第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-30] ポスター(神経)P30

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-30-1] 脳腫瘍術後患者における腫瘍悪性度と関連する身体機能因子

眞鍋 朋誉1, 栢本 あずさ1, 佐藤 克成1, 鄭 伃廷1, 高木 大地1, 柴田 篤志1, 森 友洋1, 岡田 貴士2, 夏目 敦至3, 門野 泉2 (1.名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション科, 3.名古屋大学医学部附属病院脳神経外科)

キーワード:脳腫瘍, 手術, 予後

【はじめに,目的】

世界保健機関は,脳腫瘍患者を悪性度によりグレード1から4に分類しており,グレード4が最も悪性度が高く,余命も短い。脳腫瘍患者に対して,当院では腫瘍摘出術を受ける患者は,手術に加え,放射線療法,化学療法,リハビリテーションを必要に応じて実施している。脳腫瘍は進行性であり,放射線療法や化学療法の影響を受けた状態でリハビリテーションを進めるため,身体機能の予後予測は非常に難しい。そこで,本研究の目的は,脳腫瘍術後患者の腫瘍悪性度と術後身体機能の関連性を調査し,その特徴を検討することとした。

【方法】

2016年1月から9月に当院にて外科的治療および理学療法を行った脳腫瘍患者のうち,評価が可能であった27例を対象とし,診療記録から後方視的に調査した。調査項目は,年齢,在院日数,リハビリテーション介入日数,脳腫瘍の病理学的診断と腫瘍悪性度,脳腫瘍の部位,手術時間,放射線および化学療法の有無,入院前のKarnofsky Performance Scale(以下,KPS),術後1週と退院時に評価した麻痺側下肢のBrunnstrom recovery stage(以下,BS),非麻痺側握力,非麻痺側膝関節伸展筋力,感覚障害の有無,Barthel Index,6分間歩行距離,不安抑うつ尺度(Hospital Anxiety and Depression scale),KPSとした。統計学的解析は,Spearmanの順位相関係数を用いて腫瘍悪性度と相関する因子を抽出し,それらをステップワイズ法にて重回帰分析を行った。なお,有意水準を5%未満とした。

【結果】

対象者の年齢は54.9±15.7歳,平均在院日数は45.0日であり,放射線療法を受けた患者が5例,化学療法を受けた患者が7例であった。腫瘍の内訳は神経膠腫が9例,星状細胞腫が5例,乏突起膠腫2例,上衣腫1例,髄膜腫4例,神経鞘腫3例,その他3例であった。腫瘍の悪性度はグレード1が5例,グレード2が6例,グレード3が2例,グレード4が9例,その他が4例であった。腫瘍悪性度と相関関係を示したものは,腫瘍の部位(r=-.528,p=0.01),術後1週BS(r=-.618,p=0.00),KPS(r=-.611,p=0.00),非麻痺側握力(r=.458,p=0.04),感覚障害(r=.597,p=0.01),退院時BS(r=-.707,p=0.00),非麻痺側握力(r=.461,p=0.05)であった。手術時間は相関をみとめなかった。相関をみとめた因子をステップワイズ法にて重回帰分析の独立因子に投入し,腫瘍悪性度を従属因子とすると,退院時BS(p=0.00,β=-.685,R2=.469)のみで寄与率が優位であった。

【結論】

腫瘍悪性度の高い脳腫瘍術後患者は,術後早期より低身体機能であり,特に退院時まで麻痺側下肢の機能回復が乏しいことが示唆された。これにより,腫瘍悪性度の高い患者に対しては,身体機能の回復のみでなく,環境設定や装具の利用などを積極的に考慮した包括的なゴール設定と理学療法介入が必要であると考えられる。