[P-NV-30-4] 化学療法を受けたがん患者のADL低下を来たす因子の検討
Keywords:がんのリハビリテーション, ADL低下, 入院からリハ介入までの日数
【はじめに】
がん患者は原疾患の症状,化学療法や放射線治療に伴う副作用,加えて入院に伴う廃用によりADL低下が引き起こされる。化学療法や放射線治療後に身体機能が低下するため,がんのリハビリテーション(以下,がんリハ)では,筋力運動や有酸素運動が強く勧められ,当院でもがんリハを行っている。しかし,ADLを低下させる因子については多数あるが,各因子の寄与度は不明である。本研究では,当院で化学療法を受けたがん患者のリハ介入時のADL低下に,どのような因子が影響しているのかを検討した。
【方法】
平成26年11月から平成28年3月の間に,化学療法を目的に入院し,がんリハ算定でリハを実施した者を対象として,カルテより後方視的に調査した。除外基準は,認知機能低下か,他疾患の影響により評価困難な者とした。調査項目は,性別,年齢,疾患名,がんの罹病期間,入院からリハ開始までの化学療法施行回数,リハ介入時Barthel index(以下,BI),入院日からリハ開始までの日数(以下,リハ開始日数),BMI,握力,Hand held Dynamometerによる膝伸展筋力,周径(上腕,下腿),M.D. Anderson Symptom Inventory(痛み,ストレスなどの13項目についての症状評価)とした。介入時BIと調査項目の関連性を,相関分析(Spearmanの順位相関)を用いて検討し,有意な相関を認めた項目を独立変数,介入時BIを従属変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。なお,統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者は48名(男性20名,女性28名),年齢68.1±10.6歳,BMI 21.2±4.1,リハ介入時BI 78.6±24.0点,疾患は,白血病30%,悪性リンパ腫16%,肺がん13%,食道がん10%,その他31%であった。相関分析の結果,介入時BIと有意な相関を認めたのは,リハ開始日数(rs=-0.40),握力(rs=0.33),膝伸展筋力(rs=0.30),倦怠感(rs=-0.31),ストレス(rs=-0.39)の5項目であった。重回帰分析の結果,リハ開始日数(β=-0.36)とストレス(β=-0.32)が有意な変数として抽出され,寄与率はR2=0.26であった。
【結論】
今回の結果より,BIが低い患者のストレスは高い傾向にあることが示唆された。運動によるストレス低減効果は先行研究で多く報告されており,化学療法を受けたがん患者に対するリハは,ADLのみならずストレスにも寄与できる可能性がある。入院からリハ開始までの日数を要した患者は,BIが低いことから,その遅延の原因をすみやかに解決し,入院後早期から廃用予防のリハを行っていくことの重要性が示唆された。今後は,院内での啓発活動や連携の強化を図り,早期リハの強化を行っていく必要がある。限界として,リハ対象者に限ったため,化学療法を受けた全がん患者が対象となっておらず,選択バイアスが生じていることや,重回帰分析の結果より抽出された寄与率が低いことがあり,今後はより影響する因子を再調査していく必要性がある。
がん患者は原疾患の症状,化学療法や放射線治療に伴う副作用,加えて入院に伴う廃用によりADL低下が引き起こされる。化学療法や放射線治療後に身体機能が低下するため,がんのリハビリテーション(以下,がんリハ)では,筋力運動や有酸素運動が強く勧められ,当院でもがんリハを行っている。しかし,ADLを低下させる因子については多数あるが,各因子の寄与度は不明である。本研究では,当院で化学療法を受けたがん患者のリハ介入時のADL低下に,どのような因子が影響しているのかを検討した。
【方法】
平成26年11月から平成28年3月の間に,化学療法を目的に入院し,がんリハ算定でリハを実施した者を対象として,カルテより後方視的に調査した。除外基準は,認知機能低下か,他疾患の影響により評価困難な者とした。調査項目は,性別,年齢,疾患名,がんの罹病期間,入院からリハ開始までの化学療法施行回数,リハ介入時Barthel index(以下,BI),入院日からリハ開始までの日数(以下,リハ開始日数),BMI,握力,Hand held Dynamometerによる膝伸展筋力,周径(上腕,下腿),M.D. Anderson Symptom Inventory(痛み,ストレスなどの13項目についての症状評価)とした。介入時BIと調査項目の関連性を,相関分析(Spearmanの順位相関)を用いて検討し,有意な相関を認めた項目を独立変数,介入時BIを従属変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。なお,統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者は48名(男性20名,女性28名),年齢68.1±10.6歳,BMI 21.2±4.1,リハ介入時BI 78.6±24.0点,疾患は,白血病30%,悪性リンパ腫16%,肺がん13%,食道がん10%,その他31%であった。相関分析の結果,介入時BIと有意な相関を認めたのは,リハ開始日数(rs=-0.40),握力(rs=0.33),膝伸展筋力(rs=0.30),倦怠感(rs=-0.31),ストレス(rs=-0.39)の5項目であった。重回帰分析の結果,リハ開始日数(β=-0.36)とストレス(β=-0.32)が有意な変数として抽出され,寄与率はR2=0.26であった。
【結論】
今回の結果より,BIが低い患者のストレスは高い傾向にあることが示唆された。運動によるストレス低減効果は先行研究で多く報告されており,化学療法を受けたがん患者に対するリハは,ADLのみならずストレスにも寄与できる可能性がある。入院からリハ開始までの日数を要した患者は,BIが低いことから,その遅延の原因をすみやかに解決し,入院後早期から廃用予防のリハを行っていくことの重要性が示唆された。今後は,院内での啓発活動や連携の強化を図り,早期リハの強化を行っていく必要がある。限界として,リハ対象者に限ったため,化学療法を受けた全がん患者が対象となっておらず,選択バイアスが生じていることや,重回帰分析の結果より抽出された寄与率が低いことがあり,今後はより影響する因子を再調査していく必要性がある。