[P-NV-29-3] 脳卒中患者に対するAction Observation Therapyの介入効果について
―回復期リハビリテーション病棟における介入―
Keywords:運動観察治療, 脳卒中, 麻痺側運動機能
【はじめに,目的】
近年,運動イメージを活用した理学療法(PT)として運動観察治療(Action Observation Therapy:AOT)が提案されている。AOTのシステマティックレビュー(Elisabett, 2015)では上肢や歩行への介入は多いが,下肢への介入はない。本研究では,歩行遊脚期に必要な股関節屈曲,膝関節伸展,足関節背屈のAOTによる,各筋力や歩行能力,運動イメージ能力の効果について検証した。
【方法】
対象は回復期病棟に入院中の脳卒中患者7名(男:4名,女:3名,平均年齢58.1±16.7歳)であった。本研究はABデザインを用い,A:ベースライン(通常PTを10日間),B:AOT介入期(通常PT+AOTを30日間)の計40日間とした。B期では,股関節屈曲AOT,膝関節伸展AOT,足関節背屈AOTの順に実施し,各10日間同一のAOTを実施した。AOTは健常者の運動を編集した動画を用いて,15分/日の自主練習とした。メインアウトカムは5m歩行速度とWisconsin Gait Scale(WGS)とした。サブアウトカムはHand Held Dynamometer(HHD:Nm/kg)にて麻痺側股関節屈曲,膝関節伸展,足関節背屈運動の筋力と関節角度をActive-ROM(AROM:°)にて計測した。また運動イメージ能力として足部Mental Rotation(足部MR:sec)の反応時間を計測した。各項目の計測は10日毎に行い,計5回実施した(評価1~5)。統計は解析ソフトR2.8.1に基づく改変Rコマンダーを使用して,各変数を反復測定分散分析で解析し,有意水準は5%とした。
【結果】
評価1と評価5の結果を平均値にて記載する。5m歩行速度は53.5±38.1→24.3±13.8sec,WGSは30±5.3→23.1±4.9点,筋力は股関節屈曲が0.46±0.33→0.84±0.36Nm/kg,膝関節伸展が0.49±0.36→0.69±0.37Nm/kg,足関節背屈が0.14±0.11→0.24±0.15Nm/kg,AROMは股関節屈曲が84.9±15.3→106±26.3°,膝関節伸展が-29.4±10°→-18.2±8.3°,足関節背屈が-11.7±4.58→-5.3±4.23°,足部MRは70.19±38.9→44.3±21.7secであった。評価1と5の間では全ての変数でp<0.05の有意な改善を認めた。更に各評価間の分析より,評価2と3(股関節屈曲AOT期)ではWGS・HHD(股関節屈曲),評価3と4(膝伸展AOT期)ではAROM(膝関節伸展)の各変数にp<0.05の有意な改善を認めた。なお通常PTの前後である評価1と2(A期)では全て有意差を認めなかった。
【結論】
本研究の結果よりA期と比較し,B期での各評価項目の有意な改善を認めたため,脳卒中患者に対するAOTの介入効果があると考えられた。特に,股関節屈曲・膝関節伸展AOTは10日間の実施だけでも麻痺側下肢筋力を向上させる結果となった。更に,歩行の質的評価となるWGSにおいても評価2と3の間で有意な改善を認めたことから,股関節屈曲AOTは下肢挙上機能だけでなく歩行能力の改善にも寄与していることが示唆された。AOTは簡単な動画編集で作成でき,車椅子座位にて実施できる。麻痺側運動機能の改善を目的とした自主練習として効果的な介入であると言える。
近年,運動イメージを活用した理学療法(PT)として運動観察治療(Action Observation Therapy:AOT)が提案されている。AOTのシステマティックレビュー(Elisabett, 2015)では上肢や歩行への介入は多いが,下肢への介入はない。本研究では,歩行遊脚期に必要な股関節屈曲,膝関節伸展,足関節背屈のAOTによる,各筋力や歩行能力,運動イメージ能力の効果について検証した。
【方法】
対象は回復期病棟に入院中の脳卒中患者7名(男:4名,女:3名,平均年齢58.1±16.7歳)であった。本研究はABデザインを用い,A:ベースライン(通常PTを10日間),B:AOT介入期(通常PT+AOTを30日間)の計40日間とした。B期では,股関節屈曲AOT,膝関節伸展AOT,足関節背屈AOTの順に実施し,各10日間同一のAOTを実施した。AOTは健常者の運動を編集した動画を用いて,15分/日の自主練習とした。メインアウトカムは5m歩行速度とWisconsin Gait Scale(WGS)とした。サブアウトカムはHand Held Dynamometer(HHD:Nm/kg)にて麻痺側股関節屈曲,膝関節伸展,足関節背屈運動の筋力と関節角度をActive-ROM(AROM:°)にて計測した。また運動イメージ能力として足部Mental Rotation(足部MR:sec)の反応時間を計測した。各項目の計測は10日毎に行い,計5回実施した(評価1~5)。統計は解析ソフトR2.8.1に基づく改変Rコマンダーを使用して,各変数を反復測定分散分析で解析し,有意水準は5%とした。
【結果】
評価1と評価5の結果を平均値にて記載する。5m歩行速度は53.5±38.1→24.3±13.8sec,WGSは30±5.3→23.1±4.9点,筋力は股関節屈曲が0.46±0.33→0.84±0.36Nm/kg,膝関節伸展が0.49±0.36→0.69±0.37Nm/kg,足関節背屈が0.14±0.11→0.24±0.15Nm/kg,AROMは股関節屈曲が84.9±15.3→106±26.3°,膝関節伸展が-29.4±10°→-18.2±8.3°,足関節背屈が-11.7±4.58→-5.3±4.23°,足部MRは70.19±38.9→44.3±21.7secであった。評価1と5の間では全ての変数でp<0.05の有意な改善を認めた。更に各評価間の分析より,評価2と3(股関節屈曲AOT期)ではWGS・HHD(股関節屈曲),評価3と4(膝伸展AOT期)ではAROM(膝関節伸展)の各変数にp<0.05の有意な改善を認めた。なお通常PTの前後である評価1と2(A期)では全て有意差を認めなかった。
【結論】
本研究の結果よりA期と比較し,B期での各評価項目の有意な改善を認めたため,脳卒中患者に対するAOTの介入効果があると考えられた。特に,股関節屈曲・膝関節伸展AOTは10日間の実施だけでも麻痺側下肢筋力を向上させる結果となった。更に,歩行の質的評価となるWGSにおいても評価2と3の間で有意な改善を認めたことから,股関節屈曲AOTは下肢挙上機能だけでなく歩行能力の改善にも寄与していることが示唆された。AOTは簡単な動画編集で作成でき,車椅子座位にて実施できる。麻痺側運動機能の改善を目的とした自主練習として効果的な介入であると言える。