[P-MT-50-4] 変形性関節症者の自然立位時の荷重非対称性と運動・姿勢調節機能との関係
Keywords:荷重量, 全人工膝関節置換術, 全人工股関節置換術
【はじめに,目的】
変形性関節症者は,下肢筋力低下やバランス能力低下が混在し歩行能力に低下がみられ転倒のリスクが高いと報告されている。症状の進行により動的バランス,静的バランスが低下し,立位姿勢において静止立位時の左右荷重量の不均等を呈すると報告されている。立位姿勢時の下肢荷重量の非対称性の原因は,疼痛・筋力低下・バランス能力低下によって生じると考えられ,臨床現場においても,左右の下肢の荷重量が不均等な状態で静止立位を保っている場面を見受けることがある。立位姿勢の非対称性を是正するために理学療法場面において静止立位姿勢で左右の下肢へ均等に荷重をかける練習を行う場合がある。そこで本研究の目的は,変形性関節症を呈し人工関節置換術を施行した者を対象に,左右の下肢の荷重量の非対称性が運動・姿勢調節機能に関係するかを明らかにすることである。
【方法】
対象は,A病院に入院中の変形性関節症を呈し全人工関節置換術を施行した者20名(THA10名・TKA10名),男女比は男性4名・女性16名,平均年齢64.85±10.95歳とした。測定課題は,静止立位での荷重比(体重計により計測),快適速度での10m歩行速度,ステップ動作(前方モニターに表示される矢印の向きにより振り出す下肢を決定し,動作時間を計測した),Functional Balance Scale(FBS),粗大筋力,疼痛(VAS)とした。全人工関節置換術を施行した側を手術側,他方を非手術側とした。ステップ動作は,自然立位からの動作(自然荷重)と荷重量を均等に矯正してからの動作(均等荷重)をそれぞれ16施行ずつ行った。統計解析は,左右の荷重量の差異を対応のあるT検定を行った。自然荷重からのステップ動作時間と均等荷重からのステップ動作時間の関連を手術側振り出し・非手術側振り出しそれぞれ対応のあるT検定を用いて行った。各評価項目の相関をPearsonの相関分析を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
左右の荷重比は,非手術側(58.72%)・手術側(41.28%)と有意に非手術側が高かった。非手術側を振り出す際のステップ動作において,均等荷重からの振り出し時間のほうが自然荷重からの振り出しより有意に短かった。静止立位での左右の荷重比はどの項目とも有意な相関を認めなかった。
【結論】
全人工関節置換術後の患者は,自然静止立位において左右の下肢の荷重量に差がみられたが,荷重量の不均等の程度は,運動機能・粗大筋力・疼痛の程度との関連はみられなかった。ステップ動作に置いて非手術側を振り出す際に,自然荷重からの振り出しの方が,より時間がかかる結果が得られたことは,軸足となる手術側へより体重移動を行う必要があるからだと考えられる。ステップ動作の遅延は,転倒の危険因子となりうると報告されている。その点を考慮すると,立位時の荷重の対称性を促す理学療法は有効ではないかと考えられる。
変形性関節症者は,下肢筋力低下やバランス能力低下が混在し歩行能力に低下がみられ転倒のリスクが高いと報告されている。症状の進行により動的バランス,静的バランスが低下し,立位姿勢において静止立位時の左右荷重量の不均等を呈すると報告されている。立位姿勢時の下肢荷重量の非対称性の原因は,疼痛・筋力低下・バランス能力低下によって生じると考えられ,臨床現場においても,左右の下肢の荷重量が不均等な状態で静止立位を保っている場面を見受けることがある。立位姿勢の非対称性を是正するために理学療法場面において静止立位姿勢で左右の下肢へ均等に荷重をかける練習を行う場合がある。そこで本研究の目的は,変形性関節症を呈し人工関節置換術を施行した者を対象に,左右の下肢の荷重量の非対称性が運動・姿勢調節機能に関係するかを明らかにすることである。
【方法】
対象は,A病院に入院中の変形性関節症を呈し全人工関節置換術を施行した者20名(THA10名・TKA10名),男女比は男性4名・女性16名,平均年齢64.85±10.95歳とした。測定課題は,静止立位での荷重比(体重計により計測),快適速度での10m歩行速度,ステップ動作(前方モニターに表示される矢印の向きにより振り出す下肢を決定し,動作時間を計測した),Functional Balance Scale(FBS),粗大筋力,疼痛(VAS)とした。全人工関節置換術を施行した側を手術側,他方を非手術側とした。ステップ動作は,自然立位からの動作(自然荷重)と荷重量を均等に矯正してからの動作(均等荷重)をそれぞれ16施行ずつ行った。統計解析は,左右の荷重量の差異を対応のあるT検定を行った。自然荷重からのステップ動作時間と均等荷重からのステップ動作時間の関連を手術側振り出し・非手術側振り出しそれぞれ対応のあるT検定を用いて行った。各評価項目の相関をPearsonの相関分析を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
左右の荷重比は,非手術側(58.72%)・手術側(41.28%)と有意に非手術側が高かった。非手術側を振り出す際のステップ動作において,均等荷重からの振り出し時間のほうが自然荷重からの振り出しより有意に短かった。静止立位での左右の荷重比はどの項目とも有意な相関を認めなかった。
【結論】
全人工関節置換術後の患者は,自然静止立位において左右の下肢の荷重量に差がみられたが,荷重量の不均等の程度は,運動機能・粗大筋力・疼痛の程度との関連はみられなかった。ステップ動作に置いて非手術側を振り出す際に,自然荷重からの振り出しの方が,より時間がかかる結果が得られたことは,軸足となる手術側へより体重移動を行う必要があるからだと考えられる。ステップ動作の遅延は,転倒の危険因子となりうると報告されている。その点を考慮すると,立位時の荷重の対称性を促す理学療法は有効ではないかと考えられる。