The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-23] ポスター(神経)P23

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-23-4] 多面的な評価,治療介入により重度の姿勢・歩行制御障害が改善した橋出血後の一症例

中山 菜々華, 植田 耕造, 宮下 創, 光吉 俊之 (星ヶ丘医療センター)

Keywords:橋出血, 多面的な評価,治療, 姿勢,歩行制御障害

【はじめに,目的】今回,橋出血後に運動失調,前庭機能障害,近位筋の制御障害などにより重度の姿勢・歩行制御障害を呈した症例を担当し,各時期に多面的な評価,治療介入を行い改善を認めたため報告する。


【方法】症例は40歳代後半の男性,診断名は橋出血,出血範囲は橋の正中から背部にかけて左側に広範囲で右側にも及んだ。発症約2ヶ月後に当院の回復期病棟へ転院。

発症約3ヶ月の初期評価ではSIAS運動は4,感覚は各2,踵-すね試験はSARAで右2,左1,FACTは14,SARAの坐位は1,自覚的視性垂直位(SVV)は-7.7°(-が左側)で自覚的姿勢垂直位は-1.3°。SARAの立位は1,静止立位の閉脚閉眼やマット上閉眼で動揺が大きく左側へバランスを崩した。SARAの歩行は6,FACは1で歩行中に左側へバランスを崩した。

静止立位の閉眼条件時や歩行時に左へバランスを崩し,SVVも左へ傾斜していること,運動,感覚機能がある程度保たれていること,損傷部位を考慮し,初期評価時の左への転倒傾向は前庭機能障害に起因すると推察した。そこで閉眼立位にて右側を陽極とした直流前庭電気刺激(GVS)を主とした介入を2週間実施した。

その結果,静止立位の閉眼条件は保持可能となり,短距離であれば独歩可能,SARA歩行は4,FACは2,TUGT(秒)は16.5,SVVは-6.5°となった。しかし,歩行速度(km/h)は2.80,歩幅(cm)42,歩調(歩/秒)1.9と歩幅は小さく,右下肢の歩幅は一定しなかった。これは右下肢の運動失調の影響が大きいと推察し,体重免荷トレッドミル歩行練習(BWSTT)による介入を2週間実施した。

その結果,TUGTは11.4,歩行速度は3.88,歩幅は57,歩調は1.9と特に歩幅が増加したことで歩行速度の改善を認めた。しかし歩行時の動揺が残存し,膝立ち位などで特に動揺を認めた為,近位筋による制御の改善を目的に膝立ち位などの協調運動練習による介入を2週間実施した。

その結果,TUGTは10.3,歩行速度は4.52,歩幅は67,歩調は1.9と歩幅が増大し,歩行速度は正常値まで改善した。しかし方向転換等で不安定性が残存し,Dynamic Gait Index(DGI)は12点であった為,DGI内の不安定を認める動作課題の練習を集中的に3週間実施した。


【結果】発症5ヶ月の最終評価ではDGIは14点,SARAの歩行は2であり,病棟内移動は独歩自立となった。しかしマット上閉眼条件での立位保持は約10秒でバランスを崩し,屋外歩行には見守りを要した。


【結論】今回,変化していく症例の身体状態に合わせて,指標とする評価項目を変更,選択し,その結果から治療介入の選択を行った。前庭機能障害による姿勢制御障害に対するGVS,運動失調による歩行障害に対するBWSTT,姿勢制御障害に対する協調運動練習,応用歩行練習を適切な時期に行うことで,最終的に屋内独歩自立が可能になったと考える。しかし,マット上閉眼条件での立位保持や屋外歩行などに課題を残した。これらは今回評価,介入しきれていない機能障害が影響したと考えられる。