[P-NV-25-2] 左重度麻痺と左半側空間無視に対して視覚遮断環境下で理学療法を施した一症例
介助量の軽減に伴う離床機会の増加
キーワード:半側空間無視, 視覚, 離床
【はじめに,目的】
医療現場において早期離床の重要性が多数報告されている。しかし,重介助を要する重度麻痺や高次脳機能障害を呈する脳卒中症例は離床機会が減少してしまう傾向にある。先行研究において,半側空間無視症例に対し視覚遮断環境下での介入が有効という報告がある。これは,視覚刺激による注意偏位の助長や半球間抑制の不均衡を是正し,前庭迷路系,体性感覚系を中心とした姿勢定位が行われるためと考えられている。また,麻痺側への感覚入力が病変大脳半球の神経活動を賦活させるという報告もある。今回,重度麻痺と半側空間無視に対して視覚遮断環境下で理学療法介入し,介助量が軽減したことで離床機会の増加に繋がった症例を経験したため報告する。
【方法】
症例は70歳代,右利き手の男性。X年Y月Z日に右頭頂葉皮質下出血を発症。同日,開頭血腫除去術を施行。7ヶ月前に右前頭葉皮質下出血を患われるが後遺症は左手指の巧緻性低下のみ。理学療法経過は,Z+3日目に介入,Z+4日目に離床,Z+8日目に歩行練習。介入当初の理学療法評価は次述の通り。意識:GCS;3-4-4,SIAS:麻痺側運動機能;0-0-0-0-0・感覚機能;1-1-1-0,視空間認知:左半側空間無視。常時,眼球右偏位と頸部・体幹右回旋位を呈し,右空間への探索あり。左空間への探索は促すが困難。座位・立ち上がり時の不安定性に加え,右側への注意偏位のため移乗はFIMにて2点と重介助。ベッド上にて栄養摂取され,離床は理学療法介入時のみだった。急性期における4週間,視覚遮断環境下で病変大脳半球における神経活動の賦活を意識し理学療法を進めた。視覚遮断環境は鉢巻で目を覆うことで作り出し,麻痺側への感覚入力は症例の両手部を介助者が前方正中位で重ねて保持した状態で長下肢装具を使用した歩行練習を行った。
【結果】
上記環境下における4週間後の理学療法評価は次述の通り。意識:GCS;4-4-6,SIAS:麻痺側運動機能;1-1-2-2-0・感覚機能;2-2-1-0,視空間認知:左半側空間無視。眼球と頸部・体幹は正中位保持可能となり右空間への探索は残存するが頻度は減少,左空間への探索も可能となった。座位・立ち上がり時の安定性向上に加え,右側への注意偏位が軽減したことで,移乗はFIMにて3点と介助量が軽減し,離床機会の増加にも繋がった。3食全て車椅子での栄養摂取が可能となり,日中の離床時間も延長された。また,半側空間無視症例では頸部回旋位拘縮を認める報告が多数されているが,本症例は頸部回旋可動域を維持することができた。
【結論】
本症例の急性期理学療法介入においては,介助量の軽減に伴い離床機会が増加した。これは,病態の安定に伴う意識障害や麻痺の改善に加え,視覚遮断環境下で病変大脳半球における神経活動の賦活を意識した理学療法介入が有効だったと考えられる。また,病棟における離床機会の増加は,長期臥床に伴う廃用症候群や意識障害の改善にも寄与したと考えられる。
医療現場において早期離床の重要性が多数報告されている。しかし,重介助を要する重度麻痺や高次脳機能障害を呈する脳卒中症例は離床機会が減少してしまう傾向にある。先行研究において,半側空間無視症例に対し視覚遮断環境下での介入が有効という報告がある。これは,視覚刺激による注意偏位の助長や半球間抑制の不均衡を是正し,前庭迷路系,体性感覚系を中心とした姿勢定位が行われるためと考えられている。また,麻痺側への感覚入力が病変大脳半球の神経活動を賦活させるという報告もある。今回,重度麻痺と半側空間無視に対して視覚遮断環境下で理学療法介入し,介助量が軽減したことで離床機会の増加に繋がった症例を経験したため報告する。
【方法】
症例は70歳代,右利き手の男性。X年Y月Z日に右頭頂葉皮質下出血を発症。同日,開頭血腫除去術を施行。7ヶ月前に右前頭葉皮質下出血を患われるが後遺症は左手指の巧緻性低下のみ。理学療法経過は,Z+3日目に介入,Z+4日目に離床,Z+8日目に歩行練習。介入当初の理学療法評価は次述の通り。意識:GCS;3-4-4,SIAS:麻痺側運動機能;0-0-0-0-0・感覚機能;1-1-1-0,視空間認知:左半側空間無視。常時,眼球右偏位と頸部・体幹右回旋位を呈し,右空間への探索あり。左空間への探索は促すが困難。座位・立ち上がり時の不安定性に加え,右側への注意偏位のため移乗はFIMにて2点と重介助。ベッド上にて栄養摂取され,離床は理学療法介入時のみだった。急性期における4週間,視覚遮断環境下で病変大脳半球における神経活動の賦活を意識し理学療法を進めた。視覚遮断環境は鉢巻で目を覆うことで作り出し,麻痺側への感覚入力は症例の両手部を介助者が前方正中位で重ねて保持した状態で長下肢装具を使用した歩行練習を行った。
【結果】
上記環境下における4週間後の理学療法評価は次述の通り。意識:GCS;4-4-6,SIAS:麻痺側運動機能;1-1-2-2-0・感覚機能;2-2-1-0,視空間認知:左半側空間無視。眼球と頸部・体幹は正中位保持可能となり右空間への探索は残存するが頻度は減少,左空間への探索も可能となった。座位・立ち上がり時の安定性向上に加え,右側への注意偏位が軽減したことで,移乗はFIMにて3点と介助量が軽減し,離床機会の増加にも繋がった。3食全て車椅子での栄養摂取が可能となり,日中の離床時間も延長された。また,半側空間無視症例では頸部回旋位拘縮を認める報告が多数されているが,本症例は頸部回旋可動域を維持することができた。
【結論】
本症例の急性期理学療法介入においては,介助量の軽減に伴い離床機会が増加した。これは,病態の安定に伴う意識障害や麻痺の改善に加え,視覚遮断環境下で病変大脳半球における神経活動の賦活を意識した理学療法介入が有効だったと考えられる。また,病棟における離床機会の増加は,長期臥床に伴う廃用症候群や意識障害の改善にも寄与したと考えられる。