[P-MT-48-4] 中枢性麻痺後に生じる関節拘縮に対する経皮的炭酸ガス吸収療法の効果の検討
Keywords:中枢神経疾患, 拘縮, 経皮的炭酸ガス吸収療法
【はじめに,目的】
中枢性麻痺後に生じる関節拘縮は,理学療法に難渋する合併症のひとつである。しかし,その治療法はポジショニング,関節可動域運動,物理療法といった古典的ともいえる方法から発展をみていない。経皮的に二酸化炭素を局所組織内に取り込むことで,局所的な血流増加や酸素分圧の上昇を含むBohr効果を促進する経皮的炭酸ガス吸収療法(CO2療法)が,骨折や筋萎縮などの改善に有効とする複数の報告が近年なされている。CO2療法の作用機序に,有酸素運動時に体内で生じる変化と共通するものがあることから,関節拘縮の新しい治療法になるという着想を得た。本研究では,私たちが確立している中枢性麻痺後の関節拘縮モデルであるラット脊髄損傷関節拘縮モデルの膝関節に対するCO2療法の効果を検討した。
【方法】
10週齢の雄性SDラットを対照群,脊髄損傷を行う群(SCI群),脊髄損傷後にCO2療法を行う群(CO2群)の3群に分け,2週間と4週間,介入した。SCI群およびCO2群は先行研究に従い,T8レベルで脊髄を完全に切断した。CO2療法介入はSCI術翌日から行った。下肢全体にハイドロゲルを塗布して100%のCO2ガスに暴露し,経皮的に吸収させた。介入は1日20分間,毎日行った。実験期間終了後,深麻酔下で膝関節伸展可動域(伸展ROM)を測定し,膝関節をまたぐ筋を全て切除し,再度伸展ROMを測定した。筋によるROM制限を筋性要因,関節構成体によるROM制限を関節性要因と定義し,それぞれは先行研究に従い算出した。また両下肢から半膜様筋を摘出し,筋湿重量を測定した後,急速凍結し,クリオスタットを用いて横断切片を作成し,HE染色を行った。光学顕微鏡を用いて画像を撮影し,image Jで筋線維横断面積(CSA)を計測した。さらに両下肢から膝関節を摘出し,川本法を用いて凍結包埋した。凍結サンプルから矢状切片を作成し,HE染色を施し,光学顕微鏡で画像を撮影,image Jで後方滑膜長を計測した。
【結果】
脊髄損傷により増大した伸展ROM制限は,2週,4週のCO2療法介入により改善した。2週では筋性要因,関節性要因,4週では関節性要因の改善が認められた。また,滑膜長は2週においては3群間に差は認められず,4週において対照群,CO2群と比較してSCI群で低値を示す傾向がみられた。半膜様筋の筋湿重量,CSAにはCO2療法介入による改善は認められなかった。
【結論】
本研究では,CO2療法のラット脊髄損傷関節拘縮モデルの伸展ROM制限に対する有効性が示された。介入により筋性要因と関節性要因の両方に改善がみられたが,特に4週の介入で関節構成体における改善傾向が認められた。CO2療法は簡便かつ非侵襲的であり,臨床でも施行しやすく,従来の治療法と組み合わせることで関節拘縮に対するより高い改善効果が期待される。
中枢性麻痺後に生じる関節拘縮は,理学療法に難渋する合併症のひとつである。しかし,その治療法はポジショニング,関節可動域運動,物理療法といった古典的ともいえる方法から発展をみていない。経皮的に二酸化炭素を局所組織内に取り込むことで,局所的な血流増加や酸素分圧の上昇を含むBohr効果を促進する経皮的炭酸ガス吸収療法(CO2療法)が,骨折や筋萎縮などの改善に有効とする複数の報告が近年なされている。CO2療法の作用機序に,有酸素運動時に体内で生じる変化と共通するものがあることから,関節拘縮の新しい治療法になるという着想を得た。本研究では,私たちが確立している中枢性麻痺後の関節拘縮モデルであるラット脊髄損傷関節拘縮モデルの膝関節に対するCO2療法の効果を検討した。
【方法】
10週齢の雄性SDラットを対照群,脊髄損傷を行う群(SCI群),脊髄損傷後にCO2療法を行う群(CO2群)の3群に分け,2週間と4週間,介入した。SCI群およびCO2群は先行研究に従い,T8レベルで脊髄を完全に切断した。CO2療法介入はSCI術翌日から行った。下肢全体にハイドロゲルを塗布して100%のCO2ガスに暴露し,経皮的に吸収させた。介入は1日20分間,毎日行った。実験期間終了後,深麻酔下で膝関節伸展可動域(伸展ROM)を測定し,膝関節をまたぐ筋を全て切除し,再度伸展ROMを測定した。筋によるROM制限を筋性要因,関節構成体によるROM制限を関節性要因と定義し,それぞれは先行研究に従い算出した。また両下肢から半膜様筋を摘出し,筋湿重量を測定した後,急速凍結し,クリオスタットを用いて横断切片を作成し,HE染色を行った。光学顕微鏡を用いて画像を撮影し,image Jで筋線維横断面積(CSA)を計測した。さらに両下肢から膝関節を摘出し,川本法を用いて凍結包埋した。凍結サンプルから矢状切片を作成し,HE染色を施し,光学顕微鏡で画像を撮影,image Jで後方滑膜長を計測した。
【結果】
脊髄損傷により増大した伸展ROM制限は,2週,4週のCO2療法介入により改善した。2週では筋性要因,関節性要因,4週では関節性要因の改善が認められた。また,滑膜長は2週においては3群間に差は認められず,4週において対照群,CO2群と比較してSCI群で低値を示す傾向がみられた。半膜様筋の筋湿重量,CSAにはCO2療法介入による改善は認められなかった。
【結論】
本研究では,CO2療法のラット脊髄損傷関節拘縮モデルの伸展ROM制限に対する有効性が示された。介入により筋性要因と関節性要因の両方に改善がみられたが,特に4週の介入で関節構成体における改善傾向が認められた。CO2療法は簡便かつ非侵襲的であり,臨床でも施行しやすく,従来の治療法と組み合わせることで関節拘縮に対するより高い改善効果が期待される。