The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-05] ポスター(神経)P05

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-05-3] 半側空間無視に加えpusher症候群を呈し,直流前庭電気刺激が効果的であった一症例

尾崎 新平1,2, 草場 正彦1, 植田 耕造3,4, 宮本 定治1, 恵飛須 俊彦1,2 (1.関西電力病院リハビリテーション部, 2.関西電力医学研究所リハビリテーション医学研究部, 3.星ヶ丘医療センターリハビリテーション部, 4.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)

Keywords:半側空間無視, pusher症候群, 直流前庭電気刺激

【はじめに,目的】

半側空間無視(USN)は,病巣と反対側の刺激に反応しない現象である(Heilman 1985)。USNによく合併する症候として,Pusher症候群(Pusher)がある。Pusherとは介助者が患者を正中に戻すのに抵抗し立位,歩行の姿勢を障害する症候である。USNとPusherの両方に治療効果が報告されている唯一のリハビリテーション治療として直流前庭電気刺激(GVS)がある。しかし今までの報告では,USN,Pusherともに各々単体での治療効果しか報告されておらず,USNとPusherを合併した患者に対する同時に治療効果を示したものはない。今回,USNとPusherを合併した患者にGVSを行い,治療効果を報告する。




【方法】

対象は70歳代女性。診断名は脳梗塞(右内包後脚)。今回測定を実施した発症後33日の評価は,歩行器歩行で病棟内見守りが必要で,左側の物へのぶつかりがあった。下肢筋力は各筋ともMMTで5,感覚はFugl-Meyer Assessmentで12点と満点。バランス能力はBBSで45点。BIT通常検査で合計139/146点。Bells testで27/35点と方向性注意障害を認めた。Fluff testでは両側下腿に身体空間無視が認められた。表象障害は先行研究(Rode 1995)を参考に日本版としてMentally the map of Japanで評価し,近畿を含めた西側の表象がなく左側の表象障害を認めた。Scale for Contraversive Pushing(SCP)では立位項目で1.75点。Burke lateropulsion scale(BLS)は4点で,pusherを認めた。実験方法は,シングルケースABA´デザインを用い,AとA´期では通常介入とし下肢筋力強化,バランス練習,歩行練習,階段昇降練習などを実施した。B期では通常介入に加えGVSを実施し,各期間ともに2週間行った。GVSは,Intelect advance combo(Chattanooga社製)を使用し,両側乳頭突起に電極を貼付し(右陽極,左陰極),刺激強度は1.5mAで姿勢は座位とし20分間実施した。評価項目はBells test,Fluff test,BIT通常検査,Mentally the map of Japan,SCP,BLSで各期の直前直後に測定した。




【結果】

A期前,A期後,B期後,A´期後の順に結果をカッコ内に以下に示す。Bells test(27,26,34,33点),Fluff test(3,3,4,3点),BIT通常検査(139,140,142,144点),Mentally the map of Japan表象なし地方のみ記載(近畿を含む西は表象なし,同様に近畿地方の表象なし,近畿地方の表象が若干出てくる,同様に近畿地方の表象が若干あり)。SCP立位項目(1.75,1.25,0,0点),BLS(4,3,0,0点)。




【結論】

本症例は,USNのサブタイプ分類で近位空間の方向性注意障害,表象障害,両側下腿の身体空間無視を認めた。またUSNに加えpusherも認めていた。今回GVSによりBells test,SCP,BLSで効果を認めたが,Fluff testとMentally the map of Japanでは大きな効果を認めなかった。以上より,GVSは身体空間無視や表象障害ではなく,USNサブタイプ分類の方向性注意障害とpusherに対して効果的な可能性がある。