[P-NV-22-1] 脳卒中片麻痺者の加速度波形解析による歩行評価と下腿筋活動の関係
キーワード:脳卒中, 加速度, 筋活動
【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺者の歩行中の筋活動については多く報告されており,歩行獲得を目指す介入を行ううえで,対象者がどのような筋活動を呈しているのかを知ることは臨床上有用な情報である。また,歩行中の加速度波形によりパワースペクトラム解析(PS)やroot mean square(RMS),自己相関分析(AC)を算出することで,歩行指標として定量化できると報告されているが,脳卒中者における筋活動の相反性や協調性の低下といった疾患特異性との関係は明らかになっていない。
本研究の目的は健常成人と脳卒中片麻痺者の筋活動と歩行指標を比較し,脳卒中片麻痺者における歩行時の筋活動と歩容の関係について検討する事である。
【方法】
対象は脳卒中以外の神経疾患,整形外科疾患を有しない男性初発脳卒中患者6名(平均年齢65.0±8.2歳,発症82.3±33.6病日,右麻痺2名,FBS47.0±5.5点)とした。control群は成人男性6名(平均年齢25.5±1.8歳)とした。
歩行計測は10mの歩行路にて快適歩行速度,歩行補助具を用いない条件で実施した。体幹加速度の計測は慣性センサ(ATR-Promotions;TSND121)を第3腰椎付近に貼付して行い,得られた値よりPSを滑らかさの指標,RMSを動揺性の指標,ACを定常性の指標として,それぞれ前後,左右,上下の3方向で算出した。指標に対する歩行速度の影響を考慮し,RMSは歩行速度(m/s)の2乗で除した値とした。筋活動は表面筋電図計(ATR-Promotions;TS-EMG01)を用い,麻痺側(control群は全て右側)の外側腓腹筋,前脛骨筋を計測した。20Hzから250Hzのバンドパスフィルターで処理し,測定したデータの3歩行周期を抽出した。平均波形を算出したのちに,50msecのRMS波形に変換した。波形は3歩行周期中の平均値で除して正規化し,歩行周期中の同時収縮の指標としてco-contraction index(CI)を算出した。
それぞれ算出した値を対象群とcontrol群で比較した。また歩行指標とCIの相関係数を算出した。各指標の算出,統計解析には表計算ソフト(Microsoft;Excel)を使用した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
PSの左右方向と,RMS・ACの全方向,CIにおいて対象群とcontrol群で有意な差が認められた(p<0.05,d=1.35-2.34)。control群のCIとPSの上下方向,RMSの前後方向で有意な相関が認められた(|r|=0.82-0.91,p<0.05)。対象群では全ての項目において有意な相関は認められなかった(|r|=-0.41-0.64,p≧0.05)。
【結論】
先行研究同様,健常成人に比べ片麻痺者の歩行中の下腿筋活動の同時収縮は強く見られていたものの,片麻痺者においては同時収縮の程度と歩容を定量化した歩行指標との相関は認められなかった。さらにRMSとACの全ての方向で有意な差が認められた事から,動揺性の増加や定常性の低下などといった片麻痺者の疾患特異的な歩行機能の低下は麻痺側下腿の筋活動の影響を強く受けていない事が示唆された。
脳卒中片麻痺者の歩行中の筋活動については多く報告されており,歩行獲得を目指す介入を行ううえで,対象者がどのような筋活動を呈しているのかを知ることは臨床上有用な情報である。また,歩行中の加速度波形によりパワースペクトラム解析(PS)やroot mean square(RMS),自己相関分析(AC)を算出することで,歩行指標として定量化できると報告されているが,脳卒中者における筋活動の相反性や協調性の低下といった疾患特異性との関係は明らかになっていない。
本研究の目的は健常成人と脳卒中片麻痺者の筋活動と歩行指標を比較し,脳卒中片麻痺者における歩行時の筋活動と歩容の関係について検討する事である。
【方法】
対象は脳卒中以外の神経疾患,整形外科疾患を有しない男性初発脳卒中患者6名(平均年齢65.0±8.2歳,発症82.3±33.6病日,右麻痺2名,FBS47.0±5.5点)とした。control群は成人男性6名(平均年齢25.5±1.8歳)とした。
歩行計測は10mの歩行路にて快適歩行速度,歩行補助具を用いない条件で実施した。体幹加速度の計測は慣性センサ(ATR-Promotions;TSND121)を第3腰椎付近に貼付して行い,得られた値よりPSを滑らかさの指標,RMSを動揺性の指標,ACを定常性の指標として,それぞれ前後,左右,上下の3方向で算出した。指標に対する歩行速度の影響を考慮し,RMSは歩行速度(m/s)の2乗で除した値とした。筋活動は表面筋電図計(ATR-Promotions;TS-EMG01)を用い,麻痺側(control群は全て右側)の外側腓腹筋,前脛骨筋を計測した。20Hzから250Hzのバンドパスフィルターで処理し,測定したデータの3歩行周期を抽出した。平均波形を算出したのちに,50msecのRMS波形に変換した。波形は3歩行周期中の平均値で除して正規化し,歩行周期中の同時収縮の指標としてco-contraction index(CI)を算出した。
それぞれ算出した値を対象群とcontrol群で比較した。また歩行指標とCIの相関係数を算出した。各指標の算出,統計解析には表計算ソフト(Microsoft;Excel)を使用した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
PSの左右方向と,RMS・ACの全方向,CIにおいて対象群とcontrol群で有意な差が認められた(p<0.05,d=1.35-2.34)。control群のCIとPSの上下方向,RMSの前後方向で有意な相関が認められた(|r|=0.82-0.91,p<0.05)。対象群では全ての項目において有意な相関は認められなかった(|r|=-0.41-0.64,p≧0.05)。
【結論】
先行研究同様,健常成人に比べ片麻痺者の歩行中の下腿筋活動の同時収縮は強く見られていたものの,片麻痺者においては同時収縮の程度と歩容を定量化した歩行指標との相関は認められなかった。さらにRMSとACの全ての方向で有意な差が認められた事から,動揺性の増加や定常性の低下などといった片麻痺者の疾患特異的な歩行機能の低下は麻痺側下腿の筋活動の影響を強く受けていない事が示唆された。