The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-46] ポスター(運動器)P46

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-46-1] 反復性肩関節脱臼の外旋可動域とBankart lesionとの関連について
Bankart lesionの範囲と中心に着目して

勝木 秀治, 戸渡 敏之 (関東労災病院中央リハビリテーション部)

Keywords:反復性肩関節脱臼, bankart lesion, 外旋可動域

【はじめに,目的】

反復性肩関節脱臼では不安定性の原因となるBankart lesionを有するにも関わらず,脱臼回避のための筋性防御などにより不安定性が出現しやすい外旋の可動域が制限されている場合が多い。このため,我々は第51回日本理学療法学術大会において,反復性肩関節脱臼の外旋可動域に影響を与える因子を調査した。その結果,反復性肩関節脱臼の外旋可動域にはBankart lesionに代表される関節構造の破綻の有無とは統計的な関連性はなく,利き手や肩甲骨アライメントなどの身体特性が影響していることが示唆された。しかし,先の研究は関節構造の破綻の有無のみの調査であり,その詳細については検討していなかった。そこで今回はBankart lesionの詳細(範囲や中心)を調査し,反復性肩関節脱臼の外旋可動域との関連を検討した。


【方法】

対象疾患は一側の反復性肩関節脱臼とした。本研究の対象は2013年11月から2016年9月の期間に当院で肩関節脱臼制動術を施行し,筆者が術前理学療法を担当した症例のうち,Bankart lesionの詳細(範囲と中心)をカルテより後方視的に調査可能であった49名(男性42名,女7名,年齢28.0±13.2歳)とした。調査項目は(1)患側の肩関節外旋可動域(第1肢位,第2肢位),(2)Bankart lesionの範囲,(3)Bankart lesionの中心とした。(2)(3)は損傷部位を時計の文字盤を用いて表現し,右肩甲骨関節窩を正面から見たとき,上方を12時,前方を3時,下方を6時,後方を9時と定義した。例えば,Bankart lesionが3時~5時の場合,範囲を2(時間),中心を4(時)表記した。なお,患側が左肩関節の場合,180度反転して右肩関節と同様に前方を3時方向とした。(3)については,Bankart lesionの中心が4(時)未満と4(時)以上の2群に分類した。統計分析は,統計ソフト(SPSS statistics23 for Windows)を使用し,(1)と(2)との関連はPearsonの相関係数を用いて調査した。また(1)と(3)の関連は,(3)Bankart lesionの中心で分類した2群間で(1)に有意差があるかを平均値の差の検定を用いて調査した。いずれも有意水準は5%未満とした。


【結果】

(1)患側の肩関節外旋可動域と(2)Bankart lesionの範囲には有意な相関はなかった。また(3)Bankart lesionの中心で分類した2群間で(1)患側の肩関節外旋可動域に有意差はなかった。


【結論】

Bankart lesionの範囲や中心が異なれば,不安定性を有する関節肢位が異なることが予測される。そのような理由から,仮説としてBankart lesionの範囲や中心の違いが第1肢位,第2肢位での外旋可動域に影響を与えると考えた。しかし,今回の結果からはその傾向は認められなかった。前回の研究も踏まえると,Bankart lesionなどの関節構造の破綻は肩関節の不安定性には関与するものの,外旋可動域は利き手や肩甲骨アライメントなどの身体特性の影響が表出されやすいと考えられた。今後は症例数を増やし,不安定性と可動域との関連についても検討していきたい。