The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-52] ポスター(運動器)P52

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-52-5] 精神疾患によりリハビリテーションに困難を来した大腿骨頚部骨折患者の歩行機能とその予測

上薗 紗映1, 加藤 宗規2 (1.平川病院リハビリテーション科, 2.了徳寺大学健康科学部理学療法学科)

Keywords:大腿骨頚部骨折, 精神疾患, 予後予測

【はじめに,目的】認知症は大腿骨頚部骨折・大腿骨転子部骨折の術後成績を悪化させる要因とされている。しかし,認知症以外の精神疾患については明らかではない。当院は常勤理学療法士11名がいる精神科の病院で,精神疾患に対応しながらの理学療法が提供できる環境にある。そこで,本研究は一般病院では対応が困難であったために当院に転院してきた大腿骨頚部骨折術後の患者を対象として,歩行自立率と歩行自立予測について検討することを目的とした。

【方法】対象は2007年1月から2014年3月までの間に当院で大腿骨頚部骨折の術後リハビリテーションを受けた108名のうち,脳血管疾患による明らかな運動麻痺がある患者,調査期間終了時点でリハビリテーションを終了していない患者を除いた87名。リハ終了時の歩行FIM予測に用いる重回帰式を求めた。その際,終了時歩行FIMを従属変数とし,その他項目(年齢,性別,精神疾患名,術後からリハビリテーション開始までの期間,受傷前の移動機能)を独立変数とした。精神疾患名は,疾患ごと(統合失調症,うつ病・双極性感情障害,アルコール依存症,認知症,その他)の有無に分けた。そして,終了時歩行自立率,および終了時歩行FIM予測値が6以上である場合の感度,特異度を求めた。

【結果】最終時歩行FIMが6点以上で自立に至った人数は33名であり,自立率38%であった。得らえた予測式は「終了時歩行FIM=2.48+うつ病・双極性障害×1.254+開始時歩行FIM×0.674(R2=0.353)」であり,予測値が6以上は8名,うち最終時歩行が自立していたのは7名であった。予測式による予測は感度0.21,特異度0.98,陽性的中率0.88,陰性的中率0.67であった。

【結論】結果より,一般病院で対応ができない精神疾患を有する大腿骨頸部骨折術後患者であっても,精神科において理学療法士が対応できる環境であれば40%近くが歩行自立に至り,精神科領域における理学療法士配属の意義が考えられた。しかし,予測式の感度が低いため,得られた予測値の解釈に際しては予測値が6以上であった場合の歩行自立率は約90%,6未満であった場合の歩行自立率は約30%とする程度が適切と考えられえた。今後はさらに精度の高い予測について検討が望まれる。