第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-47] ポスター(運動器)P47

2017年5月14日(日) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-47-3] 膝複合靱帯損傷(ACL,PCL,MCL)に対する同時再建術後の理学療法
1症例の長期経過

岡 徹1, 中川 泰彰2, 岡本 剛3 (1.京都警察病院リハビリテーション室, 2.京都医療センタースポーツ整形外科, 3.京都警察病院整形外科)

キーワード:膝複合靭帯損傷, 靱帯再建術, 長期経過

【はじめに】膝複合靱帯損傷は,高エネルギーによる外傷であり,内側や後外側支持機構をはじめとした合併損傷も多く,治療に難渋する1,2)。ACLとPCLおよびMCL同時再建術後の理学療法に関する長期経過の報告は少ない。今回,我々は同時再建術を施行した1症例の6年間に渡る長期経過についての報告をする。


【方法】症例紹介,28歳男性。逮捕術の試合中に側方から接触し,左膝外反・軽度屈曲位で相手の体重が膝に加わり受傷する。膝の動揺性,疼痛のためにスポーツ困難となり,初診日より1ヵ月後にACL(患側STG),PCL(健側STG),MCL(LK)同時再建術を施行した。術前X-P・理学所見は前方引き出しテスト(+),sagging(+),gravity sag view(5mmの後方落ち込みあり),外反ストレステスト(+),Lysholn score(0点)理学療法はPCL単独損傷の術後プログラムをベースに進めた。術後2週間は伸展位ギプス固定し,術後3週よりヒンジ膝装具と移行した。ROM練習は術後3週より開始し,荷重は術後6週で全荷重とした。筋力強化はPCLへの負担を考慮したプログラムで施行した。評価として膝伸展筋力,膝屈曲ROM,Lysholn scoreを術前,術後6ヶ月,1,および6年で行った。


結果膝伸展筋力は術前,術後6ヶ月,1,6年で健側比0,80,85,98%と回復し,Lysholn scoreは15,83,88,100点と向上した。膝屈曲ROMは術前30,術後6ヶ月135°と改善し後方落ち込みも出現していなかった。仕事は術後3ヵ月で復職し,スポーツ復帰は術後1年で現在の6年目も継続している。


結論】複合靱帯再建術のリハビリプログラムに関して,Fanelliらや高橋らはROM練習の開始時期をPCL再建術後にあわせており,当院においてもPCL再建術後のプログラムですすめた。早期からの積極的なROM練習は関節動揺性を出現させる危険がある為,3週間の膝伸展位固定を行ない,その後,自動運動や自動介助運動を中心に装具にて段階的にゆっくり拡大していった。その結果,術後6年後も関節不安定性もなく可動域の獲得・維持につながったと考える。膝伸展筋力は術後6ヶ月で健側比80%,屈曲筋力は健側比77%まで改善し順調な回復であった。スポーツ競技復帰に関しては,当院では術後1年の時点で術部の不安定感や疼痛などの自覚症状がなく,膝筋力が健側比で伸展筋90%,屈曲筋80%以上であったので復帰を許可した。術後6年目の現在も自覚症状がなく競技を継続している。再建術後の目標は移植腱が骨孔との生物学的固着が得られ,関節動揺性を制御することである。術後理学療法は,特に再建PCLに負担をかけない入念な生活指導と装具の着用が重要であり,長期的なフォローが必要であると考える。