[P-NV-28-4] 県内理学療法士を対象とした脳卒中理学療法介入内容の分析
~模擬症例に基づくアンケート調査より~
Keywords:脳卒中, 理学療法, 介入方法
【はじめに,目的】
本邦で脳卒中治療ガイドライン(以下GL)が発刊され10年以上が経過し,2015年に2度目の改訂がなされた。「下肢練習の量」を多くすることが推奨されているが,明確な量的基準は示されていない。本研究の目的は,複数の理学療法士(以下RPT)が同一患者を担当したと想定した場合の介入内容を調査することである。
【方法】
県内の脳血管疾患等リハビリテーション料Iを算定する施設に勤務し,急性期または回復期の脳卒中患者に対する理学療法(以下PT)を日常的に実施しているRPTを対象に,模擬症例に基づくPT介入に関するアンケート調査を実施した。調査項目は急性期・回復期それぞれ40分,60分のPT実施における介入内容と実施時間とした。介入内容は,準備的活動(臥位,座位,立位),関節可動域運動,筋力増強運動,起居動作練習,座位練習,移乗練習,立位練習,起立練習,車椅子駆動練習,歩行練習,応用歩行練習,ADL練習,有酸素運動,その他の16項目とした。準備的活動は「その後に行う介入のための準備的介入」と定義した。実施時間は1分単位での記載とした。解析にあたり,急性期,回復期それぞれで支部別(X,Y,Z支部),経験年数別(5年未満,5~9年,10年以上)での介入内容の実施時間を比較した。支部は県内を3つのエリアに分けて組織化した当該県理学療法士会内の組織である。実施時間は中央値(四分位範囲)を算出し,群間の比較はKruskal-Wallis検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
149施設中87施設(58.4%)より急性期228名,回復期283名の回答があり,回答内容に不備があったものを除く急性期205名,回復期277名を最終分析対象とした。平均年齢ならびに経験年数は急性期対象者31.4±7.6歳,8.4±7.4年,回復期対象者29.9±5.9歳,6.1±4.9年であった。急性期の支部別比較は立位,起立,歩行の各練習の実施時間に有意差を認めた。中央値はX,Y,Z支部の順に,立位練習が5(2-6.75),5(5-10),5(5-7.75),起立練習が12.5(5-20),7.5(5-10),5(4.25-5),歩行練習が15(10-20),10(5-15),5(5-10)であった。経験年数別比較は起立練習時間に有意差を認めた。中央値は5年未満,5~9年,10年以上の順に5(5-10),10(5-16.25),5(5-15)であった。回復期の支部別比較は起立練習時間に有意差を認めた。中央値は10(10-15),10(5-10),6(5-10)であった。経験年数別比較はすべての介入内容の実施時間に有意差を認めなかった。
【結論】
同一患者を複数のRPTが担当した場合,抗重力肢位での介入内容と実施時間に有意差が認められたことは非常に興味深い。理由として臨床教育の歴史的経緯が影響しているのではないかと思われる。GL2015年版において「量を多くする」ことが推奨されている立位,起立,歩行などの下肢関連の練習量に差が出たことから,GLがPTの標準化に充分寄与していない可能性が示唆された。
本邦で脳卒中治療ガイドライン(以下GL)が発刊され10年以上が経過し,2015年に2度目の改訂がなされた。「下肢練習の量」を多くすることが推奨されているが,明確な量的基準は示されていない。本研究の目的は,複数の理学療法士(以下RPT)が同一患者を担当したと想定した場合の介入内容を調査することである。
【方法】
県内の脳血管疾患等リハビリテーション料Iを算定する施設に勤務し,急性期または回復期の脳卒中患者に対する理学療法(以下PT)を日常的に実施しているRPTを対象に,模擬症例に基づくPT介入に関するアンケート調査を実施した。調査項目は急性期・回復期それぞれ40分,60分のPT実施における介入内容と実施時間とした。介入内容は,準備的活動(臥位,座位,立位),関節可動域運動,筋力増強運動,起居動作練習,座位練習,移乗練習,立位練習,起立練習,車椅子駆動練習,歩行練習,応用歩行練習,ADL練習,有酸素運動,その他の16項目とした。準備的活動は「その後に行う介入のための準備的介入」と定義した。実施時間は1分単位での記載とした。解析にあたり,急性期,回復期それぞれで支部別(X,Y,Z支部),経験年数別(5年未満,5~9年,10年以上)での介入内容の実施時間を比較した。支部は県内を3つのエリアに分けて組織化した当該県理学療法士会内の組織である。実施時間は中央値(四分位範囲)を算出し,群間の比較はKruskal-Wallis検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
149施設中87施設(58.4%)より急性期228名,回復期283名の回答があり,回答内容に不備があったものを除く急性期205名,回復期277名を最終分析対象とした。平均年齢ならびに経験年数は急性期対象者31.4±7.6歳,8.4±7.4年,回復期対象者29.9±5.9歳,6.1±4.9年であった。急性期の支部別比較は立位,起立,歩行の各練習の実施時間に有意差を認めた。中央値はX,Y,Z支部の順に,立位練習が5(2-6.75),5(5-10),5(5-7.75),起立練習が12.5(5-20),7.5(5-10),5(4.25-5),歩行練習が15(10-20),10(5-15),5(5-10)であった。経験年数別比較は起立練習時間に有意差を認めた。中央値は5年未満,5~9年,10年以上の順に5(5-10),10(5-16.25),5(5-15)であった。回復期の支部別比較は起立練習時間に有意差を認めた。中央値は10(10-15),10(5-10),6(5-10)であった。経験年数別比較はすべての介入内容の実施時間に有意差を認めなかった。
【結論】
同一患者を複数のRPTが担当した場合,抗重力肢位での介入内容と実施時間に有意差が認められたことは非常に興味深い。理由として臨床教育の歴史的経緯が影響しているのではないかと思われる。GL2015年版において「量を多くする」ことが推奨されている立位,起立,歩行などの下肢関連の練習量に差が出たことから,GLがPTの標準化に充分寄与していない可能性が示唆された。