[P-NV-04-4] パーキンソン病Camptocormia(腰曲り)に対する重力負荷を考慮した新たな理学療法の検討
~シーティング技術と免荷式ロングブレス呼吸法による著効例~
キーワード:パーキンソン病, Camptocormia, シーティング
【目的】
パーキンソン病(以下:PD)のCamptocormia(以下:CC)は,腰曲りとも呼ばれる極度の前傾前屈位の姿勢異常である。重力がかかる座位立位や歩行時に前傾が増強し,重力負荷を除いた臥位で改善する特徴を持つ。また,CC対して確立した治療法は存在せず,治療に難渋するケースが多く存在する。今回,ティルト・リクライニング車椅子(以下:TR車椅子)と免荷式歩行器による重力負荷調整を行いながらロングブレス呼吸練習を実施した新たな治療法により外来理学療法で著明に改善した症例を呈示し検討を加える。
【方法】
女性 年齢60歳台後半 疾患名:PD(発症6年経過),体重38kg,Hoehn-Yahr分類II度~III度,UPDRS総点28点,X年2月PD病の診断。X+1年4月ビ・シフロール投与。X+1年7月CC発症。X+1年10月ビ・シフロールを中止。X+1年12月姿勢改善せず当院外来リハ紹介。使用薬剤:①ネオドバストン配合剤100mg4錠,②コムタン錠100mg2錠,③エフピーOD錠2.5mg1錠,④エクセグラン錠100mg1錠,⑤マグミット錠330mg1錠。
評価:立位時の矢状面骨盤線29°,矢状面上部体幹線65°,矢状面胸骨線49°,矢状面頸部線47°(姿勢計測国際規格ISO16840-1を使用。座位姿勢計測ソフトウェアrysisを立位にて使用。)歩行スピード15.20秒/10m。20mで体幹支持できず両膝に手を置く。
X+1年12月より①TR車椅子(T20°,R110°)上で炭酸水足浴,左L1~L5傍脊柱筋,両肩甲骨内側縁に低周波治療(ネオテクトロンVP6Ⓡ)を20分間施行。②TR車椅子上でロングブレス・ピロピロⓇ(10秒×10回×3セット)③免荷式リフトポポⓇによるロングブレス立位バランス練習。(一般的な関節可動域練習,筋ストレッチ,筋力増強練習,歩行練習は実施せず。)
【結果】
3か月後理学療法22回目:立位時の矢状面骨盤線360°,矢状面上部体幹線17°,矢状面胸骨線10°,矢状面頸部線22°。歩行スピード9.30秒/10m。体重42.6kg。UPDRS総点12点。歩行時に膝に手を置くことは無くなる。洗濯物が干せるようになる。
【結論】
CCの病因として,PDの進行の自然経過,体幹ジストニア,傍脊柱筋の変性,薬剤性などの要因が考えられるが,CCの原因を一つに絞り込むことは困難である。特にリハビリテーションについて効果が乏しいとされてきたが,提示した方法は持続的効果があり本症例もCC発症から1年以上経過するが週1回の理学療法で姿勢が維持されている。先行研究では体幹ジストニア,傍脊柱筋の変性に焦点を当ててきたが,腹部インナーの筋力低下が原因ではないかと推察する。体幹の安定化機構に関与する横隔膜は,腸腰筋と筋連結している為,脊柱の垂直安定化に関与している。シーティングと免荷式ロングブレス呼吸練習はCCだけでなく首下がり症候やPisa徴候に対しても効果がありパーキンソン病姿勢障害の新たな治療につながるものと考えられる。
パーキンソン病(以下:PD)のCamptocormia(以下:CC)は,腰曲りとも呼ばれる極度の前傾前屈位の姿勢異常である。重力がかかる座位立位や歩行時に前傾が増強し,重力負荷を除いた臥位で改善する特徴を持つ。また,CC対して確立した治療法は存在せず,治療に難渋するケースが多く存在する。今回,ティルト・リクライニング車椅子(以下:TR車椅子)と免荷式歩行器による重力負荷調整を行いながらロングブレス呼吸練習を実施した新たな治療法により外来理学療法で著明に改善した症例を呈示し検討を加える。
【方法】
女性 年齢60歳台後半 疾患名:PD(発症6年経過),体重38kg,Hoehn-Yahr分類II度~III度,UPDRS総点28点,X年2月PD病の診断。X+1年4月ビ・シフロール投与。X+1年7月CC発症。X+1年10月ビ・シフロールを中止。X+1年12月姿勢改善せず当院外来リハ紹介。使用薬剤:①ネオドバストン配合剤100mg4錠,②コムタン錠100mg2錠,③エフピーOD錠2.5mg1錠,④エクセグラン錠100mg1錠,⑤マグミット錠330mg1錠。
評価:立位時の矢状面骨盤線29°,矢状面上部体幹線65°,矢状面胸骨線49°,矢状面頸部線47°(姿勢計測国際規格ISO16840-1を使用。座位姿勢計測ソフトウェアrysisを立位にて使用。)歩行スピード15.20秒/10m。20mで体幹支持できず両膝に手を置く。
X+1年12月より①TR車椅子(T20°,R110°)上で炭酸水足浴,左L1~L5傍脊柱筋,両肩甲骨内側縁に低周波治療(ネオテクトロンVP6Ⓡ)を20分間施行。②TR車椅子上でロングブレス・ピロピロⓇ(10秒×10回×3セット)③免荷式リフトポポⓇによるロングブレス立位バランス練習。(一般的な関節可動域練習,筋ストレッチ,筋力増強練習,歩行練習は実施せず。)
【結果】
3か月後理学療法22回目:立位時の矢状面骨盤線360°,矢状面上部体幹線17°,矢状面胸骨線10°,矢状面頸部線22°。歩行スピード9.30秒/10m。体重42.6kg。UPDRS総点12点。歩行時に膝に手を置くことは無くなる。洗濯物が干せるようになる。
【結論】
CCの病因として,PDの進行の自然経過,体幹ジストニア,傍脊柱筋の変性,薬剤性などの要因が考えられるが,CCの原因を一つに絞り込むことは困難である。特にリハビリテーションについて効果が乏しいとされてきたが,提示した方法は持続的効果があり本症例もCC発症から1年以上経過するが週1回の理学療法で姿勢が維持されている。先行研究では体幹ジストニア,傍脊柱筋の変性に焦点を当ててきたが,腹部インナーの筋力低下が原因ではないかと推察する。体幹の安定化機構に関与する横隔膜は,腸腰筋と筋連結している為,脊柱の垂直安定化に関与している。シーティングと免荷式ロングブレス呼吸練習はCCだけでなく首下がり症候やPisa徴候に対しても効果がありパーキンソン病姿勢障害の新たな治療につながるものと考えられる。