[P-NV-04-3] MRI画像を用いたパーキンソン病患者の黒質緻密部の定量解析とHoehn & Yahr重症度との関係
Keywords:パーキンソン病, 画像解析, 黒質緻密部
【はじめに,目的】
パーキンソン病(以下,PD)の主病変は黒質緻密部のドパミン細胞の変性であるが,これまでその特異的病理をMRIで捕捉することは不可能であった。しかし近年,3 Tesla MRIにてドパミン細胞中に含まれる神経メラニンを高信号として描出することが可能(神経メラニン画像,以下NMI)となったことから,NMIで黒質緻密部の高信号域を定量することができれば,PD患者のより正確な評価と効果的な理学療法に寄与すると思われる。しかしながら,NMIを簡便かつ迅速に解析できるソフトウェアは今のところ存在しない。フリーの画像解析ソフトウェアを用いて黒質緻密部の面積を定量した報告もあるが,NMIを二値画像に変換する際の閾値を視覚的に決定しているため,その手法には恣意的な問題が残されている。そこで今回,黒質緻密部と中脳被蓋の信号強度に着目し,両者の信号強度比を半自動的に定量する画像解析プログラムを開発し,PD患者と正常人の比較,及び,Hoehn & Yahr stage(以下,HY stage)との関係を調査した。
【方法】
対象は,PD患者29例(男性11例,女性18例,年齢65.9±7.9歳)(以下,患者群)と健常人26例(男性11例,女性15例,年齢68.0±11.6歳)(以下,対照群)とした。NMIはPHLIPS社製Achieva 3Tにて撮像し,撮像条件はFast Field Echo,matrix size:320×242,FOV:200×200mm,Slice thickness:1mm,TR:27ms,TE:5.7msとした。解析プログラムの開発にはMATLAB(Math Works社製)を用い,NMIを平滑化した後,黒質緻密部と中脳被蓋の信号強度比を半自動的に定量するよう構築した。信号強度比の計測は3回行い,平均値を抽出した。統計学的処理にはR commanderを用い,患者群と対照群の信号強度比をMann-Whitney U検定にて比較した。また,患者群のHY stageと信号強度比の関連についてspearmanの順位相関係数を算出した。
【結果】
信号強度比は患者群1.05±0.02,対照群1.09±0.02であり,有意差が認められた(p<0.001)。また,患者群の信号強度比とHY stageとの間に有意な関連は認められなかった。
【結論】
NMIにおける黒質緻密部の信号強度の減弱は,ドパミン細胞の変性を反映した所見であると考えられており,剖検脳の所見と一致することが知られている。また,中脳被蓋は磁性体を含まないため,PDの病理が信号強度に影響しない部位である。本研究において,患者群の黒質緻密部と中脳被蓋の信号強度比が対照群よりも有意に低値を示したことから,両部位の信号強度比を用いることにより,PDの病勢評価が可能であると思われる。一方,患者群の信号強度比とHY stageとの間に関連は認められなかったが,HY stageには黒質緻密部の変性のみならず,不活動に伴う筋力低下や関節可動域の低下といった二次的要因のほか,脳の代償的な機能再編などの影響も考えられるため,信号強度比と臨床的重症度との関連については今後も検討が必要であると思われる。
パーキンソン病(以下,PD)の主病変は黒質緻密部のドパミン細胞の変性であるが,これまでその特異的病理をMRIで捕捉することは不可能であった。しかし近年,3 Tesla MRIにてドパミン細胞中に含まれる神経メラニンを高信号として描出することが可能(神経メラニン画像,以下NMI)となったことから,NMIで黒質緻密部の高信号域を定量することができれば,PD患者のより正確な評価と効果的な理学療法に寄与すると思われる。しかしながら,NMIを簡便かつ迅速に解析できるソフトウェアは今のところ存在しない。フリーの画像解析ソフトウェアを用いて黒質緻密部の面積を定量した報告もあるが,NMIを二値画像に変換する際の閾値を視覚的に決定しているため,その手法には恣意的な問題が残されている。そこで今回,黒質緻密部と中脳被蓋の信号強度に着目し,両者の信号強度比を半自動的に定量する画像解析プログラムを開発し,PD患者と正常人の比較,及び,Hoehn & Yahr stage(以下,HY stage)との関係を調査した。
【方法】
対象は,PD患者29例(男性11例,女性18例,年齢65.9±7.9歳)(以下,患者群)と健常人26例(男性11例,女性15例,年齢68.0±11.6歳)(以下,対照群)とした。NMIはPHLIPS社製Achieva 3Tにて撮像し,撮像条件はFast Field Echo,matrix size:320×242,FOV:200×200mm,Slice thickness:1mm,TR:27ms,TE:5.7msとした。解析プログラムの開発にはMATLAB(Math Works社製)を用い,NMIを平滑化した後,黒質緻密部と中脳被蓋の信号強度比を半自動的に定量するよう構築した。信号強度比の計測は3回行い,平均値を抽出した。統計学的処理にはR commanderを用い,患者群と対照群の信号強度比をMann-Whitney U検定にて比較した。また,患者群のHY stageと信号強度比の関連についてspearmanの順位相関係数を算出した。
【結果】
信号強度比は患者群1.05±0.02,対照群1.09±0.02であり,有意差が認められた(p<0.001)。また,患者群の信号強度比とHY stageとの間に有意な関連は認められなかった。
【結論】
NMIにおける黒質緻密部の信号強度の減弱は,ドパミン細胞の変性を反映した所見であると考えられており,剖検脳の所見と一致することが知られている。また,中脳被蓋は磁性体を含まないため,PDの病理が信号強度に影響しない部位である。本研究において,患者群の黒質緻密部と中脳被蓋の信号強度比が対照群よりも有意に低値を示したことから,両部位の信号強度比を用いることにより,PDの病勢評価が可能であると思われる。一方,患者群の信号強度比とHY stageとの間に関連は認められなかったが,HY stageには黒質緻密部の変性のみならず,不活動に伴う筋力低下や関節可動域の低下といった二次的要因のほか,脳の代償的な機能再編などの影響も考えられるため,信号強度比と臨床的重症度との関連については今後も検討が必要であると思われる。