[P-RS-03-1] 肝胆膵領域癌患者における術前骨格筋量評価の有用性
キーワード:肝胆膵領域癌, 術前骨格筋量, 術後合併症
【はじめに】がんのリハビリテーション(以下,リハ)ガイドラインにおいて,開腹術施行予定患者に対する術前呼吸リハは術後呼吸器合併症減少(GradeB),術後入院期間短縮(GradeB)に繋がると示されている。現状での術前リハは呼吸練習が主体であるが,がん患者における身体運動機能改善は,術後合併症減少・日常生活動作能力改善・在院日数短縮などに寄与すると言われている。中でも術前骨格筋量が重要な位置を占め,生体肝移植や胃癌患者における予後・術後合併症発症の予測に有用と報告されている。また,筋肉量は運動機能を規定する要因であり,術前骨格筋量の測定は重要と言えるが,開腹術,特に高侵襲手術である肝胆膵領域癌患者における術前骨格筋量評価に関する報告は散見する程度である。【目的】肝胆膵領域癌患者における術前骨格筋量評価の有用性を検討すること。【対象/方法】対象は平成27年10月~平成28年9月までに当院にて肝胆膵領域癌に対して開腹手術を施行した25例。(男女比17/8例)。術式は亜全胃温存膵頭十二指腸切除術12例,膵体尾部切除術2例,肝左葉切除術2例(うち胆道再建1例),肝右葉切除術2例,肝左三区域切除術(動脈合併切除再建)1例,肝後区域切除術2例,肝部分切除術2例,拡大胆嚢摘出術2例であった。入院時にInBodyS10Ⓡにて骨格筋量を測定。標準値以上を正常群,標準値未満を低骨格筋量群に分類し,術前患者因子(年齢,体重,BMI,体脂肪量,呼吸機能,血液検査,握力など),手術因子(手術時間,麻酔時間,出血量など),術後因子(術後合併症,歩行開始病日,絶食期間,術後在院日数など)において比較・検討した。【結果】正常群18名/低骨格筋量群7名(平均年齢66.6±9.9/71.0±3.4歳)。術前ADLは全例で自立し,PS0 23例/PS1 2例。術前体重(正常群vs低骨格筋量群:62.9±9.6 vs 52.6±12.2kg),BMI(25.2±4.4 vs 20.8±3.6kg/m2)において低骨格筋量群で有意に低値を示した(p<0.05)。術前呼吸機能・握力・手術/麻酔時間に有意差は認めなかった。術後合併症(Clavien-Dindo分類:II以上)は,低骨格筋量群では3/7例(42%)に認め,内訳はGradeII 3例(門脈血栓2例/心房細動1例)であった。正常群では4/18例(22%)に認め,GradeII 3例(胸腹水3例),GradeIIIa 1例(創し開)であり,低骨格筋量群で有意に術後合併症発症率は増加した(p<0.05)。歩行開始病日・術後絶食期間・術後在院日数には有意差を認めなかった。【結論】肝胆膵領域癌患者における術前身体運動機能評価としての骨格筋量測定は術後合併症発症予測に有用であると言える。今後は,術後合併症予防のためにも従来の術前呼吸練習に加え骨格筋量増加を目的とした積極的なリハ介入が必要である。