[P-NV-28-5] 要望から見た脳卒中患者のトイレ動作自立に影響する因子の検討
キーワード:脳卒中, トイレ動作, 要望
【はじめに,目的】
回復期リハビリテーションでは,患者・家族の要望(以下Hope)は重要であり,Hopeを考慮したリハビリテーションが必要である。Hopeの多くは自宅復帰,特にトイレ動作に対する要望が多く聞かれる。さらにトイレ動作は自宅復帰に関連するとの報告が多くみられる。先行研究ではトイレ動作に立位バランスが関与すると言われ,Berg Balance scale(以下BBS)での検討はされている。しかし,BBS以外での運動機能の検討は少ない。そこで今回は,多面的な機能障害を評価できるStroke impairment Assessment set(以下SIAS)を含めた側面からトイレ動作自立に影響する要因を検討した。そして,脳卒中患者の自宅復帰時トイレ動作自立を目指す際の理学療法プログラムに活用することを目的とした。
【方法】
平成27年7月1日から平成28年7月31日までの期間に当院を退院した脳卒中患者186名のうち,本人・家族のHopeがトイレ動作獲得である患者49名(男性23名,女性26名,年齢69.3±13.0歳,脳梗塞24名,脳出血21名,くも膜下出血4名,発症からの日数118.5±48.3日,右片麻痺25名,左片麻痺20名,両側片麻痺4名)を対象とした。患者データはカルテより以下の情報を後方視的に調査した。退院時のFunctional independence measure(以下FIM)でトイレ動作得点を従属変数とし,SIAS18項目,BBS14項目を独立変数として,それぞれ重回帰分析(変数増加法)を行った。有意水準は1%とし,決定係数(R2)が0.5以上のものを有用とした。なお,全ての統計処理には,JSTATを使用した。
【結果】
退院時のトイレ動作得点は5.45±1.68点であった。変数増加法の変数選択によって得られた変数は,SIASでは膝関節伸展テスト,下肢の表在感覚,非麻痺側大腿四頭筋筋力,非麻痺側握力であり,BBSでは立位保持,座位保持,移乗,360度回転であった。退院時それぞれ,膝伸展テスト3.37±1.60(r=0.60),下肢の表在感覚2.04±0.95(r=0.57),非麻痺側大腿四頭筋筋力2.65±0.72(r=0.50),非麻痺側握力22.6±9.48kg(r=0.55),立位保持3.20±1.33点(r=0.74),座位保持3.93±0.24点(r=0.52),移乗2.89±1.06点(r=0.75),360度回転1.67±1.55点(r=0.76)であり,これらの関連性が確認された。(R2=0.78,P<0.01)
【結論】
特に相関が高かった要因は立位保持,移乗,360度回転であった。先行研究でも述べている通り,バランス機能がトイレ動作の要因となることが分かった。また,バランス機能のほかに,膝伸展筋である非麻痺側の大腿四頭筋筋力,手すり等を把持するための非麻痺側握力,立位保持に関与する麻痺側下肢の表在感覚機能が影響することが示唆された。
回復期リハビリテーションでは,患者・家族の要望(以下Hope)は重要であり,Hopeを考慮したリハビリテーションが必要である。Hopeの多くは自宅復帰,特にトイレ動作に対する要望が多く聞かれる。さらにトイレ動作は自宅復帰に関連するとの報告が多くみられる。先行研究ではトイレ動作に立位バランスが関与すると言われ,Berg Balance scale(以下BBS)での検討はされている。しかし,BBS以外での運動機能の検討は少ない。そこで今回は,多面的な機能障害を評価できるStroke impairment Assessment set(以下SIAS)を含めた側面からトイレ動作自立に影響する要因を検討した。そして,脳卒中患者の自宅復帰時トイレ動作自立を目指す際の理学療法プログラムに活用することを目的とした。
【方法】
平成27年7月1日から平成28年7月31日までの期間に当院を退院した脳卒中患者186名のうち,本人・家族のHopeがトイレ動作獲得である患者49名(男性23名,女性26名,年齢69.3±13.0歳,脳梗塞24名,脳出血21名,くも膜下出血4名,発症からの日数118.5±48.3日,右片麻痺25名,左片麻痺20名,両側片麻痺4名)を対象とした。患者データはカルテより以下の情報を後方視的に調査した。退院時のFunctional independence measure(以下FIM)でトイレ動作得点を従属変数とし,SIAS18項目,BBS14項目を独立変数として,それぞれ重回帰分析(変数増加法)を行った。有意水準は1%とし,決定係数(R2)が0.5以上のものを有用とした。なお,全ての統計処理には,JSTATを使用した。
【結果】
退院時のトイレ動作得点は5.45±1.68点であった。変数増加法の変数選択によって得られた変数は,SIASでは膝関節伸展テスト,下肢の表在感覚,非麻痺側大腿四頭筋筋力,非麻痺側握力であり,BBSでは立位保持,座位保持,移乗,360度回転であった。退院時それぞれ,膝伸展テスト3.37±1.60(r=0.60),下肢の表在感覚2.04±0.95(r=0.57),非麻痺側大腿四頭筋筋力2.65±0.72(r=0.50),非麻痺側握力22.6±9.48kg(r=0.55),立位保持3.20±1.33点(r=0.74),座位保持3.93±0.24点(r=0.52),移乗2.89±1.06点(r=0.75),360度回転1.67±1.55点(r=0.76)であり,これらの関連性が確認された。(R2=0.78,P<0.01)
【結論】
特に相関が高かった要因は立位保持,移乗,360度回転であった。先行研究でも述べている通り,バランス機能がトイレ動作の要因となることが分かった。また,バランス機能のほかに,膝伸展筋である非麻痺側の大腿四頭筋筋力,手すり等を把持するための非麻痺側握力,立位保持に関与する麻痺側下肢の表在感覚機能が影響することが示唆された。