[P-NV-04-2] パーキンソン病患者における動的バランス評価の検討
Keywords:パーキンソン病, バランス, 安定性限界
【はじめに,目的】
姿勢反射障害はパーキンソン病の主要兆候の一つであり,リハビリテーションの対象となる。その特徴は,後方突進や安定性限界が狭いこと,姿勢反応の遅れ,予測的姿勢調整の低下など,動的バランスの低下である。臨床場面では,これらを評価するために様々なバランス指標が用いられているが,それぞれの指標がパーキンソン病のバランス障害の特徴をどのように表現できるのか検討の余地がある。そこで,パーキンソン病患者に4つの動的バランス評価を実施し,その関連性と特徴について検討した。
【方法】
対象はパーキンソン病患者27名,年齢71.9±5.3歳,Hoehn-Yahr重症度分類2.5±0.8,UPDRS3スコア16.0±9.5(それぞれ平均±標準偏差)。バランス評価は,Pull Test,多方向リーチテスト,Cross Test,Index of Postural Stability(以下IPS)の4つとした。Pull Testの値はUPDRS3の項目30のスコアとした。多方向リーチテストは,Newtonの方法に従い4方向で測定しその合計値を用いた。Cross Testは,石川らの方法に従って実施し,矩形面積を指標とした。IPSは,望月の方法に従い測定,算出した。IPSの測定によって得られる動揺の矩形面積と安定性限界面積も合わせて分析に用いた。4つの指標で得られた値を,PullTestとその他のTestの比較は,Spearmanの相関係数,Pull Test以外の測定値はPearsonの相関係数を用いて,その関連を検討した。統計学的解析にはSPSS ver.23を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
UPDRS3-30とIPS(r=-0.551,p=0.003),リーチテスト(r=-0.483,p=0.011)に優位な相関を認めた。リーチテストとIPSに優位な相関を認めた(r=0.618,p=0.001)。矩形面積(Cross Test)とリーチテスト(r=0.229,p=0.240),IPS(r=0.330,p=0.93),UPDRS3-30(r=-0.85,p=0.673)には優位な相関が認められなかったが,矩形面積(Cross Test)とIPSの安定性限界面積との間に優位な相関を認めた(r=0.780,p<0.001)。
【結論】
バランスの評価法には様々な側面がある。Pull Testは反応的なバランスを直接的に評価し,その他3つのテストは自動運動であり,予測的と反応的の両側面が影響する。結果から,IPSやリーチテストもPull Testと同様に反応的なバランスを評価できると考えられる。Cross TestとIPSは前後左右の安定性限界を測定することができるが,IPSはその限界域で保持する能力を合わせて評価している。Cross Testは連続した運動であり,速度や運動方向の切り替えも要求される。両値間に相関はなかったが,IPSの安定性限界面積と高い相関が認められた。リーチテストも安定性限界を表現していると考えられるが,体幹・上肢機能も影響し,全身の運動が必要となる。このように各テストの表現する側面の違いが今回の結果に影響したと考えられる。パーキンソン病の臨床症状は個別性があり,バランスのどのような側面を評価したいのか明確にして方法を選択する必要があると思われる。
姿勢反射障害はパーキンソン病の主要兆候の一つであり,リハビリテーションの対象となる。その特徴は,後方突進や安定性限界が狭いこと,姿勢反応の遅れ,予測的姿勢調整の低下など,動的バランスの低下である。臨床場面では,これらを評価するために様々なバランス指標が用いられているが,それぞれの指標がパーキンソン病のバランス障害の特徴をどのように表現できるのか検討の余地がある。そこで,パーキンソン病患者に4つの動的バランス評価を実施し,その関連性と特徴について検討した。
【方法】
対象はパーキンソン病患者27名,年齢71.9±5.3歳,Hoehn-Yahr重症度分類2.5±0.8,UPDRS3スコア16.0±9.5(それぞれ平均±標準偏差)。バランス評価は,Pull Test,多方向リーチテスト,Cross Test,Index of Postural Stability(以下IPS)の4つとした。Pull Testの値はUPDRS3の項目30のスコアとした。多方向リーチテストは,Newtonの方法に従い4方向で測定しその合計値を用いた。Cross Testは,石川らの方法に従って実施し,矩形面積を指標とした。IPSは,望月の方法に従い測定,算出した。IPSの測定によって得られる動揺の矩形面積と安定性限界面積も合わせて分析に用いた。4つの指標で得られた値を,PullTestとその他のTestの比較は,Spearmanの相関係数,Pull Test以外の測定値はPearsonの相関係数を用いて,その関連を検討した。統計学的解析にはSPSS ver.23を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
UPDRS3-30とIPS(r=-0.551,p=0.003),リーチテスト(r=-0.483,p=0.011)に優位な相関を認めた。リーチテストとIPSに優位な相関を認めた(r=0.618,p=0.001)。矩形面積(Cross Test)とリーチテスト(r=0.229,p=0.240),IPS(r=0.330,p=0.93),UPDRS3-30(r=-0.85,p=0.673)には優位な相関が認められなかったが,矩形面積(Cross Test)とIPSの安定性限界面積との間に優位な相関を認めた(r=0.780,p<0.001)。
【結論】
バランスの評価法には様々な側面がある。Pull Testは反応的なバランスを直接的に評価し,その他3つのテストは自動運動であり,予測的と反応的の両側面が影響する。結果から,IPSやリーチテストもPull Testと同様に反応的なバランスを評価できると考えられる。Cross TestとIPSは前後左右の安定性限界を測定することができるが,IPSはその限界域で保持する能力を合わせて評価している。Cross Testは連続した運動であり,速度や運動方向の切り替えも要求される。両値間に相関はなかったが,IPSの安定性限界面積と高い相関が認められた。リーチテストも安定性限界を表現していると考えられるが,体幹・上肢機能も影響し,全身の運動が必要となる。このように各テストの表現する側面の違いが今回の結果に影響したと考えられる。パーキンソン病の臨床症状は個別性があり,バランスのどのような側面を評価したいのか明確にして方法を選択する必要があると思われる。