[P-MT-48-5] 重篤な関節可動域制限を呈した障害高齢者に対するベルト式骨格筋電極刺激法(B-SES)の即時効果の検証
Keywords:介護・終末期, ベルト式骨格筋電極刺激法, 関節可動域制限
【はじめに,目的】介護・終末期にある障害高齢者においては,全身の各関節に拘縮が認められることが多く,特に下肢では股関節の屈曲・内転・内旋拘縮や膝関節の屈曲・伸展拘縮,足関節の尖足拘縮が頻繁に認められる。そして,このような拘縮を抱えた障害高齢者では,異常な筋緊張が惹起されていることも多く,これらの結果として重篤な関節可動域(ROM)制限が発生している。つまり,筋緊張の影響を取り除かない限り,拘縮に対するストレッチなどの他動運動の効果は期待できず,ROM制限の改善も困難である。一方,電気刺激法は筋緊張の軽減を促すことが可能であり,障害高齢者が抱える重篤なROM制限に対しても改善効果が期待でき,特に他動運動の前処置として活用できるのではないかと考えられる。そこで,本研究では下肢全体の骨格筋を刺激することができるベルト式骨格筋電極刺激法(B-SES)を用い,障害高齢者が抱える下肢の重篤なROM制限に対するB-SESの即時効果を検討することを目的とした。
【方法】対象は日常生活自立度ランクBまたはCの状態にあり,下肢に重篤なROM制限を呈した障害高齢者17例(男性8例,女性9例,平均年齢82±9.2歳,平均入院期間1331±960日)とした。疾患の内訳は脳卒中13例,肺炎後の廃用症候群3例,脊髄損傷1例であった。対象者に対してはベルト電極を両側の大腿近位部,遠位部,下腿遠位部に装着し,4Hzの単収縮モードでB-SESを20分間実施した。評価項目は下肢のROM,筋緊張ならびに痛みとし,B-SESの実施前後で評価した。ROMは両側の股関節屈曲・外転,膝関節屈曲・伸展,足関節背屈ならびに開排位での膝間距離を測定し,筋緊張はmodified ashworth scale(MAS)を用いて,上記の各関節の運動方向について評価した。また,痛みは日本語版アビー痛みスケール(APS-J)の「声を上げる」,「表情」,「ボディーランゲージ」の3項目についてROM測定時に評価した。統計処理にはWilcoxonの符号付順位和検定と対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】B-SES実施前後の比較において,各関節・運動方向のROM,膝間距離は有意に改善し,特に股関節外転の改善は顕著であった。また,MASも股関節屈曲・外転,膝関節伸展・屈曲において有意な改善が認められた。一方,APS-Jの各項目は有意な変化は認められなかった。
【結論】今回,B-SESを実施することで各関節・運動方向の筋緊張が軽減するとともに,ROMの改善が認められた。つまり,下肢全体の骨格筋を刺激することが可能なB-SESは障害高齢者が抱える重篤な下肢のROM制限に対して即時効果を発揮することから,他動運動の前処置としての有効な手段の一つになる可能性が示唆された。
【方法】対象は日常生活自立度ランクBまたはCの状態にあり,下肢に重篤なROM制限を呈した障害高齢者17例(男性8例,女性9例,平均年齢82±9.2歳,平均入院期間1331±960日)とした。疾患の内訳は脳卒中13例,肺炎後の廃用症候群3例,脊髄損傷1例であった。対象者に対してはベルト電極を両側の大腿近位部,遠位部,下腿遠位部に装着し,4Hzの単収縮モードでB-SESを20分間実施した。評価項目は下肢のROM,筋緊張ならびに痛みとし,B-SESの実施前後で評価した。ROMは両側の股関節屈曲・外転,膝関節屈曲・伸展,足関節背屈ならびに開排位での膝間距離を測定し,筋緊張はmodified ashworth scale(MAS)を用いて,上記の各関節の運動方向について評価した。また,痛みは日本語版アビー痛みスケール(APS-J)の「声を上げる」,「表情」,「ボディーランゲージ」の3項目についてROM測定時に評価した。統計処理にはWilcoxonの符号付順位和検定と対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】B-SES実施前後の比較において,各関節・運動方向のROM,膝間距離は有意に改善し,特に股関節外転の改善は顕著であった。また,MASも股関節屈曲・外転,膝関節伸展・屈曲において有意な改善が認められた。一方,APS-Jの各項目は有意な変化は認められなかった。
【結論】今回,B-SESを実施することで各関節・運動方向の筋緊張が軽減するとともに,ROMの改善が認められた。つまり,下肢全体の骨格筋を刺激することが可能なB-SESは障害高齢者が抱える重篤な下肢のROM制限に対して即時効果を発揮することから,他動運動の前処置としての有効な手段の一つになる可能性が示唆された。