The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-27] ポスター(神経)P27

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-27-1] 反張膝を呈する脳卒中片麻痺患者に対するウォークエイドを用いた麻痺側荷重応答期における足関節背屈筋活動促通に着目した理学療法の検討

池田 裕 (医療法人社団三喜会鶴巻温泉病院リハビリテーション部)

Keywords:反張膝, 片麻痺, 前脛骨筋

【はじめに,目的】

反張膝での歩行は脳卒中片麻痺患者においてよくみられる異常歩行の一つである。この反張膝の原因には前脛骨筋の不十分な筋活動や足関節底屈筋の痙縮が影響し,それに伴うロッカー機能の破綻が関与する。反張膝への対応は短下肢装具により立脚期の下腿前傾を促していくことが多いが,対応しきれていないことも多い。そこで今回反張膝の改善に対して,前脛骨筋の筋活動を促す運動とウォークエイドを併用し,歩行時麻痺側立脚期(荷重応答期)の足関節背屈筋活動促通に着目した理学療法を行いその効果について検証する。


【方法】

2016年8月~2016年9月までに当院回復期リハビリ病棟に入院中の脳卒中片麻痺患者で歩行時麻痺側立脚期に反張膝がみられ,下肢に強い変形がない,下肢Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)III以上,Mini Mental State Examination22点以上の7例を対象とした。介入は前脛骨筋の筋活動を促す運動(1.座位・立位での神経筋促通,2.立ち上がり,3.歩行の部分運動)とウォークエイドによる歩行練習(初期接地から立脚中期での電気刺激)を1日60分,週7回,2週間実施した。初期・最終時にGait Judge Systemによる前脛骨筋活動確認と10m歩行(歩行時間,歩数,反張膝回数),下肢BRS,下腿三頭筋Modified Ashworth Scale(以下MAS),足関節背屈角度(自動・他動)の測定を行い,1回介入毎の前後で10m歩行測定(歩行時間,歩数,反張膝回数)を実施した。初期・最終時における10m歩行測定結果についてはWilcoxonの符号付順位検定を,1回介入毎の10m歩行測定結果についてはt検定を行った。


【結果】

下肢BRSはIII:2人 IV:1人 V:4人がIII:2人 IV:1人 V:2人 VI:2人へ,下腿三頭筋MASは1+:3人 1:1人 0:3人への変化があった。足関節自動背屈は0.4±5.1°から4.3±4.5°へ改善。10m歩行測定では,歩行時間は22.4±10.5秒が16.9±11秒へ,歩数は26.1±5.3歩から23.3±6.7歩へ改善が見られている(P<0.05)。反張膝回数は9.6±6回から5±6.5回へと改善が見られた(P<0.05)。また7人中3人の反張膝が消失した。さらに1回介入毎の前後の歩行時間などや反張膝回数にも改善がみられた(P<0.05)。


【結論】

本研究では麻痺側立脚期の前脛骨筋の機能に着目し集中的な介入を行っていった。介入により反張膝の改善・消失が見られるとともに,歩行時間や歩数など歩行能力の向上や足関節自動背屈範囲の拡大など,歩行能力や足関節機能の向上が認められた。これらの結果から,立脚期における前脛骨筋への集中的介入が下肢BRSIII以上の脳卒中片麻痺患者の反張膝の改善や歩行能力,足関節機能を向上させる可能性が示唆された。今後,さらに症例数を増やして反張膝を改善させていく治療法の選択肢の一つとしていけるかどうか効果を検証していく必要がある。