[P-MT-48-2] アーチ高率が歩行の機械的効率性に与える影響
Keywords:アーチ高率, 機械的効率性, 歩行分析
【はじめに,目的】
足部の内側縦アーチの低下により低アーチを呈した女性高齢者は,通常のアーチの人と比べて疲労を訴える人が多かったと報告されている。また,低アーチ群は通常アーチ群と比べて生理的コスト指数(Physiological Cost Index:PCI)が高く,歩行の効率性が悪いとの報告も見られるが,運動学的指標との関係は明らかにされていない。加えて,高アーチ群の歩行の効率性に関する報告は見当たらない。そのため,本研究の目的はアーチ高率の違いが歩行の機械的効率性に与える影響を明らかにすることとした。
【方法】
健常成人24名(21.6±0.7歳)を対象とし,鳴海らの分類をもとに低アーチ群(アーチ高率11%未満:以下L群)8名,中等度群(11%以上15%以下:以下N群)8名,高アーチ群(15%超過:以下H群)8名に分類した。計測は三次元動作解析装置及び床反力計を用いて,時間因子,下肢関節角度変化量,床反力データを測定した。床反力データを2回積分することで重心の速度及び変位,仕事率を求め,さらに仕事率を時間で積分することで一歩行周期中の仕事量(Wt)を算出した。歩行の機械的効率性を示す指標として,体重1kgを1m前進させるために必要とされる仕事量を意味するWt/kg/m(J/kg/m)を用いた。解析は各パラメータに対して3群間の比較を行った。また,Wt/kg/mに影響する変数を決定するために,アーチ高率及び身長,体重などの身体特性,歩行速度因子,垂直方向床反力ピーク値,3方向の重心移動幅,下肢関節角度変化量を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
Wt/kg/mにおいて,L群(0.75±0.12 J/kg/m)及びN群(0.69±0.10J/kg/m)と比べてH群(0.90±0.11 J/kg/m)は有意に高値を示し,L群とN群には差がなかった。前後,左右,上下方向の重心移動幅及び下肢関節角度変化量に有意差は認められなかった。重回帰分析の結果,Wt/kg/mに影響する因子として前後及び上下方向の重心移動幅とアーチ高率の3項目が抽出された(自由度調整済みR2=0.73)。
【結論】
飯田らの報告において,Wt/kg/mに歩調や歩幅による影響は認められないとされており,重回帰分析の結果からも歩行速度の影響は少ないと考えられる。Wt/kg/mに関して有意差が認められ,L群及びN群と比べてH群は歩行の機械的効率性の低下が示された。今回の結果からは重心移動幅に有意差が認められなかったが,H群の前後及び上下方向への重心移動幅は大きい傾向にあった。より大きな重心の移動に対して重心を上方や前方に移行させるために,より多くの筋活動が要求されたことによってWt/kg/mが増加したと考えられる。本研究により,アーチ高率が歩行の機械的効率性に影響を与えることが明らかとなった。その詳細を把握するために,筋活動量及び各関節のモーメントやパワーなどの運動学的側面からさらなる検討が必要である。
足部の内側縦アーチの低下により低アーチを呈した女性高齢者は,通常のアーチの人と比べて疲労を訴える人が多かったと報告されている。また,低アーチ群は通常アーチ群と比べて生理的コスト指数(Physiological Cost Index:PCI)が高く,歩行の効率性が悪いとの報告も見られるが,運動学的指標との関係は明らかにされていない。加えて,高アーチ群の歩行の効率性に関する報告は見当たらない。そのため,本研究の目的はアーチ高率の違いが歩行の機械的効率性に与える影響を明らかにすることとした。
【方法】
健常成人24名(21.6±0.7歳)を対象とし,鳴海らの分類をもとに低アーチ群(アーチ高率11%未満:以下L群)8名,中等度群(11%以上15%以下:以下N群)8名,高アーチ群(15%超過:以下H群)8名に分類した。計測は三次元動作解析装置及び床反力計を用いて,時間因子,下肢関節角度変化量,床反力データを測定した。床反力データを2回積分することで重心の速度及び変位,仕事率を求め,さらに仕事率を時間で積分することで一歩行周期中の仕事量(Wt)を算出した。歩行の機械的効率性を示す指標として,体重1kgを1m前進させるために必要とされる仕事量を意味するWt/kg/m(J/kg/m)を用いた。解析は各パラメータに対して3群間の比較を行った。また,Wt/kg/mに影響する変数を決定するために,アーチ高率及び身長,体重などの身体特性,歩行速度因子,垂直方向床反力ピーク値,3方向の重心移動幅,下肢関節角度変化量を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
Wt/kg/mにおいて,L群(0.75±0.12 J/kg/m)及びN群(0.69±0.10J/kg/m)と比べてH群(0.90±0.11 J/kg/m)は有意に高値を示し,L群とN群には差がなかった。前後,左右,上下方向の重心移動幅及び下肢関節角度変化量に有意差は認められなかった。重回帰分析の結果,Wt/kg/mに影響する因子として前後及び上下方向の重心移動幅とアーチ高率の3項目が抽出された(自由度調整済みR2=0.73)。
【結論】
飯田らの報告において,Wt/kg/mに歩調や歩幅による影響は認められないとされており,重回帰分析の結果からも歩行速度の影響は少ないと考えられる。Wt/kg/mに関して有意差が認められ,L群及びN群と比べてH群は歩行の機械的効率性の低下が示された。今回の結果からは重心移動幅に有意差が認められなかったが,H群の前後及び上下方向への重心移動幅は大きい傾向にあった。より大きな重心の移動に対して重心を上方や前方に移行させるために,より多くの筋活動が要求されたことによってWt/kg/mが増加したと考えられる。本研究により,アーチ高率が歩行の機械的効率性に影響を与えることが明らかとなった。その詳細を把握するために,筋活動量及び各関節のモーメントやパワーなどの運動学的側面からさらなる検討が必要である。