The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-19] ポスター(神経)P19

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-19-3] 頸髄損傷者に対する長期的なリハビリテーション効果~ADL自立度に着目して~

橋本 奈実1, 岡野 生也1, 篠山 潤一2, 山本 直樹1, 安田 孝司1, 代田 琴子3, 安尾 仁志2, 相見 真吾2, 延本 尚也1, 太田 徹1, 深津 陽子1, 田村 晃司1, 鳥井 千瑛1, 山口 達也1 (1.兵庫県立リハビリテーション中央病院, 2.兵庫県地域ケア・リハビリテーション支援センター, 3.兵庫県福祉のまちづくり研究所)

Keywords:頸髄損傷, ADL, 自立支援

【はじめに,目的】

四肢麻痺を呈する頸髄損傷者(以下,頸損者)は日常生活活動(以下,ADL)に多くの支障をきたし,ADL自立度は残存機能レベルにより異なる。しかし,臨床上,長期的なリハビリテーションにより,頸損者におけるADL自立度が向上することを経験してきた。本研究の目的は,当センターにおける頸損者のADL自立度を後方視的に調査し,長期的なリハビリテーション効果を検証することである。

【方法】

対象は平成20年4月~平成25年5月までに当院に入院し,その後障害者支援施設(以下,施設)を利用した頸損者20名のうち以下の基準を満たす15名(男性11名,女性4名)とした。対象の選択基準はFrankelの分類A~C,移動は車いすを使用,立位,歩行が不可能な者とした。各対象者の医学的情報,Functional Independence Measure(以下,FIM)運動項目の得点,自動車運転獲得状況をカルテやケース記録から抽出し,各動作の自立度について検討した。

統計解析はEZRversion1.24を使用し,Friedman検定,Bonferroni法を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

対象者の平均年齢は24.9±11.2歳,当院入院期間は328.9±151.8日,施設入所期間は788.5±324.8日であった。残存機能レベルはC6A3名,C6BI2名,C6BII5名,C6BIII3名,C7A,C8A各1名であった。FIM6,7を自立と見なし,対象者のうち自立した者の割合をADL自立度とした。車いす移動のADL自立度は当院退院時(以下,退院時)100%であった。食事,整容,洗体,更衣上下,排尿コントロール,ベッドへの移乗は退院時20~87%,施設退所時(以下,退所時)100%であった。トイレ動作,排便コントロールは退院時7%,退所時40%,80%であった。自動車運転の自立度は退所時73%であった。また,FIM得点は全項目において,当院入院時,退院時,退所時でいずれも有意差を認めた(P<0.01)。加えて,当院入院中(以下,入院中),施設入所中(以下,入所中)の期間別にみると,洗体,更衣上下,排尿コントロール,排便コントロール,ベッドへの移乗は入院中,入所中ともに有意に改善を認め(P<0.05),食事,整容,車いす移動は入院中にのみ有意に改善を認め(P<0.05),トイレ動作は入所中にのみ有意に改善を認めた(P<0.01)。

【結論】

本研究の対象者におけるADL自立度は,諸家らの報告に比べ高い結果を示した。また,施設入所後においても食事,整容,車いす移動を除くADL動作に有意な改善を示した。長期間にわたりADLの向上を認めた要因として,施設での各種運動プログラムを通して身体機能の改善を図るとともに,実生活場面において反復して動作練習を実施したことが挙げられる。

以上より,頸損者において施設を利用し,長期間リハビリテーションを継続することは,ADL自立度の向上に寄与することが示唆された。今後は症例数を増やし,各ADL自立までの経時的変化を検証し,動作自立までの期間を調査したいと考える。