[P-NV-07-1] 急性期病院における脳梗塞患者の早期退院先決定に関わる因子の検討
自宅退院群と回復期転院群における検討
キーワード:脳梗塞, 急性期, 転帰
【はじめに,目的】
急性期病院においては,医療保険制度の変化に伴う在院日数の短縮化により早期から転帰先を予測することが求められている。先行研究では転帰予測因子について,NIHSSや高次脳機能障害,栄養状態など様々な要因が報告されているが,動作能力,特に歩行との関連についての報告は少なく,また介入早期からの検討は散見される程度である。そこで今回,先行研究からの転帰予測因子に加え,介入早期の動作能力を加えることで転帰予測因子の検討を行うことを目的とした。
【方法】
対象は2016年3月1日から2016年9月30日までの間で当院に入院し理学療法介入の処方があった急性期脳梗塞患者90症例のうち,退院先が自宅(自宅群)もしくは回復期病院(回復期群)であった62例とした。除外対象は,施設入所者,入院前の歩行が非自立,全身状態不良や座位,起立などの動作時の介助量が多く歩行に至らなかった症例とした。評価項目は,患者背景に関する項目(年齢,性別,同居家族の有無,介護保険の有無,脳梗塞の既往歴の有無,入院時血清アルブミン値,入院時血清総蛋白値),疾患に関する項目(障害半球,初回介入時のNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS),高次脳機能障害の有無),入院中の経過に関する項目(リハ開始までの日数,発症後3日目の動作レベル(座位,起立,車椅子移乗,歩行練習の開始の有無),在院日数)を後方視的に調査した。統計学的分析は自宅群,回復期群の2群間での比較を,χ2検定,t検定およびMann-WhitenyのU検定を用いて分析した。その後,転帰先を従属変数,2群間の比較により有意差がみられた項目を独立変数としてロジスティック回帰分析を実施した。なお,統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象の属性は,自宅群30名(内女性4名,73.0±9.9歳)と回復期群32名(内女性14名,74.1±9.0歳)であった。平均在院日数は,回復期群21.5±9.3日に対し,自宅群14.7±8.3日となり有意に短縮していた(p<0.01)。2群間の比較において有意差を示したのは,入院時NIHSS(p<0.01),同居家族の有無(p<0.01),性別(p<0.05),発症から3日以内での歩行練習開始の有無(p<0.01)の4項目であり,その他の項目では有意差はみられなかった。上記4項目を独立変数とし,ロジスティック回帰分析を実施した。その結果,採用された独立変数は入院時NIHSS(オッズ比1.62,95%信頼区間1.09-2.41),同居家族の有無(オッズ比0.07,95%信頼区間0.01-0.57),発症から3日以内での歩行練習開始の有無(オッズ比0.10,95%信頼区間0.02-0.54)であった。
【結論】
今回,急性期脳梗塞患者における転帰先に関わる要因として,入院時NIHSS,同居家族の有無,発症後3日以内の歩行練習の開始の有無が要因として抽出された。先行研究の結果に加え,発症3日目までの歩行練習の開始の有無が,早期からの方向性決定の指標になり得ることが示唆された。
急性期病院においては,医療保険制度の変化に伴う在院日数の短縮化により早期から転帰先を予測することが求められている。先行研究では転帰予測因子について,NIHSSや高次脳機能障害,栄養状態など様々な要因が報告されているが,動作能力,特に歩行との関連についての報告は少なく,また介入早期からの検討は散見される程度である。そこで今回,先行研究からの転帰予測因子に加え,介入早期の動作能力を加えることで転帰予測因子の検討を行うことを目的とした。
【方法】
対象は2016年3月1日から2016年9月30日までの間で当院に入院し理学療法介入の処方があった急性期脳梗塞患者90症例のうち,退院先が自宅(自宅群)もしくは回復期病院(回復期群)であった62例とした。除外対象は,施設入所者,入院前の歩行が非自立,全身状態不良や座位,起立などの動作時の介助量が多く歩行に至らなかった症例とした。評価項目は,患者背景に関する項目(年齢,性別,同居家族の有無,介護保険の有無,脳梗塞の既往歴の有無,入院時血清アルブミン値,入院時血清総蛋白値),疾患に関する項目(障害半球,初回介入時のNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS),高次脳機能障害の有無),入院中の経過に関する項目(リハ開始までの日数,発症後3日目の動作レベル(座位,起立,車椅子移乗,歩行練習の開始の有無),在院日数)を後方視的に調査した。統計学的分析は自宅群,回復期群の2群間での比較を,χ2検定,t検定およびMann-WhitenyのU検定を用いて分析した。その後,転帰先を従属変数,2群間の比較により有意差がみられた項目を独立変数としてロジスティック回帰分析を実施した。なお,統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象の属性は,自宅群30名(内女性4名,73.0±9.9歳)と回復期群32名(内女性14名,74.1±9.0歳)であった。平均在院日数は,回復期群21.5±9.3日に対し,自宅群14.7±8.3日となり有意に短縮していた(p<0.01)。2群間の比較において有意差を示したのは,入院時NIHSS(p<0.01),同居家族の有無(p<0.01),性別(p<0.05),発症から3日以内での歩行練習開始の有無(p<0.01)の4項目であり,その他の項目では有意差はみられなかった。上記4項目を独立変数とし,ロジスティック回帰分析を実施した。その結果,採用された独立変数は入院時NIHSS(オッズ比1.62,95%信頼区間1.09-2.41),同居家族の有無(オッズ比0.07,95%信頼区間0.01-0.57),発症から3日以内での歩行練習開始の有無(オッズ比0.10,95%信頼区間0.02-0.54)であった。
【結論】
今回,急性期脳梗塞患者における転帰先に関わる要因として,入院時NIHSS,同居家族の有無,発症後3日以内の歩行練習の開始の有無が要因として抽出された。先行研究の結果に加え,発症3日目までの歩行練習の開始の有無が,早期からの方向性決定の指標になり得ることが示唆された。