[P-NV-05-1] 歩行神経筋電気刺激装置ウォークエイドが歩行時麻痺側立脚相に与える影響
~Extension Thrust Patternを呈した症例に対して~
Keywords:機能的電気刺激, 立脚相, 歩容
【はじめに,目的】
歩行神経筋電気刺激装置ウォークエイド(以下,WA)はFESの一つであり,内蔵されたtilt sensorで下腿の傾きを検知し,遊脚相のみに電気刺激を行う。患者の歩行パターンに合わせて足関節背屈を補助し,脳血管疾患や脊髄損傷などでみられる内反尖足や下垂足に対して適応がある。米国や日本においてWA使用による歩行能力の改善が報告されているが,報告の多くは遊脚相に関するものがほとんどである。そこで今回,数年来の下垂足及びExtension Thrust Pattern(以下,ETP)を呈した脳卒中患者に対しWA使用前後における歩行時麻痺側立脚相の変化を検証した。
【方法】
症例は平成10年に左放線冠梗塞により右下肢下垂足を呈していた70歳男性である。発症時から下垂足を呈しており,装具を処方されていたが使用を拒否していた。平成28年に脳梗塞(左中大脳動脈領域)を発症し,当院入院となった。当院入院時の麻痺側下肢Brunnstrom StageはIVで,下肢装具を使用せず歩行を行っていたが,前脛骨筋の筋力低下(MMT;2)により下垂足や遊脚相にtoe drag,立脚相ではETPを呈していた。歩行はT字杖を使用,短下肢装具の処方を勧められていたが,本人は使用を拒否していた為,転倒予防の為に介助者による軽介助が必要であった(FIM歩行4点)。
WAを用いた歩行練習は発症後31病日目から開始し,通常理学療法(40~60分/日)に加え,WAを使用した歩行練習を20分間行い,週5回,4週間継続した。ETPを考慮し,麻痺側遊脚相から荷重応答期まで背屈補助の電気刺激を行った。
測定項目はWA使用前後での足関節背屈ROM及びMMT,10m裸足歩行速度と歩数,10m裸足歩行時の麻痺側立脚相下肢関節角度とした。下肢関節角度の測定は,股関節角度は肩峰―大転子―膝外側関節裂隙間,膝関節角度は大転子―膝外側関節裂隙―外果間,足関節は膝外側関節裂隙―外果―第5中足骨骨頭を結ぶ線のなす角度とした。10m歩行は矢状面から動画撮影を行い,下肢関節角度を画像解析ソフト(Image J)を使用し角度を求めた。
【結果】
4週間の治療介入前後で,病棟内歩行は自立に至った(FIM歩行6点)。また,足関節背屈ROM,前脛骨筋MMTともに改善を認めた。麻痺側下肢関節角度の比較では,股関節は著明な角度変化を認めなかった。膝関節は荷重応答期で-6°伸展位から11°屈曲位まで変化した。足関節は立脚初期で-23°底屈位から-10°底屈位,荷重応答期で-17°底屈位から-10°底屈位へ背屈方向へ変化していた。10m裸足歩行では,使用前22.2秒・32歩,使用後17.5秒・25歩であった。歩容に関しては,ETPの改善が確認できた。
【結論】
荷重応答期まで電気刺激をすることによって,ヒールロッカー機能の獲得に近づいたものと考える。WAを使用した歩行練習は麻痺側立脚相に貢献できる可能性が示唆された。
歩行神経筋電気刺激装置ウォークエイド(以下,WA)はFESの一つであり,内蔵されたtilt sensorで下腿の傾きを検知し,遊脚相のみに電気刺激を行う。患者の歩行パターンに合わせて足関節背屈を補助し,脳血管疾患や脊髄損傷などでみられる内反尖足や下垂足に対して適応がある。米国や日本においてWA使用による歩行能力の改善が報告されているが,報告の多くは遊脚相に関するものがほとんどである。そこで今回,数年来の下垂足及びExtension Thrust Pattern(以下,ETP)を呈した脳卒中患者に対しWA使用前後における歩行時麻痺側立脚相の変化を検証した。
【方法】
症例は平成10年に左放線冠梗塞により右下肢下垂足を呈していた70歳男性である。発症時から下垂足を呈しており,装具を処方されていたが使用を拒否していた。平成28年に脳梗塞(左中大脳動脈領域)を発症し,当院入院となった。当院入院時の麻痺側下肢Brunnstrom StageはIVで,下肢装具を使用せず歩行を行っていたが,前脛骨筋の筋力低下(MMT;2)により下垂足や遊脚相にtoe drag,立脚相ではETPを呈していた。歩行はT字杖を使用,短下肢装具の処方を勧められていたが,本人は使用を拒否していた為,転倒予防の為に介助者による軽介助が必要であった(FIM歩行4点)。
WAを用いた歩行練習は発症後31病日目から開始し,通常理学療法(40~60分/日)に加え,WAを使用した歩行練習を20分間行い,週5回,4週間継続した。ETPを考慮し,麻痺側遊脚相から荷重応答期まで背屈補助の電気刺激を行った。
測定項目はWA使用前後での足関節背屈ROM及びMMT,10m裸足歩行速度と歩数,10m裸足歩行時の麻痺側立脚相下肢関節角度とした。下肢関節角度の測定は,股関節角度は肩峰―大転子―膝外側関節裂隙間,膝関節角度は大転子―膝外側関節裂隙―外果間,足関節は膝外側関節裂隙―外果―第5中足骨骨頭を結ぶ線のなす角度とした。10m歩行は矢状面から動画撮影を行い,下肢関節角度を画像解析ソフト(Image J)を使用し角度を求めた。
【結果】
4週間の治療介入前後で,病棟内歩行は自立に至った(FIM歩行6点)。また,足関節背屈ROM,前脛骨筋MMTともに改善を認めた。麻痺側下肢関節角度の比較では,股関節は著明な角度変化を認めなかった。膝関節は荷重応答期で-6°伸展位から11°屈曲位まで変化した。足関節は立脚初期で-23°底屈位から-10°底屈位,荷重応答期で-17°底屈位から-10°底屈位へ背屈方向へ変化していた。10m裸足歩行では,使用前22.2秒・32歩,使用後17.5秒・25歩であった。歩容に関しては,ETPの改善が確認できた。
【結論】
荷重応答期まで電気刺激をすることによって,ヒールロッカー機能の獲得に近づいたものと考える。WAを使用した歩行練習は麻痺側立脚相に貢献できる可能性が示唆された。