[P-MT-48-1] 変形性膝関節症患者の足部舟状骨高に関連する因子
Keywords:足部内在筋, 膝関節症, 足部舟状骨高
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(膝OA)を有する患者数は年々増加しており,X線上での膝OA患者は2400万人と推定されている。膝OAでは膝関節のみでなく足部回内といった足部変形も生じることが知られている。内側型膝OAでは足部回内の代償により歩行時の膝内転モーメントを減少させる。舟状骨高は足部回内の指標の一つであり,内側型膝OA患者では健常者と比較して足部舟状骨沈下(Navicular Drop;以下N Drop)が大きいことが報告されている。一方,健常者のN Dropについては足内在筋による関与が報告されているが,膝OA患者を対象とした足部舟状骨と足部筋との関連を調べた報告は見当たらない。膝OA患者の足部舟状骨に影響する因子を明らかにすることによって,足部変形を予防する理学療法のための示唆を得ることができる。本研究の目的は膝OA患者の足部舟状骨高に影響する因子を明らかにすることとした。
【方法】
対象は内側型膝OA患者20名(平均年齢80.7±5.6歳,女性,両側OA)とし,OAの程度がより重度な下肢を計測対象とした。超音波画像診断装置(GEヘルスケア社製)を使用し,足外在筋(前脛骨筋,腓骨筋,腓腹筋),足内在筋(短趾屈筋,短母趾屈筋,母趾外転筋,小趾外転筋)と,大腿四頭筋の筋厚(cm)を測定した。膝関節形態測定としてFTA(°),膝関節他動可動域(°)を体表から測定した。端坐位および立位での舟状骨高(cm)を計測し,両者の変化率からN Drop(%)を算出した。また,日本版変形性膝関節症患者機能評価表(JKOM)を聴取した。Kellgren and Lawrence grade(K/Lgrade)は医師により分類した。
統計学的検定として,K/Lgrade3以下の軽症群,K/Lgrade4以上の重症群の2群間のN dropの違いをt検定で比較した。また,舟状骨高およびN Dropと各測定項目とのピアソンの相関係数を算出した。有意水準は5%未満とした
【結果】
舟状骨高は坐位3.6±0.4cm,立位3.3±0.6cmであり,N dropは9.6±11.6%であった。軽症群9名,重症群11名の舟状骨高とN Dropにおいて2群間に有意差はなかった。舟状骨高,N Dropと各測定項目との相関分析の結果,大腿四頭筋の筋厚と立位舟状骨高(r=0.49)および座位舟状骨高(r=0.47)との間に有意な正の相関を示したが,他の測定項目は舟状骨高,N Dropと有意な相関がなかった。
【結論】
本研究の結果,膝OA患者では健常者と異なり,舟状骨高には足内在筋・外在筋による影響は小さいことが示唆された。また膝OAの重症度や膝関節アライメントは舟状骨高と関連しておらず,大腿四頭筋の筋厚のみが有意に関連していた。大腿四頭筋による膝関節安定性が間接的に足部安定性に寄与する可能性が考えられる。膝OA患者においては,膝の重症度によらず大腿四頭筋の筋量を維持することが足部の正常なアライメント維持に重要であることが示唆された。大腿四頭筋と舟状骨高との関連性には他の因子が介在する可能性があるが,その介在因子の解明は今後の課題である。
変形性膝関節症(膝OA)を有する患者数は年々増加しており,X線上での膝OA患者は2400万人と推定されている。膝OAでは膝関節のみでなく足部回内といった足部変形も生じることが知られている。内側型膝OAでは足部回内の代償により歩行時の膝内転モーメントを減少させる。舟状骨高は足部回内の指標の一つであり,内側型膝OA患者では健常者と比較して足部舟状骨沈下(Navicular Drop;以下N Drop)が大きいことが報告されている。一方,健常者のN Dropについては足内在筋による関与が報告されているが,膝OA患者を対象とした足部舟状骨と足部筋との関連を調べた報告は見当たらない。膝OA患者の足部舟状骨に影響する因子を明らかにすることによって,足部変形を予防する理学療法のための示唆を得ることができる。本研究の目的は膝OA患者の足部舟状骨高に影響する因子を明らかにすることとした。
【方法】
対象は内側型膝OA患者20名(平均年齢80.7±5.6歳,女性,両側OA)とし,OAの程度がより重度な下肢を計測対象とした。超音波画像診断装置(GEヘルスケア社製)を使用し,足外在筋(前脛骨筋,腓骨筋,腓腹筋),足内在筋(短趾屈筋,短母趾屈筋,母趾外転筋,小趾外転筋)と,大腿四頭筋の筋厚(cm)を測定した。膝関節形態測定としてFTA(°),膝関節他動可動域(°)を体表から測定した。端坐位および立位での舟状骨高(cm)を計測し,両者の変化率からN Drop(%)を算出した。また,日本版変形性膝関節症患者機能評価表(JKOM)を聴取した。Kellgren and Lawrence grade(K/Lgrade)は医師により分類した。
統計学的検定として,K/Lgrade3以下の軽症群,K/Lgrade4以上の重症群の2群間のN dropの違いをt検定で比較した。また,舟状骨高およびN Dropと各測定項目とのピアソンの相関係数を算出した。有意水準は5%未満とした
【結果】
舟状骨高は坐位3.6±0.4cm,立位3.3±0.6cmであり,N dropは9.6±11.6%であった。軽症群9名,重症群11名の舟状骨高とN Dropにおいて2群間に有意差はなかった。舟状骨高,N Dropと各測定項目との相関分析の結果,大腿四頭筋の筋厚と立位舟状骨高(r=0.49)および座位舟状骨高(r=0.47)との間に有意な正の相関を示したが,他の測定項目は舟状骨高,N Dropと有意な相関がなかった。
【結論】
本研究の結果,膝OA患者では健常者と異なり,舟状骨高には足内在筋・外在筋による影響は小さいことが示唆された。また膝OAの重症度や膝関節アライメントは舟状骨高と関連しておらず,大腿四頭筋の筋厚のみが有意に関連していた。大腿四頭筋による膝関節安定性が間接的に足部安定性に寄与する可能性が考えられる。膝OA患者においては,膝の重症度によらず大腿四頭筋の筋量を維持することが足部の正常なアライメント維持に重要であることが示唆された。大腿四頭筋と舟状骨高との関連性には他の因子が介在する可能性があるが,その介在因子の解明は今後の課題である。