第52回日本理学療法学術大会

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-01] ポスター(神経)P01

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-01-4] 長下肢装具を使用した歩行練習が麻痺側大腿四頭筋へ与える有用性についての検討
single case study

鈴木 翔太1, 武井 圭一1, 藪崎 純1, 栗原 達也1, 赤塚 萌子1, 山岸 宏江2, 山本 満2 (1.埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション部, 2.埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション科)

キーワード:長下肢装具, 歩行, 大腿四頭筋

【はじめに】

近年,長下肢装具(以下KAFO)を使用した歩行が脳卒中の理学療法において注目されているが,その目的は早期からの立位・歩行による廃用症候群の予防や体幹や股関節周囲筋の改善とされている報告が多い。古くから片麻痺症例の歩行能力には麻痺側の膝伸展筋力が関係しているとされているが,KAFO使用下では膝関節を固定させた歩行となり,大腿四頭筋(以下QF)の機能改善が図れるかは懸念されるところである。今回,脳腫瘍術後に重度片麻痺を呈した症例に対して,短下肢装具(以下AFO)とKAFO歩行時の筋収縮と歩行距離の違い,またKAFO歩行練習の経過から麻痺側QFに対するKAFOの有用性について考察したため報告する。


【方法】

症例は左前頭葉に脳腫瘍を認め,右片麻痺を呈し,開頭腫瘍摘出術を施行された20歳代の女性である。3病日から理学療法を開始し,27病日まで起立練習やAFOを使用した歩行練習を行ったが,運動麻痺の改善を認めなかった。28病日の理学療法所見では,JCSは清明,下肢のBRSはII,非麻痺側下肢のMMTは4-5,感覚は正常,歩行は平行棒内にて一部介助であり,麻痺側下肢はAFO装着下でも反張膝を認めた。28病日にAFOとKAFOの連続歩行距離を評価し,各歩行中のQFの筋電波形を川村義肢株式会社製のGait Judge System(以下GJS)を使用して計測した。またKAFOでは同時にGJSと同期したipad内蔵カメラで歩行を撮影した。その動画から麻痺側下肢が初期接地してから再び初期接地するまでの所要時間(以下ストライド時間)を計測し,計測中の平均ストライド時間を求めた。計測は28病日にGJSを用いたAFOとKAFOの評価を行い,39病日にKAFOのGJSの評価と下肢BRS,KAFOの歩行距離を評価した。28~39病日はKAFOを使用した歩行練習を中心に介入した。


【結果】

28病日の結果は,歩行距離ではAFOで平行棒内2往復,KAFOで5往復であった。筋電波形では,AFOの立脚期最大振幅は17μV,KAFOの立脚期最大振幅は15μVであった。AFO,KAFOともに立脚中期に波形の最大振幅を認めた。またKAFOの平均ストライド時間は,5.8秒であった。39病日の結果は,KAFOの筋電波形では,立脚期最大振幅は112μVであり,荷重応答期に波形の最大振幅を認めた。平均ストライド時間は,2.7秒であった。39病日の下肢のBRSはIIIであり,歩行距離はKAFOを使用して11往復可能であった。


【結論】

経過の中で,KAFOの筋電振幅の増大を認め,平均ストライド時間の短縮を認めた。このことは,KAFOによる安定性の向上から転倒に対する恐怖心を軽減したことで重心移動を円滑にし,歩行時の上下方向の加速度を向上させた歩行パターンとなり,荷重応答期のQFに強い収縮が要求されたと考えられた。重度片麻痺症例に対するKAFO装着下での歩行練習は,安定性向上による円滑な重心移動を促すことで麻痺側QFの筋収縮を促す特徴があると考えられた。