第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-06] ポスター(神経)P06

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-06-1] 回復期病棟入院時の起き上がり動作から退院時歩行の予測
―自立と予測されたが自立しなかった偽陽性症例の前向き検討 第2報―

渡辺 智也1, 田中 良明1, 小島 伸枝2, 小川 太郎3 (1.社会医療法人社団カレスサッポロ時計台記念病院リハビリテーション部理学療法科, 2.社会医療法人社団カレスサッポロ時計台記念病院リハビリテーション部, 3.社会医療法人社団カレスサッポロ時計台記念病院総合リハビリテーションセンター)

キーワード:歩行予後予測, 偽陽性症例, ロジスティック回帰分析

【目的】

脳卒中者の回復期病棟入院時の歩行予後予測が少ない中,筆者は回復期病棟入院時の起き上がりが修正自立以上で退院時歩行自立という方法で高精度の予測が可能な事,予測を逸脱し歩行自立しなかった偽陽性群の特徴として意欲・認知面低下があった事を報告した。本研究では母数を増加させ,多変量解析から偽陽性群の特徴を更に明らかとする事を目的とした。


【方法】

対象は平成26年12月以降当院回復期病棟に入院し平成28年7月迄に退院した脳卒中者で,除外は入院時歩行自立,合併症治療の為転院,死亡,急性期治療中に複数回の発症,JCS2桁以上の意識障害者。入院時Functional Movement Scale(以下FMS)と退院時FIMから,FMS起き上がり3点(修正自立)以上で歩行自立(FIM6点以上)を真陽性群,起き上がり3点以上で歩行非自立を偽陽性群とし,両群の入院時SIAS下位項目,FIM下位項目,MMSE合計,Vitality Index(以下VI)合計の比較をMann-WhitneyのU検定にて行い,有意差を認めた項目を独立変数,群を目的変数とし,機能面(年齢,SIAS,MMSE,VI)と能力面(FIM)のロジスティック回帰分析を各々行った。また,選択された項目でROC曲線からcut-off値を算出した。


【結果】

対象108名(男性61名,69.5±13.0歳,病側:右52名・左49名・多発両側7名)中,真陽性群46名(男性28名,病側:右18名・左25名・両側多発3名),偽陽性群13名(男性5名,病側:右5名・左7名・両側多発1名)だった。群間比較で有意差を認めた項目は,年齢,MMSE,VI,FIM清拭・トイレ・車椅子移乗・理解・問題解決(それぞれの真陽性群/偽陽性群;p値:68.5±9.9/83.0±9.5;0.024,26.0±3.4/17.0±4.0;0.009,9.0±1.0/7.0±1.0;0.008,4.0±0.5/3.0±1.5;0.006,5.0±0.5/5.0±0.5;0.011,5.0±0.5/5.0±0.0;0.048,6.0±0.5/5.0±1.0;0.048,5.0±0.5/4.0±1.0;0.006)だった。ロジスティック回帰分析にて,機能面ではMMSEが選択され(オッズ比:1.21,95%信頼区間(以下CI):1.07-1.38),能力面ではFIM清拭(オッズ比:2.00,95%CI:1.21-3.32)と問題解決(オッズ比2.82,95%CI:1.34-5.95)が選択された。いずれもモデルχ2検定はp<0.05だった。偽陽性群におけるMMSEのcut-off値は22(感度80%特異度77%)であった。


【考察】

偽陽性症例は入院時からMMSEが低く,問題解決能力の低下が歩行自立を阻害したと思われた。また,清拭が選択され歩行予測の一因子として可能性が示唆された。筆者の過去の報告でも逸脱症例の特徴としてセルフケアが選択された事を報告している(渡辺ら,2015)。陽性症例は起き上がりが自立していることから,座位で行うセルフケアは動作としては可能なものの,立位を経由する必要がある事(臀部清拭など),環境(浴室)に依存しやすく入院初期は介助量が一般化しにくい事などが可能性として推察されるが,要因探索には清拭に関連する障害の要因を検討する事が必要と思われた。