[P-MT-46-3] 腱板修復の良否が肩甲骨保持機能に与える影響
Keywords:腱板断裂, 肩甲骨保持機能, 筋電図
【はじめに,目的】
臨床場面において腱板断裂術後1年を経過しても腱板機能不全を認める症例をしばしば経験する。腱板機能に関して,筒井らは腱板機能が正常に働くためには肩甲骨保持機能が正常であることが不可欠であると述べており,雫田らは腱板断裂術後の腱板機能回復を阻害する因子の1つとして肩甲骨保持機能の異常を挙げており,ともに肩甲骨保持機能の重要性を示している。すなわち腱板機能の改善には良好な腱板修復とともに肩甲骨保持機能の正常化が必要であることが分かる。しかし,腱板修復の良否と肩甲骨保持機能の間に関連があるのかどうかについて述べた報告はわれわれが渉猟しえた範囲では無かった。今回,われわれは腱板修復の良否が肩甲骨保持機能に与える影響を明らかにする目的で調査したので報告する。
【方法】
対象は,広範囲腱板断裂を除く腱板全層断裂に対して腱板修復術施行後1年以上を経過した47例47肩とした。術後1年のMR画像を村上の分類に従って評価し,症例を腱板付着部が完全に修復された改善群32例(Type1)と,修復が不完全である非改善群15例(Type2とType3)の2群に分けて比較検討した。2群間で①性別,②年齢,③罹患側,④断裂サイズ,⑤運動時痛,⑥JOAスコア(日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準),⑦Spine-Scapula Distance差(以下,SSD差),⑧僧帽筋の%iEMG(以下,%iEMG)の8項目について比較検討した。統計学的解析は,性別および罹患側についてはχ2検定を用いて行い,年齢,断裂サイズ,運動時痛,肩関節可動域,SSD差および%iEMGについてはMann-Whitney U検定を用いて行い,それぞれ危険率0.05未満を有意差ありとした。
【結果】
性別,手術時年齢および罹患側については2群間で有意差を認めなかった。断裂サイズは非改善群が改善群より有意に大きかった(P<0.05)。運動時痛は非改善群が改善群より有意に強かった(P<0.05)。SSD差は非改善群が改善群より有意に大きく(P<0.05),肩甲骨が外転位にあることを示していた。JOAスコアは2群に有意差を認めなかった。僧帽筋の%iEMGについて,上部線維は非改善群が改善群より有意に大きく(P<0.05),中部線維は2群間で有意差を認めず,下部線維は非改善群が改善群より有意に小さかった(P<0.05)。
【結論】
腱板断裂サイズが大きい症例は術後1年の時点で腱板の修復が遅れ,その腱板修復の遅れが疼痛を残存させるとともに肩甲骨保持機能が低下し,腱板機能不全を引き起こしたと考えた。すなわち腱板修復が遅れている症例は腱板自体の機能不全だけでなく,肩甲骨保持機能の低下も伴うと思われた。
臨床場面において腱板断裂術後1年を経過しても腱板機能不全を認める症例をしばしば経験する。腱板機能に関して,筒井らは腱板機能が正常に働くためには肩甲骨保持機能が正常であることが不可欠であると述べており,雫田らは腱板断裂術後の腱板機能回復を阻害する因子の1つとして肩甲骨保持機能の異常を挙げており,ともに肩甲骨保持機能の重要性を示している。すなわち腱板機能の改善には良好な腱板修復とともに肩甲骨保持機能の正常化が必要であることが分かる。しかし,腱板修復の良否と肩甲骨保持機能の間に関連があるのかどうかについて述べた報告はわれわれが渉猟しえた範囲では無かった。今回,われわれは腱板修復の良否が肩甲骨保持機能に与える影響を明らかにする目的で調査したので報告する。
【方法】
対象は,広範囲腱板断裂を除く腱板全層断裂に対して腱板修復術施行後1年以上を経過した47例47肩とした。術後1年のMR画像を村上の分類に従って評価し,症例を腱板付着部が完全に修復された改善群32例(Type1)と,修復が不完全である非改善群15例(Type2とType3)の2群に分けて比較検討した。2群間で①性別,②年齢,③罹患側,④断裂サイズ,⑤運動時痛,⑥JOAスコア(日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準),⑦Spine-Scapula Distance差(以下,SSD差),⑧僧帽筋の%iEMG(以下,%iEMG)の8項目について比較検討した。統計学的解析は,性別および罹患側についてはχ2検定を用いて行い,年齢,断裂サイズ,運動時痛,肩関節可動域,SSD差および%iEMGについてはMann-Whitney U検定を用いて行い,それぞれ危険率0.05未満を有意差ありとした。
【結果】
性別,手術時年齢および罹患側については2群間で有意差を認めなかった。断裂サイズは非改善群が改善群より有意に大きかった(P<0.05)。運動時痛は非改善群が改善群より有意に強かった(P<0.05)。SSD差は非改善群が改善群より有意に大きく(P<0.05),肩甲骨が外転位にあることを示していた。JOAスコアは2群に有意差を認めなかった。僧帽筋の%iEMGについて,上部線維は非改善群が改善群より有意に大きく(P<0.05),中部線維は2群間で有意差を認めず,下部線維は非改善群が改善群より有意に小さかった(P<0.05)。
【結論】
腱板断裂サイズが大きい症例は術後1年の時点で腱板の修復が遅れ,その腱板修復の遅れが疼痛を残存させるとともに肩甲骨保持機能が低下し,腱板機能不全を引き起こしたと考えた。すなわち腱板修復が遅れている症例は腱板自体の機能不全だけでなく,肩甲骨保持機能の低下も伴うと思われた。