第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-17] ポスター(神経)P17

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-17-1] 脳出血患者における歩行獲得期間に影響する因子
~血腫量の違いによる比較検討~

池田 法子1, 大川 雄一郎1, 山田 恵美加1, 神戸 晃男1, 鳥越 恵一郎2, 影近 謙治2 (1.金沢医科大学病院医療技術部心身機能回復技術部門リハチーム, 2.金沢医科大学病院リハビリテーション医学科)

キーワード:脳出血, 歩行, 血腫量

【はじめに,目的】脳卒中患者において歩行獲得の有無,更に歩行獲得にどの程度時間を要するか予測する事は本人や家族,また,理学療法を行う上でも重要である。今回,脳出血患者において血腫量の違いから歩行獲得期間に影響する因子との関連性を見出すことを目的とし,若干の結果を得たので報告する。

【方法】対象は2009年12月から入院し,2016年7月までに当院脳神経外科,神経内科を退院した初発脳出血自立歩行患者26名(被殻出血19名,視床出血7名,男性16名,女性10名,平均年齢58.2歳)である。調査項目は診療録より年齢,性別,麻痺側,血腫量,発症2週時,退院時の片麻痺12段階回復grade,発症2週時,退院時のBerg Balance Scale(BBS)合計点数,2週時,退院時のFunctional Independence Measure(FIM)の運動項目,歩行獲得週数,在院日数,意識障害,深部覚障害,高次脳機能障害の有無を抽出した。対象を血腫量20ml未満群と20ml以上群に分け,上記項目について比較検討した。統計学的分析は年齢,歩行獲得週数,在院日数にはt検定,Grade,BBS点数,FIM点数にはMann-WhitneyU検定,性別,麻痺側別,意識障害,深部感覚障害,高次脳機能障害の有無にはFisher直接確率法を用いた。更に血腫量と歩行獲得週,在院日数との関連についてはSpearmanの順位相関を用いた。いずれも有意水準5%未満とした。

【結果】年齢では20ml未満群60.8歳,20ml以上群52.3歳と20ml以上群で低かった。Gradeでは2週時20ml未満群9.8,20ml以上群4.1,最終時20ml未満群11.3,20ml以上群8.5と有意差がみられた。BBS点数では2週時20ml未満群35.9点,20ml以上群11.8点,退院時20ml未満群52.9点,20ml以上群48.5点と有意差が見られた。2週時FIM点数では20ml未満群60.9点,20ml以上群35.6点と20ml以上群で低く,退院時は20ml未満群85.6点,20ml以上群80.1点と有意差はなかった。歩行獲得週数は20ml未満群7.3週,20ml以上群14.9週と20ml以上群で長く要した。在院日数は20ml未満群76.7日,20ml以上群136.5日と20ml以上群で長く要した。意識障害,高次脳機能障害の有無では,20ml以上群で多くみられた。男女差,左右差,深部覚障害の有無では有意差がなかった。血腫量と歩行獲得週,在院日数との関連性ではr=0.47,r=0.44と有意な相関がみられた。



【結論】被殻,視床出血の運動予後については病巣の大きさと比例し,血腫量が少量ほどADL,歩行は良好であるとされている。今回,血腫量20mlを境界に歩行獲得期間と早期の運動機能,影響因子との関連性を調査し,血腫量が少量の者では運動麻痺も軽度であり,阻害因子の影響も少なく,約2ヶ月で歩行獲得可能であった。一方,血腫量が多い者では隣接する組織への圧迫により,発症早期では運動麻痺は重度であり,意識障害や高次脳機能障害の合併も多く,座位さえ不良な状態にあるが血腫消退,浮腫改善に伴い,年齢が若ければ約4か月の期間を経て歩行獲得可能であった。