[P-NV-18-5] 回復期病棟にて歩行再獲得した脳卒中患者におけるTrail Walking Testの検者内信頼性
Keywords:Trail Walking Test, 脳卒中患者, 検者内信頼性
【はじめに】
脳卒中患者の転倒はバランス能力低下や高次脳機能障害と関連し,健常高齢者と比較して約2倍の発生率であることが知られている。域在住高齢者を対象として開発されたTrail Walking Test(TWT)はTrail Making Test Part-Aを歩行版に改変し,25m2(5m×5m)の床に設置した1~15までの旗を順番に連続して通過する時間を計測する測定法である。TWTは旗を探すという探索能力や注意機能,旗の位置を短期的に記憶していく短期記憶能力,それに頻回な方向転換など多くの機能が同時に求められ,高次脳機能や運動機能を複合的に評価できることが示唆されている。さらに,TWTは身体機能や高次脳機能のみの検査と比較し,1年間の転倒発生の感度と特異度が有意に高いことが報告されている。しかし,TWTは地域在住の健常高齢者を対象として開発されており,脳卒中患者を対象とした測定の信頼性が明らかとなっていない。そこで,本研究では回復期病棟にて歩行再獲得した脳卒中患者を対象としてTWTの検者内信頼性を検討することを目的とした。
【方法】
1.対象者
当院回復期病棟へ入院中の初発テント上病変の脳卒中患者10名(51.7±12.3歳,右片麻痺:6・左片麻痺:4名,Brunnstrom StageIII:1・IV:2・V:5・VI:1名)を対象とした。取り込み基準は歩行のFunctional Independence Measure(FIM)の点数が入院時5点以下かつ測定時6点以上,Mini Mental State Examinationの総得点が20点以上,課題の理解が可能な者とした。除外基準は重度の心・肺・筋骨格系の障害を合併している,向精神薬を服用している者とした。
2.TWT
25m2(5m×5m)の床に先行研究と同位置に1~15までの高さ30cmの旗を設置し,1から順に15まで連続して通過する時間を計測した。旗の周りに設置した直径30cmの円に踏み込むことで到達したとみなした。検者は「可能な限り早くかつ正確に15番まで移動するように」と指示した。検査はストップウォッチを使用し,小数点2桁まで記録した。日常生活で杖や短下肢装具などの補助具を使用している者は装着して測定した。
3.手順
TWTを前述の方法に従い1回測定し,7日間後にTWTの2回目の測定を1回目と同じ旗の配置で行った。
4.データ解析
TWTの1回目と2回目の値について級内相関係数(Intraclass correlation coefficients;ICC)を用いてICC(1,1)を算出した。統計学的分析においてはSPSS Statistics 22.0(IBM社製)を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
TWTの1回目は69.18±26.44秒,2回目は70.08±17.48秒であった。ICC(1,1)は0.811(p=0.001,95%信頼区間0.435-0.949)であった。
【結論】
健常高齢者を対象とした先行研究では,TWTのICC(1,1)は0.945と高い検者内信頼性を示したことが報告されている。本研究ではTWTのICC(1,1)は0.81以上となり,脳卒中患者であっても回復期病棟にて歩行再獲得した者であれば,十分な検者内信頼性を示すことが示唆された。
脳卒中患者の転倒はバランス能力低下や高次脳機能障害と関連し,健常高齢者と比較して約2倍の発生率であることが知られている。域在住高齢者を対象として開発されたTrail Walking Test(TWT)はTrail Making Test Part-Aを歩行版に改変し,25m2(5m×5m)の床に設置した1~15までの旗を順番に連続して通過する時間を計測する測定法である。TWTは旗を探すという探索能力や注意機能,旗の位置を短期的に記憶していく短期記憶能力,それに頻回な方向転換など多くの機能が同時に求められ,高次脳機能や運動機能を複合的に評価できることが示唆されている。さらに,TWTは身体機能や高次脳機能のみの検査と比較し,1年間の転倒発生の感度と特異度が有意に高いことが報告されている。しかし,TWTは地域在住の健常高齢者を対象として開発されており,脳卒中患者を対象とした測定の信頼性が明らかとなっていない。そこで,本研究では回復期病棟にて歩行再獲得した脳卒中患者を対象としてTWTの検者内信頼性を検討することを目的とした。
【方法】
1.対象者
当院回復期病棟へ入院中の初発テント上病変の脳卒中患者10名(51.7±12.3歳,右片麻痺:6・左片麻痺:4名,Brunnstrom StageIII:1・IV:2・V:5・VI:1名)を対象とした。取り込み基準は歩行のFunctional Independence Measure(FIM)の点数が入院時5点以下かつ測定時6点以上,Mini Mental State Examinationの総得点が20点以上,課題の理解が可能な者とした。除外基準は重度の心・肺・筋骨格系の障害を合併している,向精神薬を服用している者とした。
2.TWT
25m2(5m×5m)の床に先行研究と同位置に1~15までの高さ30cmの旗を設置し,1から順に15まで連続して通過する時間を計測した。旗の周りに設置した直径30cmの円に踏み込むことで到達したとみなした。検者は「可能な限り早くかつ正確に15番まで移動するように」と指示した。検査はストップウォッチを使用し,小数点2桁まで記録した。日常生活で杖や短下肢装具などの補助具を使用している者は装着して測定した。
3.手順
TWTを前述の方法に従い1回測定し,7日間後にTWTの2回目の測定を1回目と同じ旗の配置で行った。
4.データ解析
TWTの1回目と2回目の値について級内相関係数(Intraclass correlation coefficients;ICC)を用いてICC(1,1)を算出した。統計学的分析においてはSPSS Statistics 22.0(IBM社製)を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
TWTの1回目は69.18±26.44秒,2回目は70.08±17.48秒であった。ICC(1,1)は0.811(p=0.001,95%信頼区間0.435-0.949)であった。
【結論】
健常高齢者を対象とした先行研究では,TWTのICC(1,1)は0.945と高い検者内信頼性を示したことが報告されている。本研究ではTWTのICC(1,1)は0.81以上となり,脳卒中患者であっても回復期病棟にて歩行再獲得した者であれば,十分な検者内信頼性を示すことが示唆された。