The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-09] ポスター(神経)P09

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-09-2] 在宅パーキンソン病患者のホームエクササイズ継続に影響する要因

松村 剛志1, 吉田 英雄2, 平井 隆広3, 山田 順志3, 楯 人士2 (1.常葉大学保健医療学部理学療法学科, 2.堀田内科医院リハビリテーション科, 3.城西神経内科クリニックリハビリテーション課)

Keywords:在宅パーキンソン病患者, ホームエクササイズ, 質的分析

【はじめに,目的】

在宅パーキンソン病(PD)患者に対するホームエクササイズ(HE)は,理学療法診療ガイドラインによって実施を推奨されている。しかしPDは,多様な徴候とその進行に伴い生活上の問題が大きく変動するため,患者本人より「運動の大切さは解っているが,HEを続けることができない」との訴えも聞こえてくる。そこで今回,在宅PD患者自身の視点からHE継続に影響する要因を質的に分析し,HE継続支援の一助とするために考察を加える。

【方法】

対象者は,静岡市内の2カ所のクリニックに通院・通所しているPD患者6名(平均年齢71.5±9.7歳,うち女性4名)とした。その重症度分類はII:1名,III:3名,IV:2名,罹病期間は3~18年であった。担当理学療法士に,面接に支障が出るような①著明な精神・心理的問題のないこと,②著しい構音障害がないことを選択基準として調査協力への声掛けを依頼した。声掛けに対して同意の得られた対象者について,その要望に応じて自宅またはクリニックにて半構成的インタビューを行った。20~60分のインタビュー終了後に逐語録を作成し,得られたテクスト・データを質的分析手法であるSteps for Coding And Theorization(SCAT)にて分析した。研究テーマに即して得られた構成概念は,対象者ごとにストーリーライン(SL)としてまとめ,さらに各SLを統合し,在宅PD患者のHE継続に対する影響要因に関するSLを明らかにした。

【結果】

SCAT分析の結果,65種類の構成概念を抽出した。これらの構成概念から構築されたSLは以下の通りである。対象者は変動する身体徴候への不安が強く,医療専門職に対してHEも含めた対処方法に関する説明や指導を折に触れて求めていた。リハ専門職による直接的介入に満足できれば,そこでの方法をHEへ取り入れることを希望し,HEそのものの効果を実感できれば,それを続けて行きたいと考えていた。対象者は自分自身を評価するだけでなく,障害を有する他者の評価も行っており,他者との比較や病気に関する情報収集はHEの実施・継続に寄与していた。またHEの内容には,対象者の趣味活動を踏まえて興味のあることへのチャレンジを組み入れることを望み,リハ専門職による励ましと共に病気に立ち向かうことへの動機づけが重要と考えていた。しかし,現実には身体徴候増悪経験や転倒リスク増大が治療効果に対する低い自己評価やHE遂行への自信の無さに結び付き,近親者の理解不足も影響してHE継続を阻害していた。重症度が増して要介護状態に陥ると,対象者自身の動機づけと共に,介護者の理解,意欲,心遣いがHE継続にとって大きな影響因子となることも示された。

【結論】

以上より,在宅PD患者のHE継続には医療専門職,近親者・介護者,同病他者との関係が影響を与えており,その継続支援には,HEの内容の検討,効果の実感の確認,継続的励まし,介護者支援,同病他者との交流が重要であることが明らかとなった。