[P-RS-02-3] 高齢ならびにCOPD合併肺癌患者に対する肺葉切除術後の運動耐容能の推移
Keywords:原発性肺癌, 周術期リハ, 6分間歩行距離
【はじめに,目的】
原発性肺癌患者の外科的治療に際して,周術期呼吸リハビリテーション(リハ)は術後呼吸器合併症を予防するうえで推奨されている。がん患者に対するリハでは,短期的・長期的な生命予後の把握と治療経過に伴うADL・QOLの予測が必要とされるが,術後遠隔期に及ぶ身体機能に関する報告は少ない。
本研究では,周術期にリハを施行した高齢ならびにCOPD合併肺癌患者に対し術後外来で継続的にリハを施行し,術後遠隔期の運動耐容能の推移を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,原発性肺癌の診断で,術前より当院の周術期リハプロトコールを適用し,肺葉切除術を施行した80歳以上またはCOPDII期以降の75症例のうち,術後外来でのリハを継続し得た27症例とした。退院後は術後1,3,6ヵ月に外来で運動療法ならびに運動指導を行うとともに再評価を行った。評価項目は,運動耐容能の指標として6分間歩行距離(6MWD)と,術後6MWD/術前6MWD×100で算出した術後6MWD変化率(⊿%6MWD)を算出した。術前呼吸機能はVC,%VC,FEV1.0,%FEV1.0,FVC,PEFを測定した。術後1ヶ月時点における⊿%6MWD平均値を算出し,これを基準に平均値以上を維持群,平均値未満を低下群として術前の呼吸機能との分析を行った。統計学的分析には,SPSS ver.17を用い,測定値は平均±SDで示した。2群間における各評価項目の比較はMann-WhitneyのU検定を,群内での各評価項目の関係をSpearmanの順位相関係数を適用し,有意水準を5%とした。
【結果】
対象27症例における6MWDは術前388.5±87.6m,術後1ヵ月343.5±105.8m,3ヵ月375.7±89.3m,6ヵ月373.1±101.0mで,術後1ヵ月⊿%6MWDは平均87.6±18.7%,3ヵ月97.6±16.0%,6ヵ月96.9±20.2%であった。維持群の内訳は,18例,男性13人,女性5人,年齢74.9±9.7歳,低下群は9例,男性6人,女性3人,年齢70.7±10.4歳で,2群間の比較では,術後1か月6MWD(p<0.05),術後3か月,6か月⊿%6MWD(ともにp<0.01),術前%VC,%FEV1.0(ともにp<0.05)において有意な差を認めた。群内での関連性においては,維持群,低下群とも,術後3ヶ月と6か月の⊿%6MWD間(r=0.813,p<0.01,r=0.912,p<0.01)に相関を認め,低下群でのみ術後3か月6MWDと術前%FEV1.0(r=0.882,p<0.01),術後6か月6MWDと術前%FEV1.0(r=0.879,p<0.01)で有意な相関を認めた。
【結論】
肺葉切除術を施行された高齢およびCOPD合併肺癌患者において,術前%FEV1.0および1か月での6MWD改善率が一定値以下の場合,術後遠隔期において十分な運動耐容能改善が得られない可能性が示唆された。がん患者の運動耐容能低下はADL,QOL低下を招く可能性が考えられ,周術期以降も継続したリハならびに評価が必要と考えられる。
原発性肺癌患者の外科的治療に際して,周術期呼吸リハビリテーション(リハ)は術後呼吸器合併症を予防するうえで推奨されている。がん患者に対するリハでは,短期的・長期的な生命予後の把握と治療経過に伴うADL・QOLの予測が必要とされるが,術後遠隔期に及ぶ身体機能に関する報告は少ない。
本研究では,周術期にリハを施行した高齢ならびにCOPD合併肺癌患者に対し術後外来で継続的にリハを施行し,術後遠隔期の運動耐容能の推移を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,原発性肺癌の診断で,術前より当院の周術期リハプロトコールを適用し,肺葉切除術を施行した80歳以上またはCOPDII期以降の75症例のうち,術後外来でのリハを継続し得た27症例とした。退院後は術後1,3,6ヵ月に外来で運動療法ならびに運動指導を行うとともに再評価を行った。評価項目は,運動耐容能の指標として6分間歩行距離(6MWD)と,術後6MWD/術前6MWD×100で算出した術後6MWD変化率(⊿%6MWD)を算出した。術前呼吸機能はVC,%VC,FEV1.0,%FEV1.0,FVC,PEFを測定した。術後1ヶ月時点における⊿%6MWD平均値を算出し,これを基準に平均値以上を維持群,平均値未満を低下群として術前の呼吸機能との分析を行った。統計学的分析には,SPSS ver.17を用い,測定値は平均±SDで示した。2群間における各評価項目の比較はMann-WhitneyのU検定を,群内での各評価項目の関係をSpearmanの順位相関係数を適用し,有意水準を5%とした。
【結果】
対象27症例における6MWDは術前388.5±87.6m,術後1ヵ月343.5±105.8m,3ヵ月375.7±89.3m,6ヵ月373.1±101.0mで,術後1ヵ月⊿%6MWDは平均87.6±18.7%,3ヵ月97.6±16.0%,6ヵ月96.9±20.2%であった。維持群の内訳は,18例,男性13人,女性5人,年齢74.9±9.7歳,低下群は9例,男性6人,女性3人,年齢70.7±10.4歳で,2群間の比較では,術後1か月6MWD(p<0.05),術後3か月,6か月⊿%6MWD(ともにp<0.01),術前%VC,%FEV1.0(ともにp<0.05)において有意な差を認めた。群内での関連性においては,維持群,低下群とも,術後3ヶ月と6か月の⊿%6MWD間(r=0.813,p<0.01,r=0.912,p<0.01)に相関を認め,低下群でのみ術後3か月6MWDと術前%FEV1.0(r=0.882,p<0.01),術後6か月6MWDと術前%FEV1.0(r=0.879,p<0.01)で有意な相関を認めた。
【結論】
肺葉切除術を施行された高齢およびCOPD合併肺癌患者において,術前%FEV1.0および1か月での6MWD改善率が一定値以下の場合,術後遠隔期において十分な運動耐容能改善が得られない可能性が示唆された。がん患者の運動耐容能低下はADL,QOL低下を招く可能性が考えられ,周術期以降も継続したリハならびに評価が必要と考えられる。