[P-NV-19-4] 脊椎脊髄疾患者の選択的ステップ動作時間と運動機能の関係
Keywords:ステップ動作, 視覚刺激, 脊髄損傷
【はじめに,目的】
ステップ動作は,注意を要する環境下において転倒を回避する重要な動作の1つである。ステップ動作は認知・判断,予測的姿勢調整(APA),振り出しに分類され,動作の遅延は転倒の危険因子となる。選択的注意課題を負荷した場合,ステップ動作に遅延がみられると報告されており,認知・判断やAPAの制御がステップ動作の重要な因子となる。運動麻痺を呈する不全脊髄損傷者を対象にステップ動作時間を検討した研究では同年代,健常高齢者に比べ遅延があり筋力・歩行能力と関連がみられたと報告されているが,注意課題との関係は明らかではない。そこで本研究の目的は,脊椎脊髄疾患者を対象に選択的ステップ動作時間と歩行・バランス能力,筋力・筋緊張などの機能低下との関係を明らかとすることである。
【方法】
対象は,A病院に入院・通院中の不全脊髄損傷・頚椎症性脊髄症・腰部脊柱管狭窄症の17名(男性8名・女性9名,平均年齢64.59±13.72歳)とした。測定課題は,静止立位から前方モニターに表示される視覚刺激(Flanker Task;→→←→→)の中央矢印の示す足を出来るだけ早く前方30cm踏み出すこととした。ステップ動作時間は重心動揺計(Anima社製)の結果から求め,反応相:開始合図から,一側への5%以上の体重移動開始まで,APA相:体重移動開始から遊脚側離地まで,遊脚相:遊脚側離地から接地まで,の3つに細分化した。動作は左右8施行ランダムに実施した。ステップ動作の他に10m歩行(快適速度),Functional Balance Scale(FBS),Functional Reach Test(FRT),ASIA評価基準の下肢筋力スコア(LEMS),疼痛(VAS),筋緊張(大腿四頭筋,大腿三頭筋,下腿三頭筋に対して,modified Ashworth Scaleを使用)を評価した。統計解析は不一致条件のステップ動作各相の時間と各評価の関連をPearsonの相関分析を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
反応相では,FBS(r=-0.654,p=0.004),FRT(r=-0.508,p=0.038),APA相では,10m歩行(r=-0.656,p=0.004),FBS(r=-0.608,p=0.010),FRT(r=-0.581,p=0.014),LEMS(r=-0.577,p=0.015),筋緊張(r=0.536,p=0.026),遊脚相では,FRT(r=-0.603,p=0.010)と筋力(r=-0.534,p=0.027)で有意な相関がみられた。
【結論】
反応相は,FBS・FRTと相関がみられ,バランス能力低下により体重移動に遅延が生じたと考えられる。APA相では,最も多くの指標と相関を認める姿勢制御の過程であり,体重移動が実際に生じるためバランス能力低下に加え支持脚としての役割を担う筋力・筋緊張の有無がより関係したと考えられる。遊脚相では,FRT・筋力で相関がみられ,筋力低下による振り出し動作の遅延が生じたと推察できる。今回,選択的ステップ動作時間は歩行能力・バランス能力・筋力・筋緊張との関連が示唆された。ステップ動作の改善には筋力・バランス能力・筋緊張を改善させることが重要であると考える。
ステップ動作は,注意を要する環境下において転倒を回避する重要な動作の1つである。ステップ動作は認知・判断,予測的姿勢調整(APA),振り出しに分類され,動作の遅延は転倒の危険因子となる。選択的注意課題を負荷した場合,ステップ動作に遅延がみられると報告されており,認知・判断やAPAの制御がステップ動作の重要な因子となる。運動麻痺を呈する不全脊髄損傷者を対象にステップ動作時間を検討した研究では同年代,健常高齢者に比べ遅延があり筋力・歩行能力と関連がみられたと報告されているが,注意課題との関係は明らかではない。そこで本研究の目的は,脊椎脊髄疾患者を対象に選択的ステップ動作時間と歩行・バランス能力,筋力・筋緊張などの機能低下との関係を明らかとすることである。
【方法】
対象は,A病院に入院・通院中の不全脊髄損傷・頚椎症性脊髄症・腰部脊柱管狭窄症の17名(男性8名・女性9名,平均年齢64.59±13.72歳)とした。測定課題は,静止立位から前方モニターに表示される視覚刺激(Flanker Task;→→←→→)の中央矢印の示す足を出来るだけ早く前方30cm踏み出すこととした。ステップ動作時間は重心動揺計(Anima社製)の結果から求め,反応相:開始合図から,一側への5%以上の体重移動開始まで,APA相:体重移動開始から遊脚側離地まで,遊脚相:遊脚側離地から接地まで,の3つに細分化した。動作は左右8施行ランダムに実施した。ステップ動作の他に10m歩行(快適速度),Functional Balance Scale(FBS),Functional Reach Test(FRT),ASIA評価基準の下肢筋力スコア(LEMS),疼痛(VAS),筋緊張(大腿四頭筋,大腿三頭筋,下腿三頭筋に対して,modified Ashworth Scaleを使用)を評価した。統計解析は不一致条件のステップ動作各相の時間と各評価の関連をPearsonの相関分析を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
反応相では,FBS(r=-0.654,p=0.004),FRT(r=-0.508,p=0.038),APA相では,10m歩行(r=-0.656,p=0.004),FBS(r=-0.608,p=0.010),FRT(r=-0.581,p=0.014),LEMS(r=-0.577,p=0.015),筋緊張(r=0.536,p=0.026),遊脚相では,FRT(r=-0.603,p=0.010)と筋力(r=-0.534,p=0.027)で有意な相関がみられた。
【結論】
反応相は,FBS・FRTと相関がみられ,バランス能力低下により体重移動に遅延が生じたと考えられる。APA相では,最も多くの指標と相関を認める姿勢制御の過程であり,体重移動が実際に生じるためバランス能力低下に加え支持脚としての役割を担う筋力・筋緊張の有無がより関係したと考えられる。遊脚相では,FRT・筋力で相関がみられ,筋力低下による振り出し動作の遅延が生じたと推察できる。今回,選択的ステップ動作時間は歩行能力・バランス能力・筋力・筋緊張との関連が示唆された。ステップ動作の改善には筋力・バランス能力・筋緊張を改善させることが重要であると考える。