第52回日本理学療法学術大会

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-03] ポスター(神経)P03

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-03-4] 急性期脳卒中者の自律神経機能の回復過程
糖尿病の影響

星野 高志1,2, 小口 和代1, 寳珠山 稔2 (1.刈谷豊田総合病院リハビリテーション科, 2.名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻)

キーワード:急性期脳卒中, 自律神経, 糖尿病

【はじめに】

急性期脳卒中では自律神経機能(autonomic nervous function,ANF)の低下が報告されているが詳細は明らかではない(Orlandi, 2000)。脳卒中早期のリハビリテーション(リハ)において,姿勢変化による血圧変動は脳血流に直接影響するため十分考慮すべき点であり,ANFの測定には非侵襲性,簡便性から心拍変動(heart rate variability,HRV)がよく用いられる(Raedt, 2015)。また,脳卒中の主な併存症である糖尿病(DM)患者においてもANFは低下する(Stuckey, 2013)。本研究ではHRVを用いて急性期脳卒中におけるANFの回復過程をDMの併存に着目して検討した。


【方法】

対象は急性期初発脳卒中者のうち,自律神経作動薬の使用者や,著明な不整脈,DM性末梢神経障害を有するものを除外した30名とし,DMのないS群DMを有するDM群に分けた。第7病日までを評価期間とし,各回背臥位(pre),端座位(sit),背臥位(post)の順に姿勢変換した。HRVは各姿勢5分間の心拍データを周波数解析し,高周波成分(HF:0.15~0.4Hz)のnormalized unit(HFnu)を副交感神経,低周波成分(LF:0.04~0.15Hz)とHFの比(LF/HF比)を交感神経の指標とした。心拍数(HR),血圧(SBP,DBP)は3回の平均を用いた。各指標の姿勢変換による影響と経時的変化を検討した。統計処理はTukey-Kramer法,Spearmanの順位相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。


【結果】

S群は23名(平均60±11歳,NIHSS 8点(中央値)),DM群は7名(59±13歳,NIHSS 5点,HbA1c 6.7%(中央値))であった。S群では第3病日以降,HFnuはsitで低下しpostで上昇,LF/HF比,DBP,HRはsitで上昇しpostで低下する一定の変化を示した。経時的にはLF/HF比,HFnu,SBPおよびHRで第2,第3病日に比べ第7病日で有意差が見られ,HFnuは経過日数と正の相関,LF/HF比,SBP,HRは負の相関を示した。一方,DM群では姿勢変換に対し,第4病日以降,HRのみsitで上昇を示したが,他の指標は第7病日においても一定しなかった。SBPのみ経過日数と負の相関を示した。


【結論】

DMのない急性期脳卒中者のANFは,第3病日には交感神経,副交感神経とも姿勢変換に適応して変化し,経時的に副交感神経は第7病日まで日ごとに上昇,交感神経は低下していた。これは,発症直後は交感神経活動が亢進しておりSBP,HRが高値となるが,1週までに副交感神経活動が徐々に上昇することを示唆していた。またDM併存症例では一定の傾向を示さず,1週後でもANFは安定していないと考えられた。これらは脳卒中早期リハ実施におけるリスク管理上,考慮すべき点と考えられた。