第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-29] ポスター(神経)P29

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-29-5] 脳卒中片麻痺者の非麻痺側を含めた立位予測的姿勢制御に関する検討

増田 知子, 岩崎 朋史, 伊藤 直城, 吉尾 雅春 (千里リハビリテーション病院)

キーワード:脳卒中片麻痺, 姿勢制御, 非麻痺側

【はじめに】我々は,脳卒中片麻痺者の立位姿勢制御において非麻痺側方向にも制限を生じる場合があることを確認し,両側あるいは同側性支配の下行路の障害の影響が示唆されることを第51回の本大会で報告した。そこで今回,よりそれらの影響が観察されやすいと推測される立位での予測的姿勢制御に関して,片麻痺者の麻痺側・非麻痺側と健常者の特性を比較検討した。




【方法】健常成人8名{男4・女4名,平均年齢44.4(27~56)歳:以下健常群},当院入院中の初発脳卒中片麻痺者9名{男7・女2名,右麻痺8・左麻痺1名,平均年齢56.6(43~83)歳:以下片麻痺群}を対象とした。片麻痺群は,裸足または下肢装具装着下で上肢の支持なく立位保持が可能であった。対象者は靴あるいは下肢装具を装着して重心動揺計(Panasonic社製デジタルミラー)上で立位を保持し,前方に設置した高さ10cmの台上へ片足を乗せる動作を行い,その間の矩形動揺面積を計測した。左右各2回ずつとなるよう検者がランダムに指示し,各対象者は計4試行実施した。試行中は両側の肩峰,上前腸骨棘,足関節左右径の中央にマーカーを付け,前額面からデジタルビデオ撮影を行った。得られた動画像から,各試行において台上に乗せる足が離地する直前を静止画化し取り出した。それらの画像を基に,画像処理ソフトImageJを用いて1)支持側の肩峰-上前腸骨棘-足関節中央の成す角度,2)上前腸骨棘-足関節中央を結ぶ線と垂線の成す角度を計測した。矩形動揺面積の前後・左右成分,計測角度について,t検定を用いて有意水準5%で分析した。




【結果】矩形動揺面積の前後成分平均値(cm)は健常群10.0±1.6,片麻痺群15.9±6.2,左右成分平均値(cm)は健常群26.9±1.4,片麻痺群25.6±3.9であり,有意差を認めなかった。計測角度1)の平均値(°)は健常群右180.8±7.2,左180.8±3.9,片麻痺群麻痺側183.5±5.0,非麻痺側182.0±7.1であり,片麻痺群の麻痺側支持が健常群より有意に大きかった。2)の平均値(°)は健常群右4.5±1.9,左7.1±1.6,片麻痺群麻痺側7.7±2.4,非麻痺側9.1±1.7であり,片麻痺群の非麻痺側支持が健常群より,片麻痺群の麻痺側より非麻痺側が有意に大きかった。片麻痺者は麻痺側支持時に骨盤を移動させず体幹を側屈させる傾向があった。対して非麻痺側支持時には,麻痺側挙上のため健常者よりも骨盤帯を大きく移動させていることが示唆された。




【結論】立位での予測的姿勢制御において,健常者と片麻痺者で重心移動の範囲に明らかな差を生じなくても運動の方略には違いがある。また,非麻痺側の骨盤帯固定性が不十分な脳卒中者は,骨盤帯の移動を必要としない別の方略を選択することも推測され,それは同側性支配経路の障害を疑う兆候となる可能性がある。