The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-27] ポスター(神経)P27

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-27-5] 脳卒中片麻痺患者の肩手症候群に伴う上肢機能障害に直線偏光近赤外線の星状神経節近傍照射は有効か?

照井 駿明1, 吉田 英樹2, 前田 貴哉3, 皆方 伸1 (1.秋田県立脳血管研究センター, 2.弘前大学大学院保健学研究科保健学専攻総合リハビリテーション科学領域, 3.弘前記念病院)

Keywords:肩手症候群, 直線偏光近赤外線, 星状神経節

【はじめに,目的】

脳卒中片麻痺(以下,片麻痺)患者では,しばしば肩手症候群(以下,SHS)を認め,この要因の一つに交感神経活動の亢進が考えられている。これに対し,交感神経活動を非侵襲的に抑制することが可能な直線偏光近赤外線の星状神経節近傍照射(以下,LPNR-ISG)が用いられる場合があるものの,十分な検討が行われていないのが現状である。そこで本研究では,SHSに伴う麻痺側上肢機能障害に対するLPNR-ISGの有効性を検討することを目的とした。


【方法】

SHSを有する片麻痺患者13名(平均年齢68.6±9.6歳,罹患期間97.6±23.2日)を対象とし,以下の2実験を行い,実施順序はランダムとし24時間以上の間隔をおいて実施した。〈実験1〉対象者は,自律神経活動安定化のために安静背臥位を15分間保持(以下,馴化時間)後,麻痺側の星状神経節に対するLPNR-ISGを10分間実施した。〈実験2〉対象者は馴化時間終了後,安静背臥位(以下,コントロール)を10分間保持した。実験1の馴化終了時とLPNR-ISG終了後時,さらに実験2の馴化終了時とコントロール終了時に自律神経活動動態の指標となる麻痺側中指皮膚温(以下,皮膚温),麻痺側肩屈曲ROM(以下,肩ROM),NRSを用いた麻痺側肩屈曲運動時の疼痛(以下,肩運動時痛)を評価し,各実験で馴化終了時とLPNR-ISGおよびコントロール終了時の結果をWilcoxonの符号付順位検定を用いて比較した。統計学的分析の有意水準は5%とした。


【結果】

皮膚温については,実験1,実験2共に馴化時間終了後と比較してLPNR-ISG終了後およびコントロール終了後に有意な上昇を認めたが,その程度は実験1でより大きかった(+2.6℃ vs +1.1℃)。肩ROMと肩運動時痛については,実験1では馴化終了時と比較してLPNR-ISG終了後に有意な肩ROM(+10.0°)の拡大と肩運動時痛(-3.0)の減少を認めた。これに対して実験2では,コントロール前後で肩ROM(0.0),肩運動時痛(0.0)ともに明らかな変化を認めなかった。


【結論】

皮膚温については,各実験で有意な上昇を認めたが実験1でその程度がより大きかった理由として,LPNR-ISGにより交感神経活動が抑制された結果,末梢血管の拡張に伴い末梢循環が改善されたことが考えられる。また,実験2でのみ肩ROMや肩運動時痛に有意な変化を認めたことについては,前述のLPNR-ISGによる交感神経活動の抑制に伴い知覚神経の感受性が低下し,疼痛閾値が上昇することにより肩運動時痛が緩和されたことが要因と考えられる。SHSを有する患者では,しばしば麻痺側上肢の疼痛が運動療法の阻害要因となるが,本研究結果からLPNR-ISGにより麻痺側の肩運動時痛が軽減され,ROM運動などの運動療法が容易となり,麻痺側上肢機能改善に寄与し得る可能性が示唆された。