The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-15] ポスター(神経)P15

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-15-3] 脂肪由来幹細胞を用いた再生医療とリハビリテーションを併用した慢性期脳梗塞の1症例
~FA値と歩行機能変化に関する考察~

加藤 諒大, 伊藤 耕栄, 下田 晴昭, 山田 勝雄, 齋藤 孝次 (社会医療法人孝仁会釧路孝仁会記念病院)

Keywords:脳卒中, 再生医療, FA値

はじめに

神経再生医療において神経可塑性を考慮するとHebbの理論からリハビリテーションとの併用は重要だと言われているが,ヒトを対象とした再生医療とリハビリテーションの併用に関してはあまり多くの報告はされていない。また拡散テンソル画像(Diffusion Tensor Imaging:DTI)が大脳白質のワーラー変性を評価する上で有用だと言われており,拡散異方係数(fractional anisotopy:FA)値は神経線維の密度を客観的に評価することが可能である。当院では脂肪由来間葉系幹細胞を用いた再生医療を平成26年より再生医療新法の元で実施しており,平成28年1月に特定認定再生医療等委員会で脳梗塞,脊髄損傷などへの使用が認可された。今回,再生医療を実施し機能改善を得られた慢性期脳梗塞の1症例について検討したので以下に報告する。

方法

対象は発症より1年半経過した慢性期左脳梗塞で右片麻痺を呈した1症例であり,再生医療前後の左右大脳脚のFA値及びFA比,歩行機能の変化に関して検討を行った。

運動機能及びFA値の評価は投与前,投与後4週に実施した。幹細胞は事前に本人の脂肪由来幹細胞を培養しており,投与前評価実施後,医師よりPT3単位,OT3単位の指示でリハビリテーションを2週間実施した。その後2度目の幹細胞投与を実施しPT3単位,OT6単位に単位を増加した。

投与前のデータにでFA値は損傷側0.427,非損傷側0.595,FA比0.71であった。最大歩行速度は0.55m/s,6分間歩行距離は190mであった。Br.Stageは上肢III,手指III,下肢IV,FBSは50点だった。FIMは122点とADLは全般的に自立していた。

FA値の計測にはINTERA Achieva 3.0T Quasar Dual(PHILIPS社製)を用いて,処理装置にはAdvanced Viewingを用いた。使用コイルはSENSE-NV-16で関心領域(regions of interest:ROI)を左右の大脳脚へ設定した。DTI撮像条件はスライス厚2.6(mm),Pixel size 1.56×1.56(mm),B factor 800(s/mm2)で当院放射線科にて実施された。

結果

投与後4週後の評価では損傷側0.507,非損傷側0.607,FA比0.84となった。歩行速度は0.67m/s,6分間歩行距離は258mとなった。Br.Stageは上肢IV,手指III,下肢IVとなった。FBS,FIMに変化はなかった。

結論

DTIのパラメータであるFA値に関しては神経線維が密な部位では1に近く,神経線維が疎な部位では0に近い値をとる。大脳脚で損傷側のFA値の向上およびFA比の向上が見られた。これに伴い上肢のBr.Stageの改善,歩行速度の改善が得られた。これにより慢性期の患者において再生医療とリハビリの併用が神経可塑性に寄与することが示唆された。しかし今回は機能向上目的のプログラムとなっていたことで上記の変化は得られたが,ADL上の変化は得られなかった。これに関しては元々のFIMが高値であったことやプログラム内容の影響もありFIMの変化は得られにくかったと考え,今後急性期~亜急性期での介入においてはADLを意識したプログラム内容も考慮していく必要がある。