[P-NV-07-4] 脳卒中急性期における退院時歩行獲得の予測因子
Keywords:脳卒中急性期, 歩行, SIAS
【はじめに,目的】
脳卒中患者の急性期リハビリテーションでは身体機能の評価から歩行獲得可否の予後予測を行う事はプログラム立案や目標設定の際に重要である。脳卒中患者における歩行獲得の予測因子として年齢や意識障害の程度,日常生活活動や身体機能が報告されている。脳卒中患者の身体機能評価であるStroke impairment assessment set(以下SIAS)は9分類22項目から構成され,麻痺側運動機能や感覚,体幹機能など脳卒中患者を包括的に捉える評価方法である。先行研究ではSIAS運動機能の合計点数や全項目の合計点数が歩行獲得の可否の予測因子となる事は報告されているが,SIASのどの分類が脳卒中発症早期から歩行獲得を予測する因子かは明らかにされていない。そこで,本研究の目的は脳卒中発症早期の機能評価であるSIASのどの分類が歩行獲得に影響しているかを明らかにすることとした。
【方法】
方法は後方視的調査である。対象は平成27年10月から平成28年8月までの期間に当院に入院した脳梗塞・脳出血患者158名の中で,理学療法開始時(発症後平均3.0±2.0日)にSIASを評価し急性期病院退院時(発症後平均18.0±10.0日)に歩行獲得可否の両方を評価できていた57名(脳梗塞44名,脳出血13名,男性35名,女性22名,平均年齢71.6±11.7歳)とした。SIASは麻痺側運動機能を上肢と下肢に分け,合計10分類で検討した。歩行獲得の定義はFunctional ambulation classification(以下FAC)において監視なしで平地歩行可能な4点以上とした。
急性期病院退院時で歩行獲得群と非獲得群に群分けし,理学療法開始時のSIAS各分類をMann-Whitney U testを用いて群間比較した。次に従属変数を歩行獲得の可否とし,独立変数を群間比較で有意差を認めたSIAS各分類として,変数増加法(尤度比)のロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とし,統計学的解析はSPSSver.22.0を使用した。
【結果】
急性期病院退院時の歩行獲得群は33名,非獲得群は24名であった。理学療法開始時のSIAS合計点数は歩行獲得群70.7±4.8点,非獲得群44.2±20.7点であった。SIAS各分類の群間比較では麻痺側運動機能上肢,麻痺側運動機能下肢,筋緊張,感覚機能,疼痛,体幹機能,視空間認知,言語機能,非麻痺側機能の分類で有意差を認めた。ロジスティック回帰分析では急性期病院退院時に歩行獲得を説明する変数として体幹(オッズ比11.06,95%信頼区間2.72-45.07,P=0.001)が選択された。判別的中率は87.0%であった。
【考察】
脳卒中発症早期におけるSIAS各分類の中で,体幹機能は急性期病院退院時の歩行獲得可否を予測できる因子である可能性が示唆された。先行研究において体幹機能単独の評価が歩行獲得の予測因子となるという報告があり,それらを支持する結果となった。脳卒中患者の包括的な機能評価を行うと同時に歩行獲得を予測できる可能性が示唆された。
脳卒中患者の急性期リハビリテーションでは身体機能の評価から歩行獲得可否の予後予測を行う事はプログラム立案や目標設定の際に重要である。脳卒中患者における歩行獲得の予測因子として年齢や意識障害の程度,日常生活活動や身体機能が報告されている。脳卒中患者の身体機能評価であるStroke impairment assessment set(以下SIAS)は9分類22項目から構成され,麻痺側運動機能や感覚,体幹機能など脳卒中患者を包括的に捉える評価方法である。先行研究ではSIAS運動機能の合計点数や全項目の合計点数が歩行獲得の可否の予測因子となる事は報告されているが,SIASのどの分類が脳卒中発症早期から歩行獲得を予測する因子かは明らかにされていない。そこで,本研究の目的は脳卒中発症早期の機能評価であるSIASのどの分類が歩行獲得に影響しているかを明らかにすることとした。
【方法】
方法は後方視的調査である。対象は平成27年10月から平成28年8月までの期間に当院に入院した脳梗塞・脳出血患者158名の中で,理学療法開始時(発症後平均3.0±2.0日)にSIASを評価し急性期病院退院時(発症後平均18.0±10.0日)に歩行獲得可否の両方を評価できていた57名(脳梗塞44名,脳出血13名,男性35名,女性22名,平均年齢71.6±11.7歳)とした。SIASは麻痺側運動機能を上肢と下肢に分け,合計10分類で検討した。歩行獲得の定義はFunctional ambulation classification(以下FAC)において監視なしで平地歩行可能な4点以上とした。
急性期病院退院時で歩行獲得群と非獲得群に群分けし,理学療法開始時のSIAS各分類をMann-Whitney U testを用いて群間比較した。次に従属変数を歩行獲得の可否とし,独立変数を群間比較で有意差を認めたSIAS各分類として,変数増加法(尤度比)のロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とし,統計学的解析はSPSSver.22.0を使用した。
【結果】
急性期病院退院時の歩行獲得群は33名,非獲得群は24名であった。理学療法開始時のSIAS合計点数は歩行獲得群70.7±4.8点,非獲得群44.2±20.7点であった。SIAS各分類の群間比較では麻痺側運動機能上肢,麻痺側運動機能下肢,筋緊張,感覚機能,疼痛,体幹機能,視空間認知,言語機能,非麻痺側機能の分類で有意差を認めた。ロジスティック回帰分析では急性期病院退院時に歩行獲得を説明する変数として体幹(オッズ比11.06,95%信頼区間2.72-45.07,P=0.001)が選択された。判別的中率は87.0%であった。
【考察】
脳卒中発症早期におけるSIAS各分類の中で,体幹機能は急性期病院退院時の歩行獲得可否を予測できる因子である可能性が示唆された。先行研究において体幹機能単独の評価が歩行獲得の予測因子となるという報告があり,それらを支持する結果となった。脳卒中患者の包括的な機能評価を行うと同時に歩行獲得を予測できる可能性が示唆された。