[P-NV-22-5] 脳卒中片麻痺患者に対する歩行練習距離の変化が歩行能力改善に及ぼす影響について
―歩行リハビリ支援ツールTreeを用いた検討―
キーワード:脳卒中, 歩行練習, 歩行距離
【はじめに,目的】
理学療法分野における脳卒中患者に対する歩行練習は様々な方法が検討されている。脳卒中ガイドラインでは「歩行や歩行に関連する下肢訓練の量を多くすることは歩行能力の改善のために強く勧められる(グレードA)」と記されている。また脳卒中理学療法診療ガイドラインでも伝統的な運動療法よりもトレッドミルや平地歩行練習を行うことを推奨している。しかし,歩行練習量の指標として時間や距離,練習中の速度等を示したものは少ない。
歩行練習機器のひとつに歩行リハビリ支援ツールTree:リーフ(株)(以下Tree)がある。これは非装着型ロボットであり,歩行速度や踏み出しタイミングのピッチ音を,患者の歩行状態に合わせて任意に調節し歩行練習を実施でき,歩行能力改善の効果が期待されている。
そこで本研究の目的は,Treeを使用した際の一定時間における歩行練習距離の変化と,歩行能力の改善について検証することとした。
【方法】
研究デザインはABデザインによるマルチベースラインデザインとし,通常の歩行練習を行う期間をA期,Treeを使用して歩行練習を行う期間をB期とし,研究期間を15日間とした。対象は当院回復期リハビリテーション病棟に入院する脳卒中片麻痺患者6名とし,A期を3日,6日,9日で各2名を無作為に分け,その後の研究期間をB期の期間とした。除外対象は歩行練習に影響する認知機能の低下を認める者,脳血管疾患以外を原因とする歩行障害を有する者とした。対象者の毎日の理学療法介入の際に,20分間の総歩行距離を計測した。さらに歩行練習後に10m歩行時の速度,歩幅,cadenceを計測した。歩行練習時は担当理学療法士が対象者の疲労状態を考慮し休憩をとった。
以上の結果より,独立変数をTreeによる介入,従属変数を歩行練習中の歩行練習距離,歩行速度,歩幅,cadenceとした。結果の分析にはランダマイゼーション検定を行いた。これは各対象者について各期の平均値差の総和を検定統計量とし,A期とB期をランダムに組み合わせて(6C2*4C2=90通り)検定統計量を算出した。さらに介入結果から得られた値の検定統計量以上の組み合わせ数を,全体の組み合わせ数で除した値を有意確率とした。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
統計処理の結果,歩行練習距離の延長(1/90<0.05),歩行速度の向上(1/90<0.05),歩幅の拡大(1/90<0.05)に有意な差を認めた。cadenceには有意差を認めなかった(6/90>0.05)。
【結論】
脳卒中片麻痺患者に対してTreeを使用することで,Treeの重量によって安定性が高くなることや任意に設定した一定の歩行速度で歩行練習を実施できることが歩行距離延長に繋がったと考えた。さらに歩行速度の向上と歩幅の拡大が見られたことから,より長い距離の歩行練習が歩行能力改善に有効であることが示唆された。今後はTree以外の方法での歩行練習距離を長くする方法と併せて更なる検証を行いたい。
理学療法分野における脳卒中患者に対する歩行練習は様々な方法が検討されている。脳卒中ガイドラインでは「歩行や歩行に関連する下肢訓練の量を多くすることは歩行能力の改善のために強く勧められる(グレードA)」と記されている。また脳卒中理学療法診療ガイドラインでも伝統的な運動療法よりもトレッドミルや平地歩行練習を行うことを推奨している。しかし,歩行練習量の指標として時間や距離,練習中の速度等を示したものは少ない。
歩行練習機器のひとつに歩行リハビリ支援ツールTree:リーフ(株)(以下Tree)がある。これは非装着型ロボットであり,歩行速度や踏み出しタイミングのピッチ音を,患者の歩行状態に合わせて任意に調節し歩行練習を実施でき,歩行能力改善の効果が期待されている。
そこで本研究の目的は,Treeを使用した際の一定時間における歩行練習距離の変化と,歩行能力の改善について検証することとした。
【方法】
研究デザインはABデザインによるマルチベースラインデザインとし,通常の歩行練習を行う期間をA期,Treeを使用して歩行練習を行う期間をB期とし,研究期間を15日間とした。対象は当院回復期リハビリテーション病棟に入院する脳卒中片麻痺患者6名とし,A期を3日,6日,9日で各2名を無作為に分け,その後の研究期間をB期の期間とした。除外対象は歩行練習に影響する認知機能の低下を認める者,脳血管疾患以外を原因とする歩行障害を有する者とした。対象者の毎日の理学療法介入の際に,20分間の総歩行距離を計測した。さらに歩行練習後に10m歩行時の速度,歩幅,cadenceを計測した。歩行練習時は担当理学療法士が対象者の疲労状態を考慮し休憩をとった。
以上の結果より,独立変数をTreeによる介入,従属変数を歩行練習中の歩行練習距離,歩行速度,歩幅,cadenceとした。結果の分析にはランダマイゼーション検定を行いた。これは各対象者について各期の平均値差の総和を検定統計量とし,A期とB期をランダムに組み合わせて(6C2*4C2=90通り)検定統計量を算出した。さらに介入結果から得られた値の検定統計量以上の組み合わせ数を,全体の組み合わせ数で除した値を有意確率とした。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
統計処理の結果,歩行練習距離の延長(1/90<0.05),歩行速度の向上(1/90<0.05),歩幅の拡大(1/90<0.05)に有意な差を認めた。cadenceには有意差を認めなかった(6/90>0.05)。
【結論】
脳卒中片麻痺患者に対してTreeを使用することで,Treeの重量によって安定性が高くなることや任意に設定した一定の歩行速度で歩行練習を実施できることが歩行距離延長に繋がったと考えた。さらに歩行速度の向上と歩幅の拡大が見られたことから,より長い距離の歩行練習が歩行能力改善に有効であることが示唆された。今後はTree以外の方法での歩行練習距離を長くする方法と併せて更なる検証を行いたい。