The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-28] ポスター(神経)P28

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-28-3] エスカレーターの利用が自立に至った一症例
~片麻痺者のエスカレーターの利用を想定した動作練習の効果~

下池 まゆみ1, 水田 宗達2, 山﨑 房子1 (1.埼玉県総合リハビリテーションセンター支援部自立訓練担当, 2.埼玉県総合リハビリテーションセンターリハビリテーション部理学療法科)

Keywords:片麻痺, エスカレーター, トレッドミル

【はじめに,目的】

当センター障害者支援施設(以下施設)では,電車やバスを利用した市街地への外出練習を行っており,エスカレーターの利用は実地練習で行うことが多い。その際,自立に至る症例や自立困難な症例を経験する。先行研究ではエスカレーターに必要な身体機能や具体的な介入方法に言及したものは少ない。今回の症例は,初回の外出練習の際にエスカレーターの利用が自立に至らず,理学療法場面でエスカレーターを想定した練習を行うことで,2回目の外出練習では自立に至った。エスカレーター利用の前段階として想定した練習を行うことの重要性を学んだため,その取り組みについて報告する。

【方法】

症例は頭部外傷による右片麻痺,失語症を呈した20歳代男性。発症から2年2か月後に当施設へ入所。初回の外出練習時評価は,右下肢Br.stageIV,表在感覚は重度鈍麻,深部は中等度鈍麻,非麻痺側片脚立位(左)が0秒。高次脳機能は注意・判断,構成力の低下。ADLは整容のみ介助。歩行はT字杖,金属支柱付短下肢装具(以下SLB)にて屋内外自立。10m:6.5秒/12歩。階段昇降はT字杖,SLB利用し二足一段で自立。初回の外出練習ではエスカレーターに乗ることが可能であったが降りる際に要介助であった。理学療法として,左片脚立位,側方重心移動,不安定板上でのバランス,トレッドミル等の練習を週2回,3週間実施した。具体的には,エスカレーターから降りる事を想定しトレッドミル上から前方に置いてある台に移る練習を行った。その際,左下肢への重心移動が十分でなく,右下肢を出すタイミングが遅れていたため,トレッドミルの前段階として左片脚立位練習を行い,可能となったら合図をしたタイミングで片脚立位保持を行った。同様に不安定板でも実施して可能となり,再度トレッドミル上で実施し,床面のスピードを速くしたり,床面が動いたらすぐに降りる動作を反復した。

【結果】

2回目の外出練習時評価は,左片脚立位は10秒,階段昇降は手すり,SLBを利用し一足一段で自立。外出練習では,様々な速さや幅のエスカレーターで実際に行った。誘導や口頭指示が1~2回必要であったが,その後昇降を反復し自立に至った。

【結論】

今回の症例の経験から,バランス練習等を実施後,段階的にプログラムを進め,トレッドミルを利用したように実際に近い環境を作って練習を行うことで初回の外出練習で自立に至る症例が増えると考える。もしくは,エスカレーターの評価としても行う意義はあると考える。

本症例は,外出練習後も単独での外出時にエスカレーターを利用して買い物を楽しんでいる。商業施設や駅によってはエスカレーターが利用できない場合,エレベーターや階段を探さなければならない。エスカレーターの利用は活動性の拡大やQOLの向上にもつながると考える。今後の課題として,エスカレーターの利用の適応や必要な身体機能・能力の検討も必要である。