[P-NV-04-5] 慢性腰痛を有するパーキンソン病患者と慢性腰痛患者の認知・心理社会的因子の比較
キーワード:パーキンソン病, 慢性腰痛, 治療戦略
【目的】
パーキンソン病(以下,PD)患者において健常者よりも痛みの頻度が多く,特に腰痛が多いことが報告されている。しかし,PD患者における筋骨格系障害の問題はこれまでに見逃されており,十分に治療されていないことが現状である。近年,痛みには筋や関節などの末梢組織器官のみならず,心理社会的因子や身体知覚異常が関与していることが明らかになっている。PD患者における腰痛に対する治療戦略を計画するにあたり,慢性腰痛を有するPD患者とPDを有していない慢性腰痛患者の心理社会的因子や身体知覚異常の違いを明らかにする必要がある。そこで,本研究の目的は,慢性腰痛を有するPD患者と慢性腰痛患者に対して,腰痛による日常生活活動の低下,心理および身体知覚異常の評価を行い,PD患者における腰痛に関連する因子を明らかにすることである。
【方法】
対象は腰痛が3ヶ月以上続く,PD患者39名(78.1±8.3歳)及び慢性腰痛患者39名(72.4±4.3歳)であった。評価項目は,安静時・動作時における痛みの強度(Visual Analog Scale:VAS),心理社会的因子として痛みの破局的思考(Pain Catastrophizing Scale:PCS),(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS),身体知覚異常(Fremantle Back Awareness Questionnaire:FreBAQ),腰痛による日常生活制限(Roland-Morris Disability Questionnaire:RDQ)を評価した。統計学的解析として,2群間での比較はStudent t検定を用いた。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
Hoehn-Yahrの重症度分類はIが2名,IIが5名,IIIが22名,IVが10名であった。不安,抑うつ,FreBAQ,RDQにおいて,PD患者群(不安:11.3±5.7点,抑うつ:12.1±4.8点,FreBAQ:17.4±7.0点,RDQ:11.4±6.9点)が慢性腰痛患者群(不安:5.4±3.0点,抑うつ:6.0±3.1点,FreBAQ:13.5±7.0点,RDQ:7.2±5.0点)より有意に高値(p<0.05)であった。体重,安静時痛において,PD患者群(体重:48.1±11.3kg,安静時痛:15.1±21.4mm)が慢性腰痛患者群(体重:53.4±9.3kg,安静時痛:25.6±23.0mm)より有意に低値(p<0.05)だった。
【結論】
本研究結果より,PD患者は慢性腰痛患者よりも,安静時の疼痛強度は低いが,動作時に慢性腰痛患者と同様に疼痛が生じる特徴が認められた。また,PD患者は慢性腰痛患者よりも腰痛による活動性の制限が生じていることが明らかになった。PD患者では不安,抑うつ及び自己身体知覚異常がより認められ,これらの要素がPDにおける慢性腰痛の要因になっている可能性が示唆された。今後,これらの要因を考慮に入れて,PD患者の慢性腰痛に対する治療戦略を考える必要がある。
パーキンソン病(以下,PD)患者において健常者よりも痛みの頻度が多く,特に腰痛が多いことが報告されている。しかし,PD患者における筋骨格系障害の問題はこれまでに見逃されており,十分に治療されていないことが現状である。近年,痛みには筋や関節などの末梢組織器官のみならず,心理社会的因子や身体知覚異常が関与していることが明らかになっている。PD患者における腰痛に対する治療戦略を計画するにあたり,慢性腰痛を有するPD患者とPDを有していない慢性腰痛患者の心理社会的因子や身体知覚異常の違いを明らかにする必要がある。そこで,本研究の目的は,慢性腰痛を有するPD患者と慢性腰痛患者に対して,腰痛による日常生活活動の低下,心理および身体知覚異常の評価を行い,PD患者における腰痛に関連する因子を明らかにすることである。
【方法】
対象は腰痛が3ヶ月以上続く,PD患者39名(78.1±8.3歳)及び慢性腰痛患者39名(72.4±4.3歳)であった。評価項目は,安静時・動作時における痛みの強度(Visual Analog Scale:VAS),心理社会的因子として痛みの破局的思考(Pain Catastrophizing Scale:PCS),(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS),身体知覚異常(Fremantle Back Awareness Questionnaire:FreBAQ),腰痛による日常生活制限(Roland-Morris Disability Questionnaire:RDQ)を評価した。統計学的解析として,2群間での比較はStudent t検定を用いた。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
Hoehn-Yahrの重症度分類はIが2名,IIが5名,IIIが22名,IVが10名であった。不安,抑うつ,FreBAQ,RDQにおいて,PD患者群(不安:11.3±5.7点,抑うつ:12.1±4.8点,FreBAQ:17.4±7.0点,RDQ:11.4±6.9点)が慢性腰痛患者群(不安:5.4±3.0点,抑うつ:6.0±3.1点,FreBAQ:13.5±7.0点,RDQ:7.2±5.0点)より有意に高値(p<0.05)であった。体重,安静時痛において,PD患者群(体重:48.1±11.3kg,安静時痛:15.1±21.4mm)が慢性腰痛患者群(体重:53.4±9.3kg,安静時痛:25.6±23.0mm)より有意に低値(p<0.05)だった。
【結論】
本研究結果より,PD患者は慢性腰痛患者よりも,安静時の疼痛強度は低いが,動作時に慢性腰痛患者と同様に疼痛が生じる特徴が認められた。また,PD患者は慢性腰痛患者よりも腰痛による活動性の制限が生じていることが明らかになった。PD患者では不安,抑うつ及び自己身体知覚異常がより認められ,これらの要素がPDにおける慢性腰痛の要因になっている可能性が示唆された。今後,これらの要因を考慮に入れて,PD患者の慢性腰痛に対する治療戦略を考える必要がある。