第52回日本理学療法学術大会

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日本呼吸理学療法学会 » ポスター発表

[P-RS-01] ポスター(呼吸)P01

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本呼吸理学療法学会

[P-RS-01-3] 胸腔鏡下肺切除術周術期患者における身体活動量の推移と予測因子

高橋 佑太1, 岡村 大介1, 小林 令奈1, 玉置 桜2, 加藤 菜々実1, 今野 香純1, 吉安 展将3, 石川 祐也3, 分島 良3, 小島 史嗣3, 板東 徹3 (1.聖路加国際病院リハビリテーション科, 2.聖路加国際病院看護部, 3.聖路加国際病院呼吸器外科)

キーワード:身体活動量, 周術期, 肺切除術

【はじめに,目的】近年,癌患者の身体活動量とQOLや生命予後との関連が明らかとなり,癌患者においても運動の必要性が示されている。一方で,肺癌に対する開胸手術後の身体活動量は術前と比べて低下し,特に片肺全摘などの高侵襲な手術では顕著であると報告されている。しかし,近年では胸腔鏡手術や縮小手術など低侵襲化が進み,術後の身体活動量は維持される可能性があるが,低侵襲手術例を対象とした先行研究はみられない。さらには,肺癌患者の身体活動量は,治療開始前の時点で既に低下しているとの報告もあり,術前から活動性低下をもたらす因子を有していることが考えられる。そこで本研究の目的は,胸腔鏡下肺切除術周術期患者における身体活動量の実態を把握するとともに,術後身体活動量を予測し得る術前因子を検討することとした。【方法】2016年2月から8月に肺腫瘍に対して胸腔鏡下肺切除術を施行された患者37例(男性24例,女性13例,年齢69.7±8.4歳)を対象として,前向き観察研究を実施した。評価項目は,3軸加速度計付き歩数計(メディウォーク,テルモ)による身体活動量評価に加えて,関連因子として6分間歩行距離および健康関連QOLを術前,入院中,退院後1週および退院後2ヶ月時点で評価した。身体活動量の測定期間は,入院前後は3日以上,入院中は手術日と退院日を除く全日とし,起床から就寝までを測定した。身体活動量の指標には,一日当たりの歩数を採用し,術前値に対する術後各時期の身体活動量の比を回復率(=術後値/術前値×100,%)として算出した。統計学的解析には,各時期の評価指標の継時的変化の検討に混合効果モデル,身体活動量の回復率の予測因子の検討にSpearmanの順位相関係数を用いた。【結果】術後身体活動量,6分間歩行距離および健康関連QOLは,術前と比べて,入院中および退院後1週まで有意に低値を示したが(それぞれ,p<0.01),退院後2ヶ月では有意差を認めなかった。また,各時期における身体活動量の回復率は入院中で27.4%,退院後1週で66.8%,退院後2ヶ月で99.1%と継時的に改善を認めた。さらに,退院後1週までの回復率は年齢,術前6分間歩行距離および退院後2ヶ月までの回復率と有意な相関を認めた(それぞれ,r=-0.45,0.43,0.41,p<0.05)。一方で,退院後2ヶ月までの回復率はいずれの術前因子とも相関を認めなかった。【結論】胸腔鏡下肺切除術後患者の身体活動量は術後一時的に低下するものの,退院後2ヶ月で術前値に回復することが明らかとなった。また,術後の運動耐容能と健康関連QOLは,身体活動量の回復と同様の推移を辿ったことから,術後運動耐容能の低下が身体活動量制限を招き,QOL低下につながったと推察された。さらに,術後早期の身体活動量の回復率は,高齢かつ術前の運動耐容能が低いほど不良であり,術後早期の回復率自体がその後の長期的な身体活動量回復を予測する因子になり得ることが示された。