The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-14] ポスター(神経)P14

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-14-4] 重度の若年小脳出血患者に対する理学療法の経験
36ヶ月に亘るアプローチと変化

中田 圭亮1, 井村 理2, 高橋 彩1, 吉尾 雅春1, 橋本 康子1 (1.千里リハビリテーション病院, 2.奈良県立医科大学付属病院)

Keywords:小脳出血, 症例報告, CT画像

【はじめに,目的】小脳出血により重度の意識障害と四肢麻痺を呈した症例に対して,回復期リハビリテーション病棟で10ヶ月,訪問リハビリテーションで26ヶ月に亘って理学療法を実施した結果,自宅におけるほとんどの日常生活動作が可能となった。本症例の経過について考察を交えて報告する。


【方法】症例は16歳男性。小脳出血を発症し,開頭血腫除去術を施行。66病日に当院入院。入院時Computed tomography(以下CT)画像で,小脳虫部,右小脳半球,両側深部小脳核,左下小脳脚,左中小脳脚,左前庭核を含む広範囲に低吸収域を認めた。水頭症は残存していたが,大脳に病変を認めなかった。初期評価は,Japan Coma Scale 300,随意運動はみられなかった。入院初期は覚醒向上を目標にアプローチした結果,アプローチ開始から3ヶ月目に僅かに手足の動きが出現,6ヶ月目には目で見たものや環境に対して反応するようになり,じゃんけんを行ったり,トイレで排尿できるようになった。Scale for the assessment and rating of ataxia(以下SARA)は歩行8,立位6,座位4,言語障害6,Functional Independence Measure(以下FIM)は18点(運動:12点,認知:6点)であった。6ヶ月目以降は自宅退院を目標に家族指導を含めたアプローチを行い,10ヶ月目には発声は認めないものの,声かけに対して協力動作が得られたり,複雑な環境を理解するようになり,エレベーターや車椅子を操作して自室へ戻ることが可能となった。SARAは歩行6,立位5,座位4,言語障害5,FIMは35点(運動:28点,認知:7点)であった。11ヶ月目から訪問リハビリテーションを開始。訪問開始後は嚥下を含めた食事,日常生活動作の自発性向上を目標にアプローチを行い,17ヶ月目には発話できるようになり,発症以前の記憶を取り戻した。SARAは歩行6,立位4,座位2,言語障害2,FIMは70点(運動:43点,認知27点)。17ヶ月目までは目的動作の獲得に向け,運動に取り組みやすい環境を作りアプローチを行った。17ヶ月目以降は言葉でのやりとりにより本人の思考や希望が明確となったため,一緒に目標を設定し,目標に向けたプログラムを展開した。この頃から介助下での食事練習を開始。24ヶ月目には準備のみで更衣ができるようになり,移乗は安全性を自ら考慮し,家族に声をかけてから行うようになった。


【結果】36ヶ月目のSARAは歩行5,立位3,座位1,言語障害1,FIMは100点(運動65点,認知35点)となり,トイレ動作は自立し,食事はスプーンとフォークを使用して食べられるようになり,室内移動は壁伝い歩きが見守りで可能となった。


【結論】小脳出血において,発症時の血腫量や血腫径,水頭症の有無,急性期病院入院時の意識障害の程度が予後を左右する因子とされているが,残存領域を把握することがその治療計画・予後を考える上で重要となる。そのため,重症例においてもCTやMRI等の脳画像所見を併用し,予後や可能性を検討すべきであると考えられた。