第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-14] ポスター(神経)P14

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-14-3] 視床出血後外側型における独歩獲得に関わる因子の検討

小野田 翔太, 實 結樹, 頴川 和彦, 濵野 祐樹, 山口 賢一郎 (上尾中央総合病院リハビリテーション技術科)

キーワード:視床出血, CT画像, 独歩獲得

【はじめに,目的】

Chungらは視床の栄養血管支配別で5つの型に分類し,その中でも後外側型の頻度が高いと報告している。視床外側には体性感覚野,頭頂連合野,大脳基底核,小脳と線維結合があり,感覚障害や運動失調,筋緊張異常,高次脳機能障害等,多様な機能障害を合併する。臨床上,視床外側の病変において,これらの症状がみられた症例では独歩獲得に難渋することを経験する。先行研究において,視床出血後外側型の独歩可否に関する要因を検討した報告はみられない。そこで,今回は視床出血後外側型に分類した症例において,独歩可否に関わる因子を明らかにすることを目的とした。



【方法】



対象は2012年1月から2016年3月までに視床出血の診断で入院し退院した症例のうち,脳卒中既往を有する者,入院前modified Rankin Scale:1以上の者,転帰が死亡例の者を除外した42例(男性27例,女性15例,年齢73±10.7歳,左22例,右20例)とした。調査項目は,いずれも退院時のBrunnstrom stage(以下,BRS),運動失調の有無,感覚障害の有無,筋緊張異常の有無,半側空間無視の有無,注意障害の有無を後方視的に診療録より抽出した。BRS,運動失調,感覚障害,筋緊張異常は麻痺側下肢のデータを使用した。分析は入院時頭部Computed Tomography(以下,CT)画像にてChungらが報告している分類に従い,視床膝状体動脈領域を後外側型に分類し,退院時のFunctional Ambulation Classification(以下,FAC)の0-3を独歩不可,4・5を独歩可とし群分けを行った。統計学的解析は独歩可否に関わる因子をロジスティック回帰分析にて検討した。統計処理はR2.8.1を用い,有意水準はP<0.05またはP<0.01とした。



【結果】

独歩可群のBRS中央値は5,FACは4,独歩不可群のBRS中央値は4,FACは2であった。独歩可否に関わる因子として採用された変数はBRS,感覚障害の有無,注意障害の有無であった。モデルx2検定の結果はP<0.01で有意であり,ホスマー・レメショウ検定結果はP=0.668で良好であり,判別的中率は71.4%であった。



【結論】

視床外側は多くの脳領域と連絡しており多様な症状がみられるが,独歩可否に関わる因子として採用された変数はBRS,感覚障害の有無,注意障害の有無であった。本研究の結果より,運動麻痺だけでなく,視床の各神経核の機能を理解し,病変により出現した症状に対して介入する必要があると考える。今回,感覚障害や注意障害は障害の有無で検討しており,症状の程度まで詳細に検討できていないが,視床外側特有の症状の出現が独歩可否に関わることが示唆された。その他,運動失調,筋緊張異常等は採用されなかったが,臨床上は歩行自立度に影響を及ぼすことも少なくない。今後は各評価指標の程度を定量的に示して検討することを課題とする。