自動挙上可動域獲得が目標となるが,早期の挙上角度と三角筋硬度との関連については,明らかにされていない。
今回,術後の三角筋硬度の変化と術後早期の自動挙上可動域に関連する因子を明らかにすることを目的とした。
【方法】
2015年4月から2016年9月に当院でRSAを施行した11例11肩(全例女性,平均年齢78.0±3.4歳)を対象とした。
三角筋硬度は,術前の健・患側,術後6週の健・患側の安静時三角筋中部線維を筋硬度計(NEUTONE TDM-N1,TRY-ALL社製)を使用し,測定した。測定部位は,肩峰先端と三角筋粗面を結んだ線分の中央とし,5回計測した最大最小値を除く平均値を算出した。筋硬度の単位はトーン(T)で,TRY-ALL社の任意単位とした。
自動挙上可動域として,術前外転角度と術後外転角度を測定した。術後外転角度は,自動運動開始時の術後6週目における外転角度を測定した。比較検討項目は,三角筋硬度変化として,術前と術後の三角筋硬度の健患差を比較した(Wilcoxonの符号順位検定,有意水準5%未満)。また,術後外転角度と術前後三角筋硬度,年齢,術前外転角度との関係を検討した(Spearmanの順位相関係数,有意水準5%未満)。
【結果】
三角筋硬度は,術前は,健側18.7±5.4T,患側13.0±3.1T,術後6週は,健側15.5±5.9T患側18.7±6.0Tであり,術前に有意差を認めた(p<0.01)。
術前外転角度は,61.8±21.7°,術後外転角度は,56.8±48.9 °であった。術前外転角度と術後外転角度に正の相関を認めた(r=0.63,p<0.05)。術前・後三角筋硬度,年齢には関係は認められなかった。
【結論】
今回,術後の三角筋中部線維筋硬度は,術前と比較し,増加する傾向を認めたが,術後の外転角度への関連性は認めなかった。これは,術後の三角筋延長に伴う筋硬度の増加や術後の装具固定や不動に伴う筋スパズムの増加の影響が考えられた。また,今回は安静時のみの測定であり,挙上に伴う三角筋の状態については明らかになっていない。筋硬度変化については,疲労や筋力との関連も報告されており(岩本ら,2003,中山,2010),挙上に伴う筋硬度変化は,今後の検討課題としたい。
術後早期の自動外転角度との関係因子としては,術前外転角度のみに認められた。これは,術前の自動外転の主動作筋である三角筋中部繊維の機能が術後にも影響している可能性が考えられた。今回の結果から,術後の早期外転角度の関連因子としては,術前の外転角度が一指標となる可能性が示唆された。
リバース型人工肩関節全置換術(以下RSA)は,肩関節の回転中心を内下方に変化させることで,挙上が可能となる。三角筋の延長に伴い三角筋機能が向上するとされる(Sabesan,2016)が,術後の形態変化に伴う,筋硬度についての報告は少ない。また,術後リハビリテーションにおいて早期の自動挙上可動域獲得が目標となるが,早期の挙上角度と三角筋硬度との関連については,明らかにされていない。
今回,術後の三角筋硬度の変化と術後早期の自動挙上可動域に関連する因子を明らかにすることを目的とした。
【方法】
2015年4月から2016年9月に当院でRSAを施行した11例11肩(全例女性,平均年齢78.0±3.4歳)を対象とした。
三角筋硬度は,術前の健・患側,術後6週の健・患側の安静時三角筋中部線維を筋硬度計(NEUTONE TDM-N1,TRY-ALL社製)を使用し,測定した。測定部位は,肩峰先端と三角筋粗面を結んだ線分の中央とし,5回計測した最大最小値を除く平均値を算出した。筋硬度の単位はトーン(T)で,TRY-ALL社の任意単位とした。
自動挙上可動域として,術前外転角度と術後外転角度を測定した。術後外転角度は,自動運動開始時の術後6週目における外転角度を測定した。比較検討項目は,三角筋硬度変化として,術前と術後の三角筋硬度の健患差を比較した(Wilcoxonの符号順位検定,有意水準5%未満)。また,術後外転角度と術前後三角筋硬度,年齢,術前外転角度との関係を検討した(Spearmanの順位相関係数,有意水準5%未満)。
【結果】
三角筋硬度は,術前は,健側18.7±5.4T,患側13.0±3.1T,術後6週は,健側15.5±5.9T患側18.7±6.0Tであり,術前に有意差を認めた(p<0.01)。
術前外転角度は,61.8±21.7°,術後外転角度は,56.8±48.9 °であった。術前外転角度と術後外転角度に正の相関を認めた(r=0.63,p<0.05)。術前・後三角筋硬度,年齢には関係は認められなかった。
【結論】
今回,術後の三角筋中部線維筋硬度は,術前と比較し,増加する傾向を認めたが,術後の外転角度への関連性は認めなかった。これは,術後の三角筋延長に伴う筋硬度の増加や術後の装具固定や不動に伴う筋スパズムの増加の影響が考えられた。また,今回は安静時のみの測定であり,挙上に伴う三角筋の状態については明らかになっていない。筋硬度変化については,疲労や筋力との関連も報告されており(岩本ら,2003,中山,2010),挙上に伴う筋硬度変化は,今後の検討課題としたい。
術後早期の自動外転角度との関係因子としては,術前外転角度のみに認められた。これは,術前の自動外転の主動作筋である三角筋中部繊維の機能が術後にも影響している可能性が考えられた。今回の結果から,術後の早期外転角度の関連因子としては,術前の外転角度が一指標となる可能性が示唆された。