[P-NV-03-3] 急性期脳梗塞患者における急性・回復期退院後の転帰先に関連する因子の検討
キーワード:脳梗塞, 転帰先, 早期予測
【はじめに,目的】
脳卒中治療ガイドライン2015では,日常生活動作,機能障害,患者属性,共存疾患,社会的背景などをもとに転帰先を予測することが推奨されている。先行研究にて,急性期病院から自宅退院に関連する因子は多く報告されているが,回復期病院に転院した後の転帰先に関連する因子の報告は少なく,長期予後を想定できずに介入する場合も少なくない。今回,急性期病院に入院した脳梗塞患者の長期的な転帰先に関連する因子を検討することを目的とした。
【方法】
対象は,平成27年7月から平成28年3月までに当院に脳梗塞発症後3日以内に入院した162名のうち,発症前施設入所であった症例,急性期退院後の転帰先が自宅・回復期病院以外であった症例,カルテ上で情報を十分に得られなかった症例を除外した98名とした。当院からの転帰先により自宅群(45名),回復期群(53名)に分けた。検討項目は性別,年齢,同居者の有無,既往歴,病型分類,リハビリテーション(リハ)開始までの日数,在院日数,入院時血清総蛋白値,最重症時National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS),初回リハ時下肢Brunnstrom Recovery Stage(Br stage),入院1週間後のmodified Rankin Scale(mRS)とした。
統計解析には2群間比較としてMann-Whiteny検定,χ2検定を用いた。次に従属変数を転帰先とし,独立変数として2群間比較で有意差がある項目を投入し,変数増加法の二項ロジスティック回帰分析を行い,選択された項目はReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線での分析を行った。有意水準は5%未満とした。
さらに回復期病院に転院した後の転帰先により自宅群(38名),療養・施設群(13名)に分け同様の検討を行った。
【結果】
急性期退院後の転帰先による2群間の比較では年齢,病型,在院日数,NIHSS,下肢Br stage,mRSで有意差を認めた。二項ロジスティック回帰分析ではNIHSS(オッズ比2.387,95%信頼区間1.674から3.404),mRS(オッズ比5.729,95%信頼区間2.934から11.19)が有意な変数として選択された。また妥当なカットオフ値はNIHSS 5点(曲線下面積0.926),mRS 4(曲線下面積0.896)であった。回復期退院後の転帰先による2群間の比較では年齢,同居者の有無,病型,在院日数,NIHSS,mRSで有意差を認めた。二項ロジスティック回帰分析では,同居者の有無(オッズ比3.927,95%信頼区間1.050から14.688)が有意な変数として選択された。
【結論】
本研究の結果から最重症時NIHSSが5点以上,入院1週間後mRSが4以上であれば回復期病院に転院する傾向であることが示唆された。加えて独居であれば長期的な転帰が療養・施設となる可能性が示唆された。転帰の予測により,長期目標を見据えたリハや転帰に向けた準備を早期から行うことが可能と考える。今後は認知機能や高次脳機能などの更に多面的な評価や,経時的な評価との関連性も検討する必要があると考える。
脳卒中治療ガイドライン2015では,日常生活動作,機能障害,患者属性,共存疾患,社会的背景などをもとに転帰先を予測することが推奨されている。先行研究にて,急性期病院から自宅退院に関連する因子は多く報告されているが,回復期病院に転院した後の転帰先に関連する因子の報告は少なく,長期予後を想定できずに介入する場合も少なくない。今回,急性期病院に入院した脳梗塞患者の長期的な転帰先に関連する因子を検討することを目的とした。
【方法】
対象は,平成27年7月から平成28年3月までに当院に脳梗塞発症後3日以内に入院した162名のうち,発症前施設入所であった症例,急性期退院後の転帰先が自宅・回復期病院以外であった症例,カルテ上で情報を十分に得られなかった症例を除外した98名とした。当院からの転帰先により自宅群(45名),回復期群(53名)に分けた。検討項目は性別,年齢,同居者の有無,既往歴,病型分類,リハビリテーション(リハ)開始までの日数,在院日数,入院時血清総蛋白値,最重症時National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS),初回リハ時下肢Brunnstrom Recovery Stage(Br stage),入院1週間後のmodified Rankin Scale(mRS)とした。
統計解析には2群間比較としてMann-Whiteny検定,χ2検定を用いた。次に従属変数を転帰先とし,独立変数として2群間比較で有意差がある項目を投入し,変数増加法の二項ロジスティック回帰分析を行い,選択された項目はReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線での分析を行った。有意水準は5%未満とした。
さらに回復期病院に転院した後の転帰先により自宅群(38名),療養・施設群(13名)に分け同様の検討を行った。
【結果】
急性期退院後の転帰先による2群間の比較では年齢,病型,在院日数,NIHSS,下肢Br stage,mRSで有意差を認めた。二項ロジスティック回帰分析ではNIHSS(オッズ比2.387,95%信頼区間1.674から3.404),mRS(オッズ比5.729,95%信頼区間2.934から11.19)が有意な変数として選択された。また妥当なカットオフ値はNIHSS 5点(曲線下面積0.926),mRS 4(曲線下面積0.896)であった。回復期退院後の転帰先による2群間の比較では年齢,同居者の有無,病型,在院日数,NIHSS,mRSで有意差を認めた。二項ロジスティック回帰分析では,同居者の有無(オッズ比3.927,95%信頼区間1.050から14.688)が有意な変数として選択された。
【結論】
本研究の結果から最重症時NIHSSが5点以上,入院1週間後mRSが4以上であれば回復期病院に転院する傾向であることが示唆された。加えて独居であれば長期的な転帰が療養・施設となる可能性が示唆された。転帰の予測により,長期目標を見据えたリハや転帰に向けた準備を早期から行うことが可能と考える。今後は認知機能や高次脳機能などの更に多面的な評価や,経時的な評価との関連性も検討する必要があると考える。