[P-MT-49-5] 荷重の違いが前脛骨筋および腓腹筋の筋活動に及ぼす影響
―健常者とアキレス腱断裂術後症例における検討―
Keywords:表面筋電図, アキレス腱断裂, 荷重
【はじめに,目的】アキレス腱断裂後の理学療法では,背屈角度の増加と底屈筋の収縮の増大によるアキレス腱への牽引負荷に注意しなければならない。そこで本実験では,足関節背屈角度を一定とした状態での荷重量と荷重位置の違いが足関節底屈筋と背屈筋の筋活動に及ぼす影響を検討するとともに,健常者とアキレス腱断裂後の症例を比較検討した。
【方法】対象は健常成人男性10名(平均年齢27.6±5.0歳)とアキレス腱断裂術後1.5ヵ月の成人男性1名(年齢35歳)とした。症例のADLは自立で,歩行時には術側の立脚後期に患部に痛みを認めた。足関節背屈0度となるよう非伸縮性テープ(ニトリートCB38)で固定し,安静立位および荷重位置と荷重量を変化させた立位における下肢筋の表面筋電図をMyosystem1400(Noraxon社)を用いて記録した。荷重位置は中足趾節間関節(前足部),踵骨(後足部),前足部と後足部の荷重が均一になる位置(中足部)の3条件とし,該当部位へ筋電図の記録電極を配置することにより同定した。荷重量は体重の1/3,1/2,2/3,全荷重とした。被検筋は利き足の前脛骨筋,腓腹筋内側頭および外側頭とした。測定時間は10秒間とし,得られた生波形を整流化し平均振幅値を算出した。荷重時の振幅値を安静立位時における同名筋の振幅値で除して筋電図積分値の相対値を求めた。荷重量は体重計を用いて同定した。ただし,症例では痛みの自制範囲内とした。記録時には,ゴニオメータを用いて足関節背屈肢位の測定とVisual Analogue Scaleによる痛みの評価もおこなった。統計学的処理は,荷重位置の違いによる筋電図積分値の相対値を一元配置分散分析とTurkeyの多重比較検定を行った。なお,有意水準は危険率5%とした。
【結果】健常者の前脛骨筋の筋電図積分値の相対値はすべての荷重量において前足部と中足部より後足部荷重で有意に高値を認め,症例も類似した結果が得られた。健常者の腓腹筋内側頭の1/2・全荷重では後足部と比較し前足部荷重において有意に高値を認め,2/3では中足部と後足部より前足部において有意に高値を認めた。健常者の腓腹筋外側頭ではすべての荷重量において中足部と後足部より前足部荷重において有意に高値を認めた。また,前足部への荷重量の増加に伴い筋活動の増加を認めた。一方,症例の腓腹筋は前足部へ全荷重させた場合に痛みが増強し2/3よりも筋活動が減少した。
【結論】症例の全荷重時には痛みが増強したものの2/3以上の荷重が可能であった。しかしながら,痛みが増強した際には筋活動が減少し,筋活動量が増大しないことが確認できた。これには,他の筋による代償や痛みや外傷に由来する脊髄の抑制機構の関与が考えられる。今後は他の筋活動の変化やH反射等の誘発筋電図所見も併せて検討していくことが必要と考えられた。
【方法】対象は健常成人男性10名(平均年齢27.6±5.0歳)とアキレス腱断裂術後1.5ヵ月の成人男性1名(年齢35歳)とした。症例のADLは自立で,歩行時には術側の立脚後期に患部に痛みを認めた。足関節背屈0度となるよう非伸縮性テープ(ニトリートCB38)で固定し,安静立位および荷重位置と荷重量を変化させた立位における下肢筋の表面筋電図をMyosystem1400(Noraxon社)を用いて記録した。荷重位置は中足趾節間関節(前足部),踵骨(後足部),前足部と後足部の荷重が均一になる位置(中足部)の3条件とし,該当部位へ筋電図の記録電極を配置することにより同定した。荷重量は体重の1/3,1/2,2/3,全荷重とした。被検筋は利き足の前脛骨筋,腓腹筋内側頭および外側頭とした。測定時間は10秒間とし,得られた生波形を整流化し平均振幅値を算出した。荷重時の振幅値を安静立位時における同名筋の振幅値で除して筋電図積分値の相対値を求めた。荷重量は体重計を用いて同定した。ただし,症例では痛みの自制範囲内とした。記録時には,ゴニオメータを用いて足関節背屈肢位の測定とVisual Analogue Scaleによる痛みの評価もおこなった。統計学的処理は,荷重位置の違いによる筋電図積分値の相対値を一元配置分散分析とTurkeyの多重比較検定を行った。なお,有意水準は危険率5%とした。
【結果】健常者の前脛骨筋の筋電図積分値の相対値はすべての荷重量において前足部と中足部より後足部荷重で有意に高値を認め,症例も類似した結果が得られた。健常者の腓腹筋内側頭の1/2・全荷重では後足部と比較し前足部荷重において有意に高値を認め,2/3では中足部と後足部より前足部において有意に高値を認めた。健常者の腓腹筋外側頭ではすべての荷重量において中足部と後足部より前足部荷重において有意に高値を認めた。また,前足部への荷重量の増加に伴い筋活動の増加を認めた。一方,症例の腓腹筋は前足部へ全荷重させた場合に痛みが増強し2/3よりも筋活動が減少した。
【結論】症例の全荷重時には痛みが増強したものの2/3以上の荷重が可能であった。しかしながら,痛みが増強した際には筋活動が減少し,筋活動量が増大しないことが確認できた。これには,他の筋による代償や痛みや外傷に由来する脊髄の抑制機構の関与が考えられる。今後は他の筋活動の変化やH反射等の誘発筋電図所見も併せて検討していくことが必要と考えられた。