[P-NV-15-5] 1986年から2015年に雑誌「理学療法学」で発表された神経系理学療法に関する研究論文の計量書誌学的分析
Keywords:神経系理学療法, 計量書誌学的分析, 雑誌「理学療法学」
【はじめに，目的】
本邦における神経系理学療法の変遷は急速である。特に脳卒中では神経生理学的アプローチ（NDT）から課題志向的アプローチ，生活・予防リハ，さらにニューロリハ等へと変化を続けている。時代の変遷は雑誌「理学療法学」に反映され，その発表論文の傾向を示す計量書誌学的データは発展の方向性を示す可能性がある。本研究の目的は，過去30年間に雑誌「理学療法学」に発表された神経系理学療法の研究論文を計量書誌学的に分析することである。
【方法】
CiNiiのウェブサイトで，1986年から2015年に発表された神経系理学療法に関する論文を検索した。取込基準は（1）原著論文，システマティックレビュー，症例報告，調査報告，（2）論文の為の一次的なデータ収集をしていること。除外基準は，（1）学会・研修会の発表のまとめ，（2）学会抄録とした。なお，日本理学療法士学会による研究助成の成果報告は，2006年以前は研究論文の体裁で，それ以降は報告書であるため，2006年以前の論文は解析対象，それ以降は除外した。先行研究を参考にコード表を作成し，論文の特徴をコード化した。解析対象は，筆頭筆者の所属，研究デザイン，論文の目的，対象等であった。コード化は2人の研究者がそれぞれ独立して行った。
【結果】
過去30年間に発表された全1,111論文中，神経系理学療法は183論文（16.4%）であった。筆者所属は65.5%が病院であった。対象は脳卒中が77.2%で最多，次いでパーキンソン病8.6%であった。研究デザインは，分析的研究86%，記述的研究14%であった。分析的研究では，被験者内・被験者間研究（33.3%），横断的研究（28%）が多く，ランダム化比較試験（3.2%），シングルケーススタディー（2.2%）は少なかった。論文の目的は，治療（25%），病因（23.4%），解剖・生理学（22.8%）が多かった。治療介入の内容は，スキル・課題トレーニング（24%），歩行移動（18%），NDT（15.3%）が多く，装具（4.2%）は少なかった。治療の年次推移では1986年～1997年はNDTとスキル・課題トレーニングが多く，1998年～2006年は歩行移動が多く，2007年～2015年はスキル・課題トレーニングと歩行移動に加えフィットネスが増加，NDTは減少していた。
【結論】
雑誌「理学療法学」における30年間の神経系理学療法の特徴が明らかとなった。論文の傾向は，脳卒中理学療法の変遷と一致し，各時代の臨床が反映されていた。一方，脳卒中以外を扱う論文，独創的・多角的視点での論文は少なかった。また，エビデンスの高さについては疑問が残った。海外英文誌の中での位置付けが今後の検討課題であった。本研究の限界は研究方法論や論文報告の質を検証していないこと，論文の分類を筆者でなく研究者の判断で行ったことである。
本邦における神経系理学療法の変遷は急速である。特に脳卒中では神経生理学的アプローチ（NDT）から課題志向的アプローチ，生活・予防リハ，さらにニューロリハ等へと変化を続けている。時代の変遷は雑誌「理学療法学」に反映され，その発表論文の傾向を示す計量書誌学的データは発展の方向性を示す可能性がある。本研究の目的は，過去30年間に雑誌「理学療法学」に発表された神経系理学療法の研究論文を計量書誌学的に分析することである。
【方法】
CiNiiのウェブサイトで，1986年から2015年に発表された神経系理学療法に関する論文を検索した。取込基準は（1）原著論文，システマティックレビュー，症例報告，調査報告，（2）論文の為の一次的なデータ収集をしていること。除外基準は，（1）学会・研修会の発表のまとめ，（2）学会抄録とした。なお，日本理学療法士学会による研究助成の成果報告は，2006年以前は研究論文の体裁で，それ以降は報告書であるため，2006年以前の論文は解析対象，それ以降は除外した。先行研究を参考にコード表を作成し，論文の特徴をコード化した。解析対象は，筆頭筆者の所属，研究デザイン，論文の目的，対象等であった。コード化は2人の研究者がそれぞれ独立して行った。
【結果】
過去30年間に発表された全1,111論文中，神経系理学療法は183論文（16.4%）であった。筆者所属は65.5%が病院であった。対象は脳卒中が77.2%で最多，次いでパーキンソン病8.6%であった。研究デザインは，分析的研究86%，記述的研究14%であった。分析的研究では，被験者内・被験者間研究（33.3%），横断的研究（28%）が多く，ランダム化比較試験（3.2%），シングルケーススタディー（2.2%）は少なかった。論文の目的は，治療（25%），病因（23.4%），解剖・生理学（22.8%）が多かった。治療介入の内容は，スキル・課題トレーニング（24%），歩行移動（18%），NDT（15.3%）が多く，装具（4.2%）は少なかった。治療の年次推移では1986年～1997年はNDTとスキル・課題トレーニングが多く，1998年～2006年は歩行移動が多く，2007年～2015年はスキル・課題トレーニングと歩行移動に加えフィットネスが増加，NDTは減少していた。
【結論】
雑誌「理学療法学」における30年間の神経系理学療法の特徴が明らかとなった。論文の傾向は，脳卒中理学療法の変遷と一致し，各時代の臨床が反映されていた。一方，脳卒中以外を扱う論文，独創的・多角的視点での論文は少なかった。また，エビデンスの高さについては疑問が残った。海外英文誌の中での位置付けが今後の検討課題であった。本研究の限界は研究方法論や論文報告の質を検証していないこと，論文の分類を筆者でなく研究者の判断で行ったことである。